FRB議長のジャクソンホール講演を読み切る
中銀の役割が大転換へ
日本時間で27日午後10時10分からFRB議長がジャクソンホール会合(カンザスシティ連銀主宰年次シンポジウム)で講演をする。
演題は「金融政策の枠組みの再構築」である。
1年以上も前からパウエル議長らは「FRB学会」と称し、FRBメンバー、エコノミスト、金融・財政専門家など多彩な人々と金融政策の枠組み見直しを進めてきた。
この9月末までにとりまとめに動く予定にあり、しかも9月15-16日にはFOMCを控えているだけに、この講演の「判断の方向性」に市場が注目している。今年はコロナウィルス禍により、オンラインでの開催であり、バーチャル形式のイベントは雄大な自然環境(ジャクソン・レーク・ロッジ)との比較で見劣りする。
迫力を欠くという点では恐らく、FRBをはじめとする各国・地域の中央銀行の政策効果自体にも同じことが当てはまるかもしれない。新型コロナ危機に直面し、米国を含む各国・地域の金融当局が前例のない対応を打ち出してきたのは確かだ。
世界経済に何兆ドル相当もの流動性や信用を供与し、その過程で金融市場におけるプレゼンスは大いに高まった。しかし、新型コロナ感染拡大は金融当局の専門家たちにとってあまり好ましくない現実を浮き彫りにした。
世界経済の監督者として過去何十年も成果を挙げてきた金融当局だが、もはや自分たちだけで景気循環を管理する火力は持ち合わせていない。
金融当局は財政当局の支援を必要としており、そのことは新たな包括的刺激策を巡って米議会が膠着状態に陥り、緒に就いたばかりの景気回復を損ないかねない状況となっている現状から痛ましいほどに鮮明となった。
「中銀の全盛期は終わったのではないだろうか」
サマーズ元財務長官は今年に入ってからのプリンストン大学のオンラインセミナーで
このような挑発的な発言をしていた。パウエルFRB議長も中銀が直面する、こうした危険を十分に認識している。
昨年のジャクソンホールでのシンポジウムでは「世界的な低成長と低インフレ、低金利が新たなノーマルとなっている」と指摘した。
米金融当局が1年半余り前から、金融政策とその運営の徹底的な見直しに着手し、パウエル議長が今回のシンポジウム初日に、その最新状況について講演するのは、まさにこうした理由がある。
9月のFOMCにつながる
米国の金融政策は、経済予測を示して、それに整合する金融政策(金利)を示して、金利の先行きのパス(状況)についての期待形成を誘導して、その目的を達しようとしてきた。経済予測は重い意味を持つものである。
その経済予測は22年までだったが、9月FOMCからの予測は23年までとなる。7月FOMCの時点では22年まで実質的にゼロ金利政策を続けることを示していたが、今度は、その緩和を23年に向け、強めるのか、弱めるのかの判断をしなくてはならない。
3年間もゼロ金利を続ければ、経済は上向くし、インフレ率も上がるというのがFRBの経済モデルにもとづく予測の発想である。2023年には、バランスが回復してこないとおかしい。
2023年のPCE(個人消費)コアインフレ率を今の2022年予測の1.7%よりも高く見るならば、2%のインフレ目標のレンジには到達するということになる。そこでバランス回復を言ってしまえば、金融政策の正常化、利上げの話が出てきてしまう。それはフォワードガイダンスで引き締めを想定させることになりかねない。
不用意にバランス回復(目標達成)に言及すると、「正常化・利上げ」思惑につながり、2013年のバーナンキ・ショックの二の舞になりかねない。逆に、そうしたバランス回復を言わなければ今の金融緩和を3年間やってもゴールに到達できないという問題になる。その理由の説明が要るし、緩和が足りないのではないかということにもなりかねない。
FRBの2つの布石
9月FOMCで経済予測に用いる経済モデルを大きく変えて2023年のバランス回復に言及しないようにするか、あるいは追加緩和策を示すかの決断をFOMCは迫られている。難題である。
パウエル議長としては、経済予測の作成方法を変えるはあるまいが、2023年にかけ少なくとも現行の緩和、実質のゼロ金利政策の維持の妥当性を言える説明をしたいところであろう。
その観点で、FRBは2つの布石を打っている。
メルマガ&掲示板「イーグルフライ」より一部抜粋しています。
全文を読みたい方は、イーグルフライ掲示板をご覧ください。