FRBの独立性

トランプ米大統領がFRBのクック理事を解任するという決断を下し、マーケットは重要な局面を迎えています。
トランプ大統領がリサ・クックFRB理事を解任する権限があるかどうかについては、議論があり、法廷闘争に発展する可能性があります。
以下は、この問題に関する主要なポイントです。
(1)連邦準備法では、FRB理事の任期は政治的干渉から独立性を保つために14年間と定められています。
(2)トランプ大統領が理事を解任できるのは、「for cause(=正当な理由)」がある場合に限られるとされています。
(3)この「正当な理由」とは、職務上の不正行為や職務怠慢などを指すと一般的に解釈されています。
今回の場合、 トランプ大統領は、クック理事がFRB理事に就任する前の2021年に、住宅ローンを組む際に虚偽の申告をしたという疑惑を理由に「正当な理由」があるとして、解任を試みました。
一方、クック理事は、トランプ大統領には自身を解任する権限はないと主張し、辞任しない意向を表明しました。彼女の弁護士も、解任の試みには事実上および法律上の根拠がないと述べています。
今回のように米国の大統領がFRB理事を解任しようと試みるのは、史上初めてのことです。この問題は、最高裁まで争われる可能性があり、FRBの独立性に対する懸念が高まっています。
トランプ大統領がクック理事を解任し、自身の意中の人物を後任に指名できた場合、FRB理事会の過半数がトランプ大統領に指名された人物となり、金融政策の方向性に影響を与える可能性が指摘されています。
ブルッキングズ研究所の上級研究員、アーロン・クライン氏は「これは連邦準備制度の独立性に対する致命的な一撃だ」と解説。米金融市場では、FRBが独立性を失う危険性とインフレリスクへの懸念が拡大しドルは軟調。30年債利回りは上昇。
ドルが軟調といっても、現時点のドル円は147.50円レベルで、あまり大きな動きはなし。
ただFTのChris Giles氏によれば、
トランプ大統領はこれまでFRBに対しては不愉快な罵倒を繰り返していたが、中銀の独立性に対して全面的な攻撃に乗り出した。米国と世界経済の安定を支える柱が存続できるのか、恐れるに足るあらゆる理由がある。(FT)
「米国と世界経済の安定を支える柱が存続できるのか、恐れるに足るあらゆる理由がある。」とまでいわれると、やはり警戒します。
結果、ユーロ円ではなく、合成のスイスフラン円のlong(ロング)にして、情勢を見守っているところ。
西原宏一のシンプルトレードの一部を抜粋してお届けしています。
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