為替介入の可能性ほぼゼロ
悪い円安発言
昨日は閣議後の記者会見で鈴木財務相から、「価格転嫁できず賃金が伸びない環境は悪い円安」とはっきり「悪い円安」という表現でゆるいけん制が入りました。
ただ、為替市場はほぼ無反応、USDJPYは東京時間の午後に入り2002年5月以来の高値126.68まで上昇、その後はグッドフライデーの祝祭日でもあり126.31-68のレンジとなりました。
昭和の高度経済成長期のなか、日本は原材料を輸入して加工して輸出するいわば加工貿易を軸にとした輸出依存型の成長を遂げてきました。
円高に弱い一方、円安には強く、日本を代表する輸出企業であるトヨタ自動車などは、為替の1円の変動が本体の収益をいまだに350-400億円も左右します。
ただ、生産現場の海外移転が進んだことで、こうした円安のメリットを享受できなくなり、むしろ資源を持たない日本は高い一次産品を購入することで国富が流失し始めています。これが円安の原点ですから、「けん制」が入っても流れが変わるわけでもありません。
為替介入は?
過去の為替介入
日本は2000年代以降、約62兆円の為替介入(外国為替平衡操作といいます)をしてきましたが、最終は震災後の2011年、この全てが円売りドル買い介入です。
円買いドル売り介入が最後に実施されたのは、1998年6月17日で介入規模は2312億円、その前ですと同年4月9-10日両日で合計で2兆8158億円でした。
介入水準は130円台で、一旦円高ドル安方向に動いたものの、市場のドル買い圧力は非常に強くすぐに反転。USDJPYは8月に147.64まで上りつめました。
何が言いたいか。為替介入は瞬間は効きますが、効果は『大海に水を1滴たらす程度』ということです。この『大海に…』の表現は、かつて我々の業界で大活躍した中山茂氏の言葉を引用したものです。
相手国の合意も必要
為替介入は実際、相手国の合意が必要で、物価の上昇が止まらない米国が物価上昇を加速させるドル売り介入に理解を示す可能性が低いといえます。
さらに金融緩和を継続していて、日本が円買いドル売り介入をした場合、政策の整合性が問われます。
昨日来のメディア報道などでは130円超えで為替介入の現実味という報道が目立ちますが、実務経験者でない人のたわ言位に思っています。
為替介入が見込まれる場合、そうした匂いは自然と伝わってくるもので、その時準備すれば十分で、順張り的に追っても遅くありません。
まとめると、現時点での為替介入の可能性はほぼゼロ、おそらく仮に130円に乗っても当面ムリでしょう。
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