26年世界経済を牽引する各国の財政出動は両刃の剣に

2025年の世界経済は4月時点の予想から米国を中心に大幅上方修正された
1月のIMF世界経済見通しによれば、世界経済の成長率は24年3.3%、25年3.3%のあと、26年3.3%、27年3.2%と予想されている。
ほとんど変化のない、3%強の成長が続くという予想値になっているが、この数値は必ずしも各年の経済動向を表しているわけではない。
この数値は各暦年の四半期実質GDPの平均値を前年の四半期実質GDPの平均値と比較して計算したものだ。
そのため、前年から当該年にかけての実質GDPの変化による、いわゆる「ゲタ」が数値を上下させる場合がある。
IMF世界経済見通しでは、そうしたゲタの影響を受けず、当該年だけの経済の動きを直接的に反映した、各年の第4四半期の前年比の成長率の予想も掲載されている。
ちなみに、「第4四半期の前年比」で各年の動向を示した予想数値は、米FOMCの成長率・物価見通しでも使われている。
その「第4四半期の前年比」でみた世界の成長率の動きは、24年3.6%、25年2.9%、26年3.2%、27年3.2%となっている(表1参照)。

一昨年24年の成長率は3%台後半で高かったが、昨年25年の成長率は24年に比べ鈍化していた、ということが、この指標から窺われる。
そして、今年26年、来年27年の成長率予想については、巡航速度と言えそうなテンポで、緩やかな景気拡大が続くという予想になっている。
ところで、25年の成長率は、昨年4月時点では2.4%と予想されていたが、それが今年1月の予想では0.5%ポイント上方修正され、2.9%となった。
昨年4月時点では、トランプ関税の影響が過大に評価されていた。
トランプ関税の影響については、第1に、輸入関税のコストが、すぐさま米消費者向け最終製品の価格に転嫁されて米国の消費者物価を押し上げ、米国消費が落ち込む一方、各国の対米輸出も減少して世界経済が急速に悪化する、第2に、関税政策の不確実性により、企業マインドが消極化し、設備投資が落ち込む、などにより、世界経済は急激に落ち込むというものだった。
だが、以下の理由により、その予想は上方修正された。
- 関税率がその後の米国と貿易相手国との交渉により引き下げられ、
関税の悪影響が最小限にとどまった、 - 関税コストは、実際には、米小売企業や米国向け輸出企業が負担し、
消費者に転嫁されず、物価も上がらなかった、 - 関税による物価上昇がなかったため、米FRBは物価へ警戒感を和らげることができ、
雇用減速に対応した予防的利下げが可能となった、 - AIブームが世界的に株価を押し上げ、その資産効果が消費を押し上げると同時に、
AI対応のデータセンター建設が、関税政策の不確実性で落ち込む
と予想されていた企業の設備投資を押し上げた、
国・地域別の2025年成長率と昨年4月からの上方修正の様子を詳しくみてみよう。
まず、米国は24年の成長率2.4%から、25年予想については昨年4月時点で1.5%と大きく減速するとされていたが、今年1月時点の予想は2.2%と昨年4月比0.7%ポイント上方修正され、結局、24年に比べても成長テンポはほとんど減速しなかった。
2025年の米国経済が当初予想に反してほとんど減速しなかったのは、前述した2、3、4の影響が大きかったからだろう。
一方、ユーロ圏は24年の成長率1.3%から、25年予想は昨年4月時点で0.7%と、米国ほどではないが、かなり減速すると予想されていた。そして、今年1月時点予想では、0.9%と昨年4月比0.2%ポイント上方修正されたが、上方修正幅は米国に比べ小幅だった。
25年のユーロ圏経済が悪化したままで、米国ほど上方修正もされなかったのは、4の押し上げ効果が小さかったからだと思われる。
ユーロ圏のなかで大きな地位を占めるドイツ経済の低迷が続いていることも、上方修正幅が小さかった理由だ。
ドイツはロシアによるウクライナ侵攻前まで、ロシアからの安価なエネルギーと対中輸出に依存して成長を続けてきたが、今やそれができなくなっている。そうしたロシア、中国に依存した、ドイツの経済構造の転換の遅れが、ユーロ圏経済の足を引っ張っている。
他方、日本は24年の成長率こそ1.3%とユーロ圏と同じだったが、25年予想については昨年4月時点ではマイナス0.4%と米国以上に大幅な成長率悪化が予想されていた。
