NSSに滲む「対欧警戒」が意味するもの

月曜日のロンドン会合
12月8日、メルツ独首相、マクロン仏大統領、ゼレンスキー大統領がロンドンを訪れ、英首相官邸に集合しました。
名目上はロシア・ウクライナ戦争の和平協議をめぐる意見交換ですが、今月初めにトランプ政権が公表した2025年版『国家安全保障戦略(以下、NSS)』を受け、欧州側が一段と警戒感を強めるタイミングでの会談でした。
https://www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2025/12/2025-National-Security-Strategy.pdf
スターマー英首相は、ウクライナのための公正かつ永続的な和平解決の必要性を強調し、ゼレンスキー大統領は、ヨーロッパ、ウクライナ、そしてアメリカ全ての団結の重要性について語り、マクロン仏大統領はヨーロッパとアメリカをより近づける方法を見つける必要性について話しました。
そんな中、ドイツのメルツ首相だけが若干違った意見を述べたのが印象的です。
同首相はウクライナの運命はヨーロッパの運命であるとし、アメリカ側から届いている文書の詳細には懐疑的な部分があると認め、それについて今回の会合で話し合いたいと述べました。
残念なことに、ここからは非公開協議となったため、具体的な内容は、わかりません。
今回の会合ではアメリカ側を味方につけておくことが是が非でも必要であることを非常に明確にしていますが、同時にこれらヨーロッパの指導者たちは、アメリカとの関係が変化したことをもはや否定しておらず、NSS発表以降は大西洋横断関係における地殻変動的な変化を強く感じているようです。
米欧関係の変化
ウクライナ問題だけでなく、EUによる X(旧Twitter)への制裁金発表に対し、アメリカ政府が強い不満を示している点も考慮すると、足元の欧米関係は構造的な摩擦に入りつつあると、私も感じています。
これは言い換えれば、今やヨーロッパにとっての敵はプーチン大統領だけでなく、トランプ大統領も脅威の対象だということでしょう。
NSSからのヨーロッパへの警告
私は週末にNSSを読み始めましたが、ヨーロッパに関する記述には強い問題意識が滲んでいます。
とりわけ次の一節は、欧州の政策当局者にとって看過しがたいものに違いありません。
「数十年以内に、いくつかのNATO加盟国では、人口の多数派が欧州系ではない(non-Europeans)可能性がある。」
これは要するに、ヨーロッパの人口構造の変化が、EUの価値観・戦略・対米姿勢に影響を及ぼし得るという指摘であり、NATOの中長期的な一体性に疑問符を付ける内容となっています。
さらに、「ヨーロッパは移民のおかげで文明的な消滅に直面しており、EUは政治的自由と主権を損なう」とも警告をしていました。
移民・難民の増加を背景に、将来的にNATO加盟国の戦略的優先順位が変質するリスクを、米側が強く意識し始めていることが伝わってきます。
今回のNSSについてヨーロッパの政治専門家達は、トランプ政権のヨーロッパに対する敵意だけでなく、ヨーロッパを弱体化させる野心を確認するものだと述べている人もいるようです。
そして共通した意見としては、今年2月の独ミュンヘン安全保障会議で.ヴァンス米副大統領が、EU指導者たちが言論の自由を抑圧し、不法移民を阻止できず、有権者の真の信念から逃げていると非難した演説で初めて概説されたアメリカの戦略を成文化したものがNSSであるという点です。
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続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2025/12/9の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。















