楽観視せずに最悪を想定 相場の基本は政府発表を疑うこと
今の「不景気の株高」の時期は、景気悪化材料が米国の金融緩和の期待となり、株価上昇することが多くなります。そして、米国株と世界の株は連動するので「新型コロナウイルスで株価下落」と「米国の金融緩和で株価上昇」の綱引き状態です。
先週、米疾病対策センターのロバート・レッドフィールド所長は、新型コロナウイルスが米国内で広範に感染が拡大する最悪の事態に備えた準備を進めてきたことと、ウイルスが来年以降にも残り続ける可能性を示唆しました。だんだん新型コロナウイルスの世界への拡大が強く意識されるようになってきているので、株価下落圧力は強くなる方向です。
前回、「報道を信じてはいけない」という話を書きましたが「政府の発表や方針を信じてはいけない」という視点も大切です。当初、新型コロナウイルスは「人から人へは感染しない」などの間違った認識や楽観的な認識から水際対策をしなかったことで感染が広がりました。
大衆は「想定外の災害」という表現を使うことが多く、パニックになり間違った行動をとりがちですが、厚労省の担当者は1月30日の会見で「症状がない人にもウイルスが含まれていることは想定していなかった」という発言がありました。未知のウイルスに対しては最悪を想定して対処することが基本なのに、楽観視して「想定外」という言葉はお粗末です。
これは何度も繰り返されてきたことで、3・11の原発事故の時も同じく、本来は最悪のことを想定して危険エリアを広めに設定し、状況を確認していきながら危険エリアを縮小していくのが基本なのですが、実際には、まず最小の危険エリアを設定し、時間の経過とともに危険エリアを拡大していったのです。その結果、日々、危険地帯が拡大することになり、どんどん不安が拡大することになりました。
災害や相場については楽観視せず、最悪を想定し準備しておくことで、初めてお気楽になれるのです。
激動の時代は想定外の災害が多発することを理解しておくことが知恵の第一歩です。見込み違いの政府発表や方針は毎度のことで、これは政府を批判しているのではなく、私たちが同じ間違いを繰り返さないために自分の頭で考え、先読みをしておくことが大事だということです。
投資においては国や大衆が何を考えどのように行動するかと、実際の未来とのギャップが利益になるからです。
日刊ゲンダイWEB版にも掲載