関税合意を受け日銀は利上げ再開へ

日米関税合意を機に9月会合以降の利上げ観測が高まっている
日米両国は関税措置をめぐる交渉で、日本が米国に巨額な投資をする一方、米国が8月1日から発動するとしていた相互関税率を25%から15%に引き下げ、また、自動車の関税率についても27.5%(もともとかかっていた2.5%プラス4月からの追加関税25%)から15%へと引き下げること、などで合意した。
良くも悪しくも合意がなされたことで、トランプ大統領の関税政策についての「不確実性」は低下した。日銀は5月、6月の政策決定会合で「各国の通商政策の不確実性」により政策金利を据え置いていた。だが、今回の合意により、日銀による利上げ再開の環境が整いつつある。
今週7月30~31日会合での利上げはほぼないとみられているが、9月会合以降の利上げ観測は今回の合意を機に高まっている。
OIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ)市場の動きからみた利上げ確率は、9月19日政策決定会合で先週18日の18%から25日時点で28%へ、10月30日会合で同42%から63%へ、12月会合で同64%から82%へとそれぞれ高まった。
金融市場は年内利上げをほぼ確実視し始めた。
また、日銀の内田副総裁は23日、日米関税協議の合意を受け、「日米合意は大変大きな前進であり、日本経済にとって関税政策を巡る不確実性の低下につながる」とし、「2%の物価安定目標の実現に向けた確度は上がっていることに当然なる」と延べた。
「実質金利がきわめて低い水準であることを踏まえ、金融緩和の度合いを調整していく」というのが日銀の基本的な姿勢
日銀の基本的な金融政策の方針を確認しておこう。
「現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」(「展望レポート」)というのが、現在の日銀の金融政策運営の基本姿勢になっている。
政策金利について、植田日銀総裁は、昨年来「見通し期間の後半にかけてのどこかでは基調的な物価上昇率が目標の2%に達するのではないかと思っている」「(そうなれば)政策金利は概ね中立金利水準になっている」と述べている。
中立金利の水準については、植田総裁は「狭い範囲に絞り切れていない」とも述べているが、自然利子率(実質中立金利)がマイナス0.5%~ゼロで、2%インフレが実現できているとすれば、その時の名目中立金利は1.5%~2%になる。
5月の展望レポートでは、生鮮食品、エネルギーを除くコア・コア消費者物価の前年比の予想値は、前回1月時点の25年度2.1%、26年度2.1%から今回はそれぞれ25年度2.3%、26年度1.8%となり、25年度が上方修正されたものの、26年度は下方修正された。27年度見通しは2.0%となった。
この見通しの変更で、日銀が目標とする2%物価目標の達成が、これまで想定されていた「25年度後半~26年度中」から「26年度後半~27年度中」へと、1年程度先送りされることになった。
政策金利が中立金利とされる1.5%~2.0%程度になる時期についても、「25年度後半~26年度中」から「26年度後半~27年度中」に先送りされた。
ただ、植田日銀総裁は、5月会合後の記者会見で「2%物価目標の達成時期が遅れたことで、利上げペースは鈍化するのか?」と聞かれ、「基調的な物価が2%に到達する時期は後ずれするが、利上げ時期は必ずしも後ずれするわけではない」と答え、金融緩和の度合いを調整していく方針を継続する姿勢を示した。
仮に、2年後の27年7~9月に物価目標が達成し、政策金利が中立金利水準の1.75%に引き上げられるとすれば、約5か月に一度、0.25%ポイントの利上げを行なうことになる。
基調的物価上昇はなお2%を下回るが、3%を超えるインフレ継続は金融政策に影響を及ぼす可能性
日銀は金融政策の判断に当たって「基調的物価上昇」を重視するが、基調的物価上昇が具体的にどういう指標なのかははっきりしない。
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2025/7/28の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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