これは、トランプ関税によって、米中を中心に世界経済が悪化し、米中への輸出依存度の高い日本にとっての輸出環境が悪化するとみられていたからだ。だが、結局は米国経済がほとんど鈍化せず、円安傾向が続いたため、予想されていた悪影響は限定的なものにとどまった。
結局、今年1月時点の成長率予想は昨年4月比0.6ポイント上方修正され、プラス0.2%となった。
最後に、トランプ大統領が当初、高率の関税を発動しとようとした中国については、昨年4月時点の成長率予想は3.2%と24年までの5%台の高成長から、やはり大幅に悪化すると予想されていた。
だが、1の通り、米中交渉によって当初の関税率は大幅に引き下げられ、対米輸出の減少は米国以外への輸出でカバーできた。このため、今年1月時点の予想は4.4%(中国公式統計での実績は4.5%)へと大幅に上方修正された。
それでも中国が24年並みの5%台の成長が維持できなかったのは、中国国内の問題、すなわち過剰設備のストック調整が原因だ。中国国内では、設備投資が減少し、それに伴う生産・所得環境の低迷により、消費も頭打ちになりかけている。
25年の世界経済をけん引したのはAI。26年は各国の財政出動が景気を下支えるが財政悪化懸念による長期金利上昇がリスクに
2025年の世界経済を牽引したのは、AIブームとそれに伴う株高、AI関連投資の盛り上がりだったが、それが26年も続くかどうかについては疑問だ。
米IT企業などは競ってデータセンター建設を行っているが、そうした膨大な投資がそれに見合う利益に結び付くかどうかは疑問視され始めている。
AIは確かに労働生産性を上昇させるが、AIの労働力代替効果が大きくなれば、雇用減を通じて消費が減少し、経済全体のパイは拡大しないだろう。
AIへの期待が崩れ、急激な株価の調整が起きれば、逆資産効果を通じた景気悪化につながるだろう。AIブームに代わって26年の世界景気を下支える役割を果たすと期待されるのが、各国の財政出動だ。
米国では2025年7月にトランプ減税2.0と言われるOBBBA法案(One Big Beautiful Bill Act)が成立した。同法案はトランプ政権第1期目の2017年12月に成立し、2025年末に期限切れとなるトランプ減税を延長するものだ。
メディケイド縮小などによる歳出減少措置も盛り込まれているが、減税措置が前倒しで、歳出削減が後回しになるため、26年の景気押し上げ効果は大きい。
欧州各国では国防費が増額され、これが景気を下支えることになる。
NATOは25年6月に開催した首脳会議において、加盟国の防衛支出額の目標をこれまでのGDP2%から、2035年までに同5%(うち中核的な国防費に同3.5%、サイバーセキュリティや関連インフラに同1.5%)に引き上げることで合意した。
特に、これまで緊縮財政政策を維持していたドイツが、26年以降、国防費やインフラ投資などを増やすことは、ユーロ圏経済に大きな影響をもたらすだろう。
日本では高市政権が「責任ある積極財政」を掲げ、26年度も財政面からの景気刺激措置を継続する。今回の衆院選ではほぼすべての政党が消費税減税を公約に掲げている。高市政権も野党の主張をとり入れながら、減税実施を検討せざるをえないだろう。
中国では、習近平政権は、今のところ景気低迷が続くなかでも、思い切った景気刺激策には慎重だが、一段と景気が悪化する状況になれば、大規模な財政出動があるかもしれない。
このように各国は今年、景気の息切れに対応し、財政面から景気下支え策を実施していこうとしているが、財政出動への依存は、両刃の剣となりかねない。
日米欧各国の政府債務はリーマンショック、コロナショックという2度の経済ショックに対応した大規模な財政施策により、かつてない規模に膨れ上がっている。
2022年にイギリスで起きた、いわゆる「トラス・ショック」の例もあり、財源を国債追加発行に依存した景気刺激策は、国債価格下落(利回り上昇)、通貨安、株安のトリプル安などにつながり、ひいてはそうした金融市場の混乱が実体経済に悪影響を及ぼすおそれがある点に注意しなければいけない。
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続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2026/2/9の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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