金融危機をプロが予測できない理由
リーマンショック時もプロは確信を持って間違えた
リーマンショック後の金融危機で、ほとんど全てのファンドは大きな損失を出したり、破綻しました。
リーマンショックの1年3ケ月前の2007年6月8日、日経225の天井の時、激動開始日と判断し「全ての投資を止める時」と警告した時、私以外のほとんど全てのプロが株式相場について強気でした。
日経225週足 Tradingview
2007年6月8日当時、テレビ東京の「E-morning」や「Closing bell」でコメンテーターとして何度か出演しましたが、この時、出演していた他のコメンテーターたちは全員が株価について強気でした。
伝説のトレーダーと呼ばれている方も「思いっきり借金して不動産を買え」と推奨し、自分でも買っていた時です。
9割の人が相場は上昇すると思ったところが天井となる典型例です。
そして、これがプロが確信を持って間違える一番の理由です。
その後、100年に一度と言われるリーマンショックとなり、多くの人が資産を失いました。
現在、プロが確信を持って間違えている
2022年1月3日を今回の金融危機の前の天井(ニューヨークダウ)とし、現在、金融危機が静かに進行中、(株価下落中)と判断しています。
現在、まさしくプロが確信を持って間違えている時だと判断しています。
ニュヨークダウ日足 Tradingview
プロが確信を持って間違える理由
プロが確信を持って間違える理由を理解することは相場の本質を知るために有益です。
① プロではなかった
② 一部しか見ていない
③ 過去の延長線上に未来がない
④ 学者は正しいという認知バイアス
⑤ 皆と同じだと安心する
⑥ ポジショントーク
⑦ 分からないと言えない
⑧ 無意識の前提
⑨ 脳の仕組み
⑩ 金融分析モデルができていない
① プロではなかった
TV等に出演するコメンテーターの多くは
投資の専門家ではなく、
金融の専門家だったり、
経済アナリストや経済学者です。
投資のカテゴリーではなく別分野の専門家です。
■相場は9割の期間はタンタンと上昇し最後の1割の期間は急落です
誰でも相場は上昇すると言っていれば9割の期間は当たりますが、大事なことはいつ暴落するかです。
米ナスダック日足 Tradingview
このチャートを見て分かるように、常に上昇と言っていれば9割は当たっても、暴落を当てない限り意味がありません。
■9割の人が、相場は上昇すると思ったところが天井となり暴落を開始します
プロでも同じで、確信を持って間違えるという意味です。
■相場はファンダメンタルと反対に動くことが多いです。
相場は良い材料も悪い材料もすぐに折りこむため、ファンダメンタル分析とは反対に動くことが多いです。
これもプロが確信を持って間違える要因です。
ファンダメンタルだけで相場を判断するのが金融の専門家や経済アナリスト・経済学者なのです。
私が、信頼しているある経済アナリストはかなり深く正確に世界動向を予測できているのですがその人が言った言葉は衝撃的でした。
「私は投資・相場についてはコメントしません。
いつも自分の判断と反対に相場が動くからです。」
② 一部しか見ていない
現在、世界の全ての相場は連動して動いています。
つまり、世界の全ての相場を見ることが必要です。
しかし、投資分野の中でさえ専門家は株・為替・商品・債券が分かれ、
株の専門家に為替や商品のことを聞いても分かりませんし、
為替の専門家に株や商品のことを聞いても分かりません。
これはグローバル・マクロの視点がないということで、それだと金融危機を予測するのは困難です。
③ 過去の延長線上に未来がない
激動の時代は過去の延長線上に未来がない時なので
プロが確信を持って間違える時となります。
投資だけではなく、どの分野もプロほど、変化に弱いといえます。
プロは過去の経験が財産で、経験から未来を予測するからです。
過去の経験も極めて大事ですが
過去の経験をリセットして考えることも大事です。
④ 学者は正しいという認知バイアス
金融系の人はFRB議長が言うことは正しい、学者が言うことは正しいとなりがちです。
強い認知バイアスが存在するように思います。
政府や学者の発言はファンダメンタルであり、相場は反対に動くことが多いです。
インフレは一時的だというFRBの発表を信じてしまうことにもなります。
⑤ 皆と同じだと安心する
プロでも周りのプロたちの相場観を気にするので、大衆心理になりやすいです。
協調性が高いほど、大衆心理となります。
大衆心理では金融危機を予測することはできません。
