本能で投資すると大損する 思考の片寄り・認知バイアス
プロが金融危機を予測できない原因も認知バイアス
現在、金融危機が静かに進行中だと判断していますが、プロも含めて株がこれから上がると思っている人が多いです。
過去、プロも含めて毎回の金融危機を予測して対処できた人は、とても少ないです。
金融危機は永遠に来ないという人さえいます。
先日、「これから株は上昇する」という記事だけを集めて紹介していたプロの投資アドバイザーがいましたが、このように都合が良い情報だけしか聞かないことを認知バイアスといいます。
認知バイアスとは無意識の思考の片寄り、思い込みのバイアス(bias・片寄り)脳の癖です。
無意識ゆえに膨大な認知バイアス
認知バイアスは無意識の思考の片寄りのため、ほとんど認識されていませんが、実に大量の認知バイアスがあります。
特に、過去の延長線上に未来がない激動の時代は認知バイアスが増大します。
さらに、金融危機による株の大暴落前は認知バイアスの極致です。
9割の人がこれから株は上昇すると思った時が天井になることこそが認知バイアスの極致なのです。
https://real-int.jp/articles/2189/
毎回、多くの人が金融危機で大きな損を出すのも
天井で買って底で売ってしまうのも
認知バイアスが原因です。
プロが金融危機を予測できないのも、
プロが確信をもって間違えるのも認知バイアス1番の原因です。
認知バイアスと感情バイアス
認知バイアスに似たものに感情バイアスがあり次のような違いがあります。
認知バイアス
思考の片寄りや思い込みによる間違った判断バイアス
常識、固定観念、報道、周囲の意見や情報など、さまざまな要因によって誤った認識、合理的でない判断を行ってしまう傾向です。
感情バイアス
感情的に良いものを優遇し、悪いものを冷遇する傾向
衝動や直感など感情的な要因から生まれるバイアスで誤った認識、合理的でない判断を行ってしまう傾向です。
感情は思考に影響を与えるので、ここでは感情バイアスは認知バイアスに含めて解説します。
まず認知バイアスを認識する
投資・トレードで大失敗をする原因が認知バイアスです。
まず、どのような認知バイアスがあるかを認識することが大事です。
認知バイアスの存在を理解するだけでも、解消に向かうからです。
1.権威がいうことは正しい
投資の神様と呼ばれるバフェットが言っているから、その相場観が正しいとか、報道で言っていたので正しいとする傾向です。
これはかなり危険です。
投資ではポジショントークやプロパガンダばかりですし、投資以外の分野もプロパガンダが多い時代になったからです。
2.多くの情報を得ることが良い
多くの情報を得ることが大事だと思う傾向があります。
多くの情報(報道、SNS等)を得ることで大衆心理となり、確信を持って間違えることになります。
良質な情報を得ることが大事ですが、良質な情報を得ることを避けるバイアスもあります。
3.信じたい情報を信じる
自分にとって都合のよい情報、信じたい情報ばかりを集めてしまい、自分の意見を正しいと強固に信じ込む傾向があります。確証バイアスといいます。
直接的にも間接的にも自分の考えとは異なる考え方を排除することになります。
ネットの世界では、個人情報、検索履歴、閲覧履歴からから推奨されるYouTube動画や商品が表示されたり、同じ思想の人ばかりSNSなどで、つながる傾向があります。
自分と同じ意見があらゆる方向から返ってくる反響室のような狭いコミュニティで、同じような意見を見聞きし続けることによって、自分の意見が増幅・強化されることになります。
反響室由来で、エコーチェンバー現象(Echo chamber)といいます。
インターネットがバイアスを強化することになります。
毎日、一人ひとりの関心のある情報、信じたい情報にばかり触れる原因です。
日本株がこれから上昇するという人の意見しか聞けないというバイアスは多いです。
プロが確信をもって間違える原因の1つです。
4.悪いことは聞きたくない
日本はこれから良くなるという話しか聞きたくないという理由から、悪い話は聞きたくない、聞いても頭に残らないというバイアスです。これも確証バイアスです。
これは認知的不協和ともいい自分の自分の考えと異なる考え方は心理的な不快感なので、不快なものを排除するという意識です。
これから金融危機がくると聞いても、無視したり、理解できなかったりします。
5.想定外は考えない
想定外のことが起こることは考えたくないというバイアスです。これも確証バイアスです。
プロが金融危機を予測できない理由の一つです。
https://real-int.jp/articles/2064/
6.簡単なことしか拾わない
相場は難しい材料では、どう反応して良いか分からないので動きません。
それと同じように、難しい材料、理解できない材料は無視し、分かりやすい材料だけで判断する傾向があります。
7.最初に入った情報を正しいとする
