EU、米国と15%関税率で合意へ前進

トランプ米政権のラトニック商務長官とベッセント財務長官は、日本との貿易合意が「革新的な資金供給スキーム」により実現し、米国に5500億ドル規模の投資をもたらす内容であったことを自賛しています。
まずベッセント長官は「日本側は、日本と米国のパートナーシップという構想を持ち込んできた。米国内の大型プロジェクトに対して、出資や信用保証、資金提供を行うという内容だ」とコメント。
一方、ラトニック長官はこの合意がEUとの交渉のモデルに「なり得る」と述べたほか、投資案は自身の発案だとして、投資利益の90%が米国に帰属すると説明しています。
投資利益の90%が米国に帰属するという説明は、具体的にはどういうことになるのか。ピンと来ませんが、日米の関税率の合意は他国の合意へのステップになると想定されています。
例えば、EU。
EUと米国は、米国が輸入する大半のEU製品に15%の関税を課す内容で合意に向けて前進しているとBloombergが報じています。
複数の外交筋が明らかにした。この関税率が自動車などのセクターに適用されるようEU当局者は働き掛けている。一定量を超える鉄鋼やアルミニウムには、50%の関税が課されることになりそうだという。EU側は合意成立を楽観しているが、慎重な姿勢も維持している。期限までに合意が成立せず、トランプ氏が30%関税の脅しを実行に移す場合に備え、対抗措置の準備も続けている。(Bloomberg)
一方、日米の関税率の合意は、リスクアセットを押し上げており、日経平均先物は41,730円で推移。
通常、こうしたリスクオンの環境下では円安も継続するものですが、23日の為替市場では一時円高に。ドル円は一時146.10円、ユーロ円は171.37円まで反落しています。
これは、年内の日銀利上げ織り込み度が8割に上昇したことが要因と考えられます。
ただし、先物市場の織り込み度が一時的に上昇したに過ぎず、日経平均が急騰している環境下、この円高が長く続くとは見ていません。
日経平均が41,000円台を回復するリスクオンの環境にもかかわらず、ドル円がなかなか150円台を回復しない要因としては、日銀の利上げ観測に加え、ユーロドルが再び底堅くなってきたことが挙げられます。
今月初旬の配信で、ECB当局者の「ユーロ高牽制コメント」を受け、ユーロドルは一時調整局面に入るとご紹介しました。
実際、17日のユーロドルは一時1.1557まで反落しましたが、今週に入って底堅く推移しており、再び1.18台を伺う展開となっています。
このユーロドルの上昇、すなわちユーロに対するドル売りは、ドル円の上値を抑える一因ともいえます。
ユーロドルが調整を終え、再び1.2000ブレイクを目指す要因としては、まずECBの利下げサイクル終了が挙げられます。
本日のECB金融政策決定会合では、金利の据え置きがコンセンサスとなっています。
ECBはこれまで8会合連続で利下げを実施し、6月会合でも0.25%の引き下げが行われ、誘導目標金利は2.00%に設定されています。
ラガルドECB総裁も6月会合後の会見で、利下げサイクルの終了を示唆しています。
そしてもう一つの材料は、ECBのユーロ高牽制コメントが、水準調整ではなくスピード調整だと考えられていることです。
過去の配信から、ECBのコメントを抜粋します。
1.20ドルまでのユーロ高見過ごせる、それ以上は複雑=ECB副総裁(7月1日)
欧州中央銀行(ECB)のデギンドス副総裁は1日、対ドルで1.20ドルまでのユーロ高は無視できるが、それ以上の水準は複雑になるとの見方を示した。ブルームバーグTVのインタビューで「1.17ドル、1.20ドルでさえ、見過ごすことができない水準ではない」と指摘。「それ以上になると、かなり複雑になる」と述べた。
また追加利下げは「経済を助けることにはならない」とし、貿易やその他の政策に関する確実性が必要だと語った。
(出所:ロイター)
多くのマーケット参加者は、このECB副総裁のコメントをユーロ高のスピード調整が目的だと考えています。
ユーロドルは6ヶ月で1688pipsも急上昇しており、ECB当局者のコメントはユーロドルの上昇スピードを抑えるためと解釈されています。
ユーロドルは1.2000を超えるのに一定の時間を要するかもしれませんが、ドイツが「ゲームチェンジ」している現在、最終的には1.2000をブレイクすると想定しています。
結果として、ユーロ円の上昇トレンドは変わらないと見ています。
クロス円を牽引してきたスイスフラン円は昨年高値の180円を超えて一時186.04円という史上最高値を更新して急騰しています。
この動きから判断すれば、ユーロ円も昨年の高値である175.43円を早晩ブレイクすると想定しています。
追加のユーロ円の買い注文はついておらず、少額のユーロ円のlong(ロング)継続。
そして日経先物のlong(ロング)
西原宏一のシンプルトレードの一部を抜粋してお届けしています。
シンプルトレードでは、リアルタイムで相場観やポジションを配信しています。
関連記事
https://real-int.jp/articles/2891/
https://real-int.jp/articles/2863/