本当はすごい地方政治
日本は地方から変えられる
日本は地方から変えられるにも関わらず、地方選挙の投票率は年々下がっており、平均40%台と国政選挙の平均50%と比べて、更に低いのが現状である。*1
2023年4月、統一地方選挙を前にしているが、国政選挙に比べてマスコミも一般の人々も関心が低い。
それは、多くの人にとって、地方政治とはどのようなものであり、どれだけのポテンシャルがあるのか、それがイマイチよくわからないことにあったと思う。
しかし、それが前明石市長である泉房穂氏の登場で、一躍地方政治に注目が集まることになる。
明石市の衝撃
まず、明石市が注目を浴びたのは、泉氏の発信力によるものも大きいだろう。
だが、国が少子高齢化に手をこまねいている中、明石市は子供、子育て世代に積極的な支援政策を打ち出し、人口も出生率も上げた確かな実績がある。
泉前市長が主に子供、子育て世代に向けて打ち出した政策は以下のようなものである*2
・高校生までの医療費無料
・中学生の給食費無料
・第二子以降の保育料無料
・遊び場の無料
・一歳までのおむつの無料と宅配
ここで多くの人が衝撃を受けたのは、こうした政策は国がやるものであり、地方自治体、都道府県レベルでここまでのことができるのだ、ということを知らなかったからではないだろうか。
多くの国民が、国の政治家がやるものだと思い込んでいることの大半が、
実は地方政治でできるのではないか、
そう気付かされた人も多いのではないだろうか。
実際、地方政治ではかなり多くのことができるのである。
本当はすごい地方政治
地方政治、地方の役所と言えば、大半の人のイメージは例えば、引越しの手続きに利用する、あるいは壊れた道路の修理をお願いするといったものではないだろうか。
しかし、明石市の実績を見る限り、医療費も無償化したり、おむつまで配ったりもできる。
一体どこまで地方自治体レベルでできるのだろうか?
実は、やろうと思えば、地方自治体で例えば「子供手当一人500万円支給」や「若者大学手当100万円支給」なんてこともできてしまう。(それが良いかはまた別の議論だが)
お金を配るだけなので、極端に言えばこうした政策は、財源さえあればなんでもできてしまうのだ。
他にも電子投票の導入なども、地方自治体レベルで実はできてしまう。
実際、つくば市などは電子投票の導入を実験的に進めている。*3
まず国民は地方自治体でどこまででき、
どこからが国の政治家の仕事なのかを知る必要があるだろう。
そして、多くの国民の生活に関わるようなことは、
実際は地方自治体レベルでできるという事実を知る必要がある。
ある意味、国政政治よりも、地方政治の方が、自分たちの身近な暮らしを改善するためには重要なのである。それにも関わらず、地方選挙の投票率は低い。なぜだろうか?
いま、地方政治の重要さは知った。
これでも選挙に行かない人の大半はおそらく、
「自分が選挙に行っても何も変えられない、変わらない」
このような心境から来るのではないだろうか。
それも地方政治と国政政治が大きく違うところである。
地方政治は1人の市民、有権者の声が政治に届くのである。
地方政治は1人の有権者の声が届く場所
例えば、「道路の修理をしてもらいたい」といった要望を役所に出せば、
まず役所は対応してくれる。
彼らは公務員として、市民のために仕事をする義務を負っているからだ。
同じように例えば市議のような最も有権者に近い議員は、
基本的に市民、有権者の意見を議会に届けるのが仕事である。
ここも国政選挙と地方選挙の大きな違いである。
国の政治家は仕組み上、一人一人の有権者よりも、もっと組織的な票を持っている団体をどうしても優先しがちである。
しかし、地方政治は、市民一人一人の票で選挙が決まるため、一人一人の意見に耳を貸さない議員は落選してしまうので、普通は有権者の意見に耳を貸す。
つまり、有権者が自分たちの暮らしに関することで、政治的に何か変えたいことがあれば、
自分の意見を届けてくれる地方議員に投票し、何をして欲しいのか伝えれば良いのである。
どうしても国政政治を見ていると、
「政治家は国民とは関係ないことばかりやっている」などと
「政治家」を一括りに考えてしまいがちだが
「国会議員」と「地方議員」は同じ「議員」「政治家」と言っても別物である、というところから理解する必要がある。
地方議員で大事なのはマニフェストと実行力
では次に、多くの地方議員の中で、誰がちゃんと仕事をしてくれる議員なのかをどうやって見抜くのか、ということである。
一つ、大きな参考になるのは「マニフェスト」だ。
例えば「地球環境をよくする」など、曖昧で、規模が大き過ぎるようなマニフェストは、一地方議員レベルで達成できる課題ではない。
言っていることは良くても、マニフェストに入れるような内容ではない。
マニフェストとは達成できる内容であるのが基本である。
泉前明石市長のような、「高校生までの医療費無償化」など、具体的かつ市民の生活に結びつくようなマニフェストを挙げている議員の方が良いだろう。
また、如何に人柄が良くても議員として、市民の意見を議会に届け、それを実現させるためには、議会での意見の通し方を知り、説得できる能力が必要である。
そうしたプレゼンテーション能力が備わっているかを、実際の候補者と話しながら判断するのが肝心だろう。
そして、マニフェストが良くてもそれを達成できなかった議員に対しては、次の選挙では投票しなければ良い、それが議員の側にも緊張を生むことになる。
地方から、日本を変えていく
地方の議員と言えば、いつも顔ぶれが変わらないのが定番である。
それは言い換えれば、いつも同じ人々が投票し、その投票している人々の意見をずっと地方議員は反映し続けているということである。
役所も役所でいつも同じ人ばかり相談にくるので、相談に来ない人の意見は届いていない。
つまり、今まで選挙に行かなかった人が選挙に行き、今まで当選しなかった議員が当選しないことには、その街は基本的にはずっと変わらないままだ。
反対に地方選挙は国政選挙に比べて、少ない投票数で議員が当選できる舞台でもある。
多くの有権者が斬新なアイディアを持って、議員を議会に送り出せば、その街は大きく変わる可能性がある。
例えば若者が学業に専念できるような「若者手当」のようなものを出すこともできるだろうし、スタートアップや実験都市として、若い人のアイデアが中心となった街ができれば、日本全体に大きな刺激を与えることもできるだろう。
特に小さければ小さい自治体の方が、そうしたことは達成しやすいだろう。
だから今、日本を変えたい、何かおかしいと思っている人、若い人ほど、地方議員を知り、選挙に行くことだ。
国政選挙はどうしても、高齢者が多数の日本では
若者に関する政策、
特に教育政策などは
どうしても後回しにされてしまう。
若者が若者のために政治をするためには、ある意味、若者自らが政治家を送りこむ必要があるが、それが実現できるのも地方政治である。
そして国政選挙とは違い、自分たちで議論したこと、考えていること、それらがちゃんと政治の中に取り入れられること、それが実感できるのも地方選挙なのだ。
是非今回の統一地方選挙で、地方政治について多くの人が知り、新しい流れが生まれることを期待したい。
*1.総務省データ
https://www.soumu.go.jp/main_content/000696014.pdf
*2.いずみふさほ公式webサイト5つの無料化
https://izumi-fusaho.com/