ヒヨコが最初に見たものを親と思うように、人には最初に入った情報が正しいと認識する傾向、バイアスがあります。
後から情報が修正されても最初の情報に固執するのです。アンカリングといいます。
たとえば、ゴールドの利益確定ポイントが15000円と聞いていたら、それが20000円に修正されても、頭の中では15000円に固定されてしまっているケースです。
投資教育の多くは金融機関が金融商品を売るためのものだったことから、受けた投資教育を元に投資をすることで損失となります。
正しい投資教育の基本はこちらに記事を集めたので無料で学ぶことができます。
是非お読みください。
https://real-int.jp/articles/1131/
8.調べない
聞いたことがない言葉を調べていくことが勉強ですが、調べることをせずに「この情報は自分には合わない」と判断する傾向です。
勉強は自分のレベルより上のものに接することが大事です。
自分が調べないで理解できるレベルでは勉強とはいえませんし、本質から外れている可能性が高いです。
つまり大衆心理に導かれ、大損をすることになります。
9. 論理的ぽいと信じてしまう
論理的ではないものの、論理的に見える考え方を正しいと認識するバイアスです。
たとえば
ゴールドが、1グラム1000円から1万円になりました。
十倍になったので、そろそろ下落トレンド
十倍になったので、今後も上昇する
どちらも認知バイアスで論理的ではありません。
10.右肩上がりは続く
右肩上がりのチャートを見て、今後も右肩上がりが続くと思い込むことは典型的な分かりやすい認証バイアスです。
一貫性バイアスといいます。
11.買ったものは上昇する
「右肩上がりが続くと思い込む」に似ていますが
自分が買ったものは上昇するという思い込みです。
たとえば買った株が2割下げていた時、客観的にみて、その株を
新規に買いたいであれば保有
買わないのならロスカットとなります。
12.判断を間違えたことを認めたくない
人は判断を間違えたことを認めたくないです。
天井で買っても判断が間違ったことを認めたくないので、長期保有し続けます。
状況が変わっても自分の判断の間違いを認められないのでロスカットしません。
13.判断を間違えたことを知りたくない
人は判断を間違えたことを認めたくないので、判断したことを検証しません。
間違ったかどうかを自分が知らなければ間違いを認める必要がないからです。
たとえば次のようにします。
買った口座は見ないようにする
その関連情報を更新しない
目をつぶる
14.得る喜びより失う痛みがはるかに大きい
投資で100万円の利益を得た喜びよりも、100万円の損失の苦痛のほうが遥かに大きい傾向があります。
これもプロスペクト理論であり、損失回避バイアスとなります。
利益は少なくても手仕舞いし、損失はロスカットしないため大きくなる原因です。
含み損は損ではないと思い込み、大きな含み損をずっと抱える傾向が強いです。
これは損を確定する痛みを大きく感じるからです。
ロスカットオーダーを入れて損失になったら自動的に即手仕舞いすることが大事です。
15.皆が買っているので買う
日本人は特に、皆が買っているから買い、売っているから売るとなりやすいです。
バンドワゴン効果といいます。
天井で買って底で売る原因の一つです。
皆が買う前に買い、皆が買ったら売るが基本です。
皆と相場観が同じになったら危険と思うことが大事です。
16.最近起きたものしか見ない
総合的に分析するのではなく、最近、見聞きしたことだけで判断する傾向があります。
最近の情報や出来事を過大評価する傾向です。
最近、報道で流れているという理由だけで特定のものに投資することになります。
IT、AI、環境という今が旬と思うファンドに人気があるのも、そのせいです。
そのようなファンドの多くが組成された時がピークです。
これはブラックスワン(突然の想定外の事件)には反応するが、グレーリノ(ずっとある大きな問題)には反応しないのも同じバイアスです。
https://real-int.jp/articles/179/
17.確率を間違える
コインの表が5回続きました。
次は表が出る確率の方が高いか、裏が出る確率の方が高いかという時に、
次も表だろうと判断したり
次はさすがに裏だろうと判断するのは
どちらも認知バイアスです。
「表も裏も同じ確率」が正しい認識です。
ギャンブラーの間違い、誤謬、錯誤という表現で使われます。
18.損失を出したら止められない
投資やギャンブルでそれまでに費やしたお金を惜しんで、やめられず継続してしまう心理現象です。
損切りできない理由になります。
コンコルド効果といわれ、超音速旅客機コンコルドが採算が取れないことが明確になっても開発に巨額の資金を投下していたことが原因で開発を中止できなかったことに由来します。
サンクスコスト効果ともいいます。
19.期待値を超える
日本の宝くじは期待値が4割程度なので、宝くじ全部を買っても4割程度の戻りしかないのに、期待値が脳内で歪められ当たると思いこみ買ってしまう傾向があります。
