欧州通貨の不確実性
ロイターの報道と市場反応
昨日(7/19)は欧州時間に入り、ロイターより
ECB policymakers to discuss 50 bp rate hike this week, sources say
⇒「情報筋の話すところでは、ECB政策担当者は今週の会合で50bpの利上げを検討」と報じています。
どう解釈するかですが、まず、ECBは利害関係が異なる各国の中銀からの寄せ集めですから、普通の一国の金融政策を話し合う会合より、自国の利益を優先しがちです。
確かに、WSJ紙などがFRBのリーク・ソースであるのと大きく異なり、ECB当局者がロイターを使い50bpの利上げを市場に織り込ませようとするにはかなりムリがあります。
ロイターは今年1/14、日銀金融政策決定会合を前に「日銀、2%の物価目標達成前に利上げ検討」と報じ、ただの観測・憶測記事となり大きく信頼を失いました。
ブルームバーグの日銀関連の報道も然り、Hなる記者が書く記事は、憶測を超えた妄想ばかりで客観性に欠けると有名です。
ロイターの報道により、ユーロを買い戻す動きから一旦EURUSDは昨日高値1.0269を示現しました。
ノルドストリーム再開見通しの発表
その後は一旦小緩むものの、ロシア国営ガスプロムの当局者より「21日の保守点検作業終了後、天然ガスの供給再開の見通し」と報じられ、その後もユーロは高値圏での攻防が続きました。
(ちなみに、この保守点検入り前の天然ガスの供給量は通常の40%程度に絞られていました。おそらく冬場に向け、供給を絞りゆさぶりをかけてくることでしょう)
あくまで楽観的な見通しだけが一時的に支配しただけで、供給の状況は綱渡りだと思います。
BOE ベイリー総裁発言
BOE(イングランド銀行)のベイリー総裁より、「8月会合では50bpの利上げが選択肢、量的引き締めは初年度では500-1000億ポンドの規模を検討」と発言しています。
このタカ派発言もあり、今後はポンドも買い戻され、GBPUSDでは欧州時間の遅い時間に昨日高値1.2046まで上値を伸ばしています。
全般ドルを売る動きのなかで、USDJPYにも調整が入り、137.39まで反落、その後は明日の日銀金融政策決定会合を前にポジション調整の動きは一巡、138円台を回復しています。
伊ドラギ首相の信任投票
日本ではあまり報じられていませんが、本日はイタリアでドラギ首相の信任投票が実施予定、信任となるかは微妙な情勢です。
ECBの金融緩和の出口が迫っていることで、すでに南欧国債の金利は上昇、欧州で信用力の高いドイツ国債とのスプレッド(金利差)は急拡大しています。
こうした状況を看過できず、ECBは先月6/15に緊急の理事会を開催しましたが、(南欧債買い入れ等の)「分断化の抑止策」の発表は見送られています。
明日、こうした「分断化の抑止策」が発表されることになりそうですが、これはある意味「金融緩和」ですから、向かう先に矛盾を抱えることになります。
ノルドストリームの再稼働、イタリア政局の問題、ECBの政策の行方、米欧の金融引き締めの速度や規模の違い、欧州(通貨)は広く問題をかかえたままです。明日の日欧の金融政策の発表を待ちたいと思います。
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