マイナス金利も噂されるスイスフランに対し円は?
昨日の欧米市場は休場。
そのため、今回は少々中期の視点でお届けします。
これまで日米金利差縮小や、トランプ次期政権の政策(減税、追加関税、そして不法移民排斥)は、総じてドルを堅調に推移させる公算が高いことをご紹介させていただきました。
今回は視点を変え、大幅利下げが続いているスイスフランに対しても、円は軟調であることを確認したいと思います。
スイスフラン円は2000年の58円から今年の180円まで、スイスフランは円に対して3倍以上に急騰しています。逆にいえば、過去24年という期間で、日本円はスイスフランに対して3分の1に価値を劣化させたと言えます。
その理由はいろいろと挙げられますが、過去3年に絞って言えば、インフレに苦しむSNBが通貨高を志向し、状況によってはスイスフラン買の介入も躊躇しないとしたことが大きな要因となっています。
スイスでは一時ビックマックセットが日本円で2,500円という価格になっていたことが良く例に出されていたように、スイスはインフレに苦しんでいました。
このスイスのインフレに関しては、2022年のコラムで以下のようにご紹介しています。
筆者の知り合いに有名な画家がいるのですが、先月(6月)、バーゼルに滞在していたので、物価動向を聞いてみました。
なんと、マクドナルドのビッグマックセットが2200円!
従業員の時給が2800円というから驚きです。
その後昨年12月に、自国通貨高に苦しむスイスの輸出企業が当局に危機感を訴えたこともあり、SNBがスイスフラン売り介入を示唆したことからスイスフランは反落。
インフレが沈静化したこともあり、他の主要中銀に先駆けて、SNBは3月に利下げを開始。今月も0.50%と大幅利下げを発表しています。
これで今年SNBは、トータルで1.25%も利下げしたことになり、政策金利は2年ぶりに0.50%にまで下がっています。
OISによれば、SNBはさらに0.50%利下げすることを織り込み始めています。
SNBのシュレーゲル総裁によれば、必要ならばマイナス金利復活の可能性すらあるとコメントしています。
これは2025年のどこかで、日本とスイスの金利は逆転する可能性が高くなっていることを意味します。
日本とスイスの金利が逆転する可能性があるのであれば、日本円に対して3倍にも高騰しているスイスフラン円は大きく値を下げる事が予想されます。
常にスイスフランに対して強気である僕ですら、今年は珍しくスイスフラン円をshort(ショート)にした局面もあるぐらいです。
しかしこうした環境下ですら、スイスフラン円は174.80円と高値(180.07円)から5円強しか下落していません。
繰り返しますが、SNBは来年、マイナス金利の可能性すらあるのですが、それでも円に対し底堅い。
つまり、スイスフランが円に対して急騰してきたのは、両国の金利差では説明できないことになり、日本円の弱さを改めて、確認せざるを得ないということになります。
日本円と言えば、スイスフランと双璧をなすhaven currency(=避難通貨)と言われたことはもう完全に過去のものになってしまったようです。
これまで日米金利差や、トランプ次期政権でのドル高、そして日銀総裁のハト派なコメントなどから日本円の弱さを検証してきましたが、今回はマイナス金利の可能性すらある通貨に対しても日本円が弱いことを確認してきました。
こうした環境下では、2025年のドル円も堅調に推移するという方針は変わらず。
西原宏一のシンプルトレードの一部を抜粋してお届けしています。
シンプルトレードでは、リアルタイムで相場観やポジションを配信しています。
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