プロスペクト理論といいます。
認知バイアスがなければ、日本の宝くじは売れません。
20.何もしない・現状維持
新しい環境に適用しないで、何もしない、現状を維持するバイアスです。
投資の勉強をしなければいけないと思っても何もしないまま現状維持となります。
21. 置いていかれたくない
ずっと上昇を続ける株を見たら、買わないで損をすることを避けようとして買います。
買わないと置いて行かれると思うのですが、これは
買わないで上昇していくのを見ると損をした気分になるからです。
多くの人が相場の天井で買う理由です。
22.目先の利益を優先する
未来に大きな利益を得られる可能性よりも、目先の小さな利益を優先してしまう心理傾向です。
今、10万円をもらうか、来年15万円をもらうかの選択では、多くの人が「今、10万円をもらう」を選択してしまいますが、これを現在志向バイアスともいいます。
正しい投資の勉強をすることが将来の大きな利益につながりますが、目先の銘柄を教えてもらうことだけに集中し、結局大きな損になるのも同じです。
23.利益は自分の実力、損失は他人のせい
投資で利益になった時は自分の実力で、損失となった時は他人のせいにする認知バイアスです。
自己奉仕バイアスともいわれ、自尊心を保つために働く傾向があります。
失敗から学習しないのでスキルが向上しない原因です。
間違ったマインドセットの典型といえます。
24.自信過剰
自信過剰も認知バイアスの一つです。
トルコリラを買ってしまった人は大きな損失を出しましたが、買った人は無知な人だけではなく自信過剰な人もいます。
自信過剰は危険です。
https://real-int.jp/articles/325/
https://real-int.jp/articles/384/
25.目に入らない、反対の理解をする
思い込みが強いと、そこに書かれていたり、語られていることと反対の理解になることがあります。
具体的なことは書いてないだろうと思い込むことで、具体的な答えが書いてあっても目に入りません。
一度金鉱山株が良いと思ったら金鉱山株は買ってはいけないと書いてあるのに、金鉱山株を買ってしまうのです。
時間分析は反転か加速すると聞いても反転しか認識できない傾向です。
26. 自分に認知バイアスがあるはずがない
プロを含めて全ての人に認知バイアスはあります。
自分に認知バイアスがあるはずがないという認知バイアスが一番厄介だといえます。
なぜなら、認知バイアスを解消することが困難になるからです。
人間の脳は省エネ運転をしており、認知バイアスや「ヒューリスティック」という意思決定を経験則や先入観で素早く判断するという能力を持っています。
認知バイアスは脳を守る能力の一つであり、それが投資では裏目に出るということです。
認知バイアスの理解は相場の本質の理解に役立つ
多くの認知バイアスがあることに驚いた人も多かったと思います。
自分に当てはまることが多いと思ったらかなり優秀な人です。
相場の本質の理解にも役立つことが分かります。
認知バイアス解消法
認知バイアスを解除する方法は次の通りです。
①自分が認知バイアスに陥っているという認識を持つ
プロも多く認知バイアスがあるのに、自信過剰で認識できない人が多いです。
②どのような認知バイアスがあるかを知る
多くの認知バイアスがあることで驚くと思います。
一つひとつじっくり吟味してみてください。
③客観的な意見を聞く
客観的な意見を聞くことでバイアスが解消します。
認知バイアスを解消するだけで、思考力が大きく向上することに相当します。
思考力を向上するより、認知バイアスを解消する方が簡単だともいえます。
客観的な意見や情報を得るにはイーグルフライを活用ください。
質問について回答もしています。
関連記事
https://real-int.jp/articles/1131/
https://real-int.jp/articles/2189/
最後に認知バイアスの項目をまとめておきます
1.権威がいうことは正しい
2.多くの情報を得ることが良い
3.信じたい情報を信じる
4.悪いことは聞きたくない
5.想定外は考えない
6.簡単なことしか拾わない
7.最初に入った情報を正しいとする
8.調べない
9. 論理的ぽいと信じてしまう
10.右肩上がりは続く
11.買ったものは上昇する
12.判断を間違えたことを認めたくない
13.判断を間違えたことを知りたくない
14.得る喜びより失う痛みがはるかに大きい
15.皆が買っているので買う
16.最近起きたものしか見ない
17.確率を間違える
18.損失を出したら止められない
19.期待値を超える
20.何もしない・現状維持
21. 置いていかれたくない
22.目先の利益を優先する
23.利益は自分の実力、損失は他人のせい
24.自信過剰
25.目に入らない、反対の理解をする
26. 自分に認知バイアスがあるはずがない