フランス政局危機

フランス議会信任投票
いよいよフランスが 「財政規律 vs 政治の存続」という正面衝突の局面に入りました。9月中旬の来年度予算案締め切りに向け、遅かれ早かれ揉める事は予想しておりましたが、思ったより早い展開です。
バイルー首相が信任投票を自ら仕掛けたのはかなり大胆な一手ですが、支持基盤が脆弱なだけに、左派連合それぞれの党の出方次第で政権が一気に揺らぐ展開になりそうです。
予算案内容
まず今回の論点となっている予算案の主な内容は、以下の通りです。
- バイルー首相はマクロン大統領に要請し、
9月8日から国民議会の臨時会期を招集させる決断を下した - EU財政赤字対GDP比は公式で3%。昨年のフランスはGDP比5.8%に達し、
EUの公式上限をほぼ2倍の規模へ。
そのため今回の予算案では赤字抑制のために
総額440億ユーロの緊縮内容を打ち出した - 今回の赤字削減策としては、
1.祝日2日の廃止、2.福祉支出の凍結、3.2026年の税制区分を2025年水準に据え置き、
インフレ調整を行わない方針を提案 投票配分予想
中道・中道右派によるバイルー連立政策は、過半数に70議席足りません。極右:国民連合と緑の党は、政府に反対票を投じる方針を明らかにしました。
その結果、左派勢力の判断が政権存続の鍵を握っていましたが、大多数が反対票を投じる意向を示しています。
このような状況で、マーケットは信任投票で少数与党政権は敗北し崩壊するとの予想です。
政権崩壊後のシナリオ
現時点では3つのシナリオがあります。
(1)マクロン大統領が新首相を任命
既に候補者としてロンバール財務相などの名前があがっています。 ここで問題となるのは、新首相が指名されても、議会がその政権を承認するかでしょう。
マクロン大統領の選ぶ人物に対して、極右と左派連合は反対姿勢を強める可能性もあり、延々と首相選びが続くリスクが出て来てもおかしくありません。
(2) バイルー首相を再指名
マクロン大統領が改めてバイルーさんを首相に任命するシナリオです。私は、このシナリオはないと見ています。
(3) 解散総選挙
昨年春の欧州議会選挙で大敗したマクロン大統領は、突然、解散総選挙を発表し世界を驚かせました。しかし、国政でもマクロン大統領の政党は大きく議席を落とし、議会での過半数を下回る少数派政党として政策運営をしています。
このように、マクロン大統領の賭けが裏目に出てしまったのは紛れもない事実ですので、今回も同じ過ちを繰り返すとは考えていませんが、「絶対有り得ないこと」と決めつけてしまうのも、リスクかもしれません。
議会の空転は避けたいフランス
9月はEU加盟国にとって非常に大事な時期です。
2009年から始まったギリシャ債務危機以降、加盟国は毎年9月中旬までに議会で可決した予算案を欧州委員会に提出し、最終締め切りの12月31日までに欧州委員会から「合格点」をもらいます。それを手にするまで、何度も何度も予算内容の数字の調整を繰り返さなければなりません。
もし9月8日にバイルー政権が崩壊し、マクロン大統領が選んだ新首相の議会信任が遅れたり、昨年のように解散・総選挙を仕掛ける事態になれば、最も大事なこの時期に無政府状態となり予算案成立時期が遅れます。
最悪なパターンとしては、そのリスクを織り込む形で、フランスの格下げ等の動きが出てくるかもしれません。
そして非常に悪いタイミングですが、格付け大手フィッチが『9月12日』に格付け発表を行います。格下げとなれば、ユーロ売りは避けられないかもしれません。
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続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2025/9/8の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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