日本の景気は堅調なのか?

GDP統計では日本の景気の底堅さがみてとれるが…
日銀の利上げとそれに伴う円高、トランプ関税の影響など、日本経済の先行きに対する懸念は多く指摘されているが、GDP統計や企業収益の良好さなどをみる限りでは、足元の日本の景気は意外に底堅く推移しているようにもみえなくない。
だが、詳しくみていくと、現在の景気の持続性については疑問が残る。
GDP統計によれば、2024年10~12月の実質GDPは前期比プラス0.7%となり、4~6月同プラス0.7%、7~9月プラス0.4%に続き、3四半期連続のプラス成長となった。
前年同期比でみると、24年1~3月、4~6月はそれぞれマイナス0.8%とマイナス基調で推移していたが、7~9月にプラス0.6%とプラスに転じ、10~12月にはプラス1.2%と伸びが加速した。
日本の潜在成長率はゼロ%台半ば(0.5%程度)とされているが、10~12月の前年比成長率である「プラス1.2%」が本当だとすれば、実際の成長率が潜在成長率を上回ってきたことになる。
この数値から判断する限りでは、ヒトやモノの需給は逼迫しつつあり、賃金と物価の上昇は、景気の良さによる需給逼迫が原因だということになる。
日銀・消費活動指数によれば、個人消費は横這いで足元では悪化している
だが、注意しておかなければいけない点は2つある。
一つは、インフレが加速し、そのために個人消費の低迷がはっきりし始めている点だ。確かに、GDP統計でも、個人消費は10~12月に前期比で0.1%増、前年比で1.1%増と、幾分、伸び悩んでいる様子が窺われた。
しかし、消費の実態は、このGDP統計で示されるより悪いのではないかと推測される。GDP統計の個人消費については、速報段階では、サンプルが少なく、
数値のブレが大きい「家計調査」を基礎統計に使って作成される。そのため、この数値はやや信頼性に欠ける。
一方、販売統計だけで作成され、比較的、数値のブレが少ない日銀の消費活動指数をみると、24年10~12月の前期比は0.5%減、前年比では0.5%増とGDP統計の個人消費に比べ、悪い数値になっている。
しかも、GDP統計の個人消費に相当する、「旅行収支調整済みの消費活動指数」、つまりインバウンドを除く消費は、10~12月に前期比0.5%減、前年比では0.1%増と、さらに悪い数値になっている。
海外からの観光客が日本で使うお金は、GDP統計では「財・サービスの輸出」に含まれる。GDP統計の数字でみると、個人消費は「緩やかな増加」傾向を辿っていると言っていいかもしれない。
だが、日銀の消費活動指数からみると、この1年の個人消費はほとんど「横這い」で、10~12月は前期に比べ「悪化」している。
仮に、日銀消費活動指数で示される動きが個人消費の実態であるとすれば、その分、GDP成長率も下方修正が必要になるだろう。その際、10~12月の個人消費はGDP統計で示される「前年比1.1%増」ではなく、日銀消費活動指数で示される「前年比0.1%増」になる。
個人消費がGDPの5割強を占めるため、GDP成長率も「前年比1.2%成長」ではなく、「前年比0.7%成長」と低くなる計算だ。街角景気の動向を示す景気ウォッチャー調査が低調に推移しているが、これも個人消費が低迷しているからに他ならないだろう。
同調査の現状指数は23年12月から24年2月にかけて、景気判断の分岐点である50ラインを上回っていたが、24年3月以降50割れとなり、直近25年1月の指数は48.6と低迷している。
「景気が良いから賃金や物価が上昇している」という認識は間違いであり、「物価上昇が景気を低迷させている」と考えなければいけないだろう。
企業は潤沢なキャッシュ―フローにもかかわらず慎重な投資姿勢を変えていない
もう一つの注意点は、企業の慎重な投資姿勢が続いており、企業収益の増勢もその持続性が疑わしいという点だ。
企業の利益は高水準で推移している。原因は、・・・
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2025/3/3の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
関連記事
https://real-int.jp/articles/2776/
https://real-int.jp/articles/2775/