金融危機に対しては常に後追いだからです。
相場の世界は「自分の相場観が他の多くの人と同じとなったら危険」と思わないといけません。
⑥ ポジショントーク
本人の相場観とは関係なく証券系の方は、株が下落すると言えません。
金融危機が来るとは口が裂けても言えません。
会社から怒られてしまうからです。
ポジショントーク、プロパガンダなのです。
従って、株屋と不動産屋は、いつでも「今が買い時」としか言わないと揶揄(やゆ)されています。
⑦ 分からないと言えない
プロほど「分からない」と言えない傾向があります。
プライドがあるからです。
相場は分からない時が多いものなので、
分からない時は「分からない」が正解です。
分からない時は見送り、分かりやすい時だけポジションを持つ
というスタンスが大事です。
現在は、分かりやすい時だと判断しています。
⑧ 無意識の前提
自分が買いポジションを持っていると、無意識に金融危機は来ないことを前提にしがちです。
また、一度発言した言葉に捉われ、それが前提になってしまうことも多いです。
一度前提になると修正や変更ができなくなります。
⑨ 脳の仕組み
脳は悪いことを記憶から消し、良いことだけを記憶に残す機能があります。
人生を楽しく生きるための機能です。
パチンコで利益になっているはずなのに、なぜかパチンコするために借金をしている人がいるくらい負けは記憶から消えます。
さらに人には変化を好まない保守的傾向があり、現状維持を選択する傾向があります。
一方、相場はタンタンと上昇し、突然暴落する特徴があります。
これらを合わせると、相場とは「タンタンと上昇して利益になる」イメージとなり、金融危機のイメージが薄くなり対応できなくなるのです。
⑩ 金融分析モデルができていない
学者たちは相場の本質を理解せず、平時にはよくても金融危機に対応していない金融分析モデルを作るため金融危機を予測できません。
ノーベル賞受賞者などの学者が作った優秀なファンド「ロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)」 が破綻したのも、相場の本質を理解しないでモデルを構築したからです。
以上、10個の視点で解説しましたが、一言でいえば、
プロが本質を理解していないので金融危機を予測できないのです。
ファンドは素人取引きになる
少し話は違いますが、似たような事例があります。
アクティブファンドの場合、
相場が過熱して天井近くなるとファンド購入者が急増するのでファンドマネジャーは売りたくても買うことになります。
相場が暴落して大底近くになると、今度はファンド売却者が急増するのでファンドマネジャーは、大底を買いたくても売ることになります。
つまり、どんなに優秀なファンドマネジャーであっても、そのファンドは天井で買い、大底で売る力が働くのです。
これはアクティブファンドより、何も考えないインデックスファンドが成績が良い理由の一つになります。
https://real-int.jp/articles/544/
相場観が正しくても利益にならない
相場観(方向性)が正しくても利益にできるとは限りません。
タイミング、つまり時間の概念が必要になります。
つまり、どんなに方向性が正しくてもタイミングが分からないと利益にならないのです。
誰も言ってないのかも知れませんが、
相場で利益を出す本質は
方向性とタイミングだけです。
こちらをお読みください。
https://real-int.jp/articles/1640/
投資の本質は「方向」と「タイミング」
ここまでお読みいただいて、プロが間違えるくらいだったら自分には手に負えないと思わないでください。
投資・トレードで大事な本質は「方向」と「タイミング」だけだからです。
金融危機再燃の前段階だとすると、次の2つだけでも、かなりのレベルです。
①株の買いポジションを持たない。又はストップロスを入れる
②目先の株の天井でストップロスを入れて売りポジションを持つ
「方向性」と「タイミング」を知ることができればよいのです。
方向性とタイミングを知るためには
イーグルフライをご活用ください。
イーグルフライの一部は
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こちらも合わせてお読みください。
https://real-int.jp/articles/2088/
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