円買い介入は一時的な効果しか持たない
今週の半ば以降の流れを決めるという観点から、最大の注目は5/10の米4月PPI(生産者物価指数)と5/11の米4月CPI(消費者物価指数)の結果が重要でしょう。
(5/11の同時刻には米4月小売売上高も発表されますが、重要度という点ではCPIに軍配が上がります)
最近のすう勢をざっと振り返ってみると、年始まで大幅に織り込んだ米国の利下げですが、雇用、物価、消費、これら全てが堅調さを維持したこともあり、大幅に巻き戻しました。
今月の月初に発表された4月の雇用統計にようやく減速の兆しがみえ始め、先週発表の新規失業保険申請件数が半年ぶりの水準に上昇と労働市場の需給ひっ迫に改善傾向があります。
しかし、GW期間中に発表されたQ1(1-3月期)のECI(雇用コスト指数)は大幅上振れ、労働需給に緩和のきざしはあるものの、物価は高止まりという構図です。
今月の場合はCPIとPPIの発表順序が逆ですので、PPIの結果でも市場が動意づく可能性があります。
市場の予想値
PPI:前月比(予想+0.3%、前回+0.2%)
PPI:前年比(予想+2.2%、前回+2.1%)
コアPPI:前月比(予想+0.2%、前回+0.2%)
コアPPI:前年比(予想+2.3%、前回+2.4%)
CPI:前月比(予想+0.4%、前回、+0.4%)
CPI:前年比(予想+3.4%、前回、+3.5%)
コアCPI:前月比(予想+0.3%、前回、+0.4%)
コアCPI:前年比(予想+3.6%、前回、+3.8%)
2022年のインフレが高進した局面では当たる!と評判が広がったクリーブランド連銀のCPIナウキャストが5/10に更新されています。
総じて、上振れ予想、この通りであれば、金利再上昇、ドル買いイベントと読めてきます。
円買い介入の総額が約8-9兆円と推測されるなか、短期的な需給改善に至ったことは確かですが、昨日は日経電子版が新NISAを通じた円売りは1-4月総計で4兆円超としています。
2005年以降では単年の数値をすでに上回っており、おそらくこの傾向が続くとみるのが真っ当です。
発表元は財務省のデータですが、単月ではどうか、
1月:1.2兆円
2月:1.0兆円
3月:0.9兆円
4月:0.9兆円
わずかに減速していますが、誤差の範囲、このまま続けば年間で約12兆円の円売り、円買い介入の効果が(かなりラフですが)1兆円で1円と仮定すると、12兆円の円売りの効果は甚大です。
「政府」が鳴り物入りで始まった新NISAですが、「政府」・日銀が円買い介入を持ち込むことで、(安いドルの買い場を提供することになりますが)基準価格の下落を招きます。
本欄で展開してきた対米摩擦、さらにこうした需給の観点からも円買い介入は一時的な効果しか持たないということです。
こうした流れを加味したポジションの組み換え、市場参加者から伝わる裏事情、金融機関のレポートの概略等はSmartLogicFXのなかで展開していきます。
本記事は、昨日5/12配信の有料メルマガSmartLogicFXより抜粋してお届けしています。
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