欧州の政治混乱がユーロ危機につながる
ユーロ圏の景気は底這い状態から脱していない
2024年の世界経済は、結局、23年と変わらず、米国一人勝ちの状況のなか、緩やかな拡大傾向を続けたが、米国経済の好調と対照的に、欧州の景気低迷が際立つ。
米国の経済成長率は、23年10~12月の前年比3.2%から、24年10~12月は同2.5%に減速した。これに対して、ユーロ圏の成長率は、23年10~12月の前年比0.1%から、24年10~12月は同0.9%と上向いた。
ちなみに、日本の成長率は、23年10~12月の前年比0.7%で、IMFによれば24年10~12月は同0.7%と23年並みの成長に見込みだ。
確かに、米国とユーロ圏の成長率格差をみると、23年から24年にかけて米国の成長率がやや鈍化し、ユーロ圏の成長率がやや上向いたため、幾分縮小した。
だが、米国経済は2%程度とされる潜在成長率を上回る状態が続いている。実際の成長率が、供給能力を表わす潜在成長率を上回れば、ヒトやモノの需給が徐々に逼迫していき、米国景気は過熱感を強めていくことになる。
これに対して、ユーロ圏は1%台前半とされる潜在成長率を下回る状態が続いている。
2023年のユーロ圏の成長率は、ほぼゼロで、24年にそれが1%近い水準にまで高まったものの、ユーロ圏景気は米国とは対照的に、ヒトやモノの需給の緩和傾向が強まっていることになる。
結局のところ、ユーロ圏の景気は底這い状態から脱し切っていないことを示す。
米国景気好調でFRBは追加利下げに慎重になりつつある
2024年10~12月の米経済成長率は前期比年率2.3%と7~9月(同3.0%)に比べ減速した。需要項目別にみると、10~12月は年末商戦の好調を反映して、個人消費が前期比年率4.2%と増加し、成長を牽引した。個人消費の実質GDPに対する寄与度は2.8%だった
これに対して、足を引っ張ったのは設備投資と在庫投資だ。設備投資は前期比年率2.2%減と減少し、GDPに対する寄与度はマイナス0.3%となった。在庫投資は増加幅が縮小し、寄与度はマイナス0.9%となった。個人の消費がGDPを押し上げる半面、企業の投資がGDPを押し下げた。
トランプ大統領はビジネス寄りとされるが、トランプ第1期政権時には、関税政策が導入され始めた2018年以降、企業の景況感が悪化し、設備投資停滞が景気の足を引っ張った。
保護主義的な輸入関税は、中小企業のほか、鉄鋼産業など比較劣位産業の景気を一時的に押し上げるが、その代わりに、情報産業など比較優位産業の景気を悪化させる。
輸入関税により各国の企業が米国内へ生産拠点を移そうとするため、海外企業の投資が米国景気を押し上げるという期待もあったが、今のところ、そうした動きは表面化していない。
むしろ、トランプ政権の誕生に伴う関税政策などの不確実性の高まりによって、企業が設備投資と在庫投資を見合わせ始めた可能性がある。
IMFが発表した1月世界経済見通しによれば、2025年10~12月の成長率見通しは2.4%と昨年10月時点の見通し(1.9%)から上方修正された。
2025年の成長率見通しは、これまで1.8~1.9%と、わずかながら潜在成長率とされる2%を下回る数値だった。
いわば米国経済の軟着陸を見込むものだったが、直近の見通しでは2025年も潜在成長率を上回る数値になった。
IMFの予想通りなら、2025年の米国景気は一段と過熱感を増していくことになる。
そうした経済動向を反映して、1月28~29日のFOMCでは予想通り、FF金利が4.25~4.5%に据え置かれた。
FF金利先物市場では、FF金利は年末までに0.25%刻みであと2回程度引き下げられるとみている。
今回の金利据え置きは、トランプ政権の政策を見極めるためであり、昨年9月から始まった利下げのトレンドはなお続いているという見方が多いようだ。
だが、米国経済が潜在成長率を上回る成長を続けており、2025年もそれが続くとすれば、景気がこの先も一段と過熱し、インフレ懸念を高めることになる。
だとすれば、利下げはないと考えるのが普通だ。
実際には、トランプ大統領の関税政策が米国経済に悪影響を及ぼすことも予想されるが、仮にIMFの予想通りであれば、米国では、利下げではなく、むしろ利上げがあるとみるべきだろう。
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2025/2/3の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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