リスクオフ 投資・トレードは?
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リスクオフ 投資・トレードは? 竹内のりひろ×松島修
ナスダック調整局面入り
株式市場の場合、
- 高値から10%下落で調整局面入り
- 高値から20%下落で弱気相場入り
と言われています。
赤の線が200日移動平均線ですが、その水準も割ってナスダックは調整色を強めてきました。他の米株を見ると、NYダウやSP500はまだそうでもないですが、ナスダックは調整局面入りと見ています。
リスクオンとは?
金融市場が比較的安定していて、安全に自己資金、投資資金を投じられる環境のことです。
適温相場(ゴルディロックス)が前提で、ボラティリティが低く、株式市場では上昇相場が続いている状態のことを言います。
株価の上昇と共に、評価益がでてリスクが取れるようになるので、
為替市場であれば、例として、金利が低い通貨(円、スイスフラン、ユーロ)を売り、金利が高い通貨(ドル、新興国通貨)を買う動きとなります。
リスクオフとは?
リスクセンチメントが悪化し市場が荒れてくると、そうしたものを持っていられなくなるので巻き戻し(アンワインド)が発生します。具体的なトレードですが、リスクオンの時とは逆のポジションを取りにいくことになります。
株式市場であれば株を売る、為替市場であればクロス円、ドル円を売り、より金利が低い通貨を買い戻す動きとなります。この状態を「リスクオフ」と定義しています。
ナスダックが崩れて200日の移動平均を割ってきましたが、これは典型的なリスクオフの局面と言えます。
いつもと違う値動き
昨日(1/19)は異質な値動きがありました。通常であれば、昨日のように米株が下がっているリスクオフの局面であれば、以下の動きになります。
- 最初に買い建てた金利の高い通貨を売る
- 最初に売り建てた金利の低い通貨を買い戻す
グローバルで株価の調整が続いている時は、円、スイスフラン、ユーロを買い戻しますが、昨日の主要通貨の騰落を見ると円、スイスフラン、ユーロは真ん中あたりに位置していて、典型的なリスクオフの日ではなかったと言えます。
一方で通常であれば売られてよいはずの豪ドル、ニュージーランドドル、ノルウェークローナは逆に買われています。通常はクロス円が売られてよいのですが、すべての通貨が上昇しているということは、ドルが全面安ということなので普通の相場つきと少し違うと感じました。
過去の経験則が役に立たない相場
先ほどのリスクオフの局面にしても、過去の経験則と異なる場面は何度もありました。そうした局面では、相場観を修正していけばよいと思います。
ディーリングルームでは「すぐれたトレーダーは過去の値動きをすべて記憶している」とよく言われていました。過去と同じような条件になった時に、売り買いを体が反応するようになってくるので、経験則やデータの蓄積は非常に重要です。
いま銀行などの金融機関が提供しているプラットフォームには、AIが内蔵されていて顧客にプライスを提示しています。そのベースになっているのは過去の値動き、顧客の取引状況、経済指標後の反応などです。ですからデータの蓄積は私たちトレーダーにとても非常に重要です。
データがあったほうが楽で、過去にこういうことがあったから、こうしようと考えることもできます。ただ、シナリオから大きく外れてしまった時にどうやって修正するかというのがさらに重要です。
メインシナリオを作りながら、サブシナリオも作るという細かい作業をしておけば、想定外の展開にも臨機応変に対応することができます。
いま、世界はコロナ後の金融緩和からの転換点を迎えています。米国主導で利上げ、量的緩和の縮小、買い入れた保有資産を減らす動きが出てきています。これらは過去に前例がないので、自分でシナリオを立てていくしかありません。
リスクオフでドル円の買い?
コロナショック時のドル円
ドルと円の金利を見ると、ドルのほうが高いので、
リスクオンの局面では円を売ってドルを買う取引(キャリートレード)、
リスクオフの局面になると、元に戻さなければないのでドル売り円買いとなります。
一昨年のコロナショックの時は、リスクオフでドル売り円買いとなりましたが、102円の手前まで下がったところで大きく反発しました。
これは米国で、株を売って現金化するだけでは不十分だったことになり、米国債を売って現金化する動きまで出たためです。米国債を売ると金利が急上昇するので、これに反応しドルが全面高になり、1~2週間で102円台から111円台まで上がりました。
この時に「リスクオフ=クロス円売り、ドル円売り」 という考えしかないと大変なことになります。メインシナリオを作りながら、サブシナリオも作って臨機応変に対応することがいかに重要か分かると思います。
リスクパリティ戦略と巻き戻し
リスクパリティ戦略とは、機関投資家、特にヘッジファンドが用いるリスクをまっ平にする戦略です。
株30%、債券50%、商品10%、その他10%というポートフォリオがあったとして、ここで市場に激震が起こると、株の30%ボラティリティ(変動率)が急上昇します。
すると、株の評価益、評価損が大きくぶれて、全体のリスク量を調節できない状態となります。こうした時には株のバランスを強制的に落として、変動率の低いものに移行していきます。
この場合だと債券に移したいところですが、債券も変動率が上がっていて移せないとなると、株も債券も売り、すべて現金化してリスクをパリティ(均等)にします。
コロナショック時、リスクオフなのにドル円が買われた背景には、リスクパリティ戦略があります。これが分かっていると、なぜドル円が買われたのか分かって頭を修正できると思います。
予想(シナリオ)が外れた時はチャンス
メインシナリオを作る時には、頭の中にそう考えた根拠があるはずですが、根拠を考えるためには「インプット」が必要です。シナリオを作る時には、アウトプットではなくインプットのほうが重要なのです。
AIはすべての事象をインプットしているからアウトプットできるのであって、人間もシナリオを考える時にはインプットが必須です。シナリオが外れるのはよくないですが、そういった時にはサブシナリオに移行していきます。
- 上下1シグマの中に発生する確率 68%
- 上下2シグマの中に発生する確率 95%
- 上下3シグマの中に発生する確率 99%
これは統計学で決まっているものですが、自分が描いたメインシナリオといっても当たる確率は68%なので、それが外れて外側32%に行ったときのシナリオを考えておかなければなりません。
ストップロスを置くのも、メインシナリオを断ち切るひとつの転換点なので、そこでもう一度メインシナリオに戻すのか、ドテンしてサブシナリオに移行するのか考えます。
サブシナリオにも、
- メインを補強するシナリオ
- メインと逆のシナリオ
- ダークホース的なシナリオ
などがありますが、メインとサブでどうやってバランスを取っていくのかはシナリオを練る本人次第だと思います。ただ、その根底になるのはインプットです。
いまどんな戦略を練るか
自分が今もHSBCにいたとしたら、これから米国で利上げや引き締めが起こることを考えて、一番勝算が高いのは金利先物を売る戦略だと思います。個人投資家でも、シンガポールなどではドル金利の先物取引が出来ます。
欧州でもドイツの10年国債が何年かぶりにマイナス金利からプラスになっています。まだ上昇すると考えるとユーロの金利先物を売るのもよいと思います。
それが出来ないとなると、為替か株を取引するしかないですが、今まで積み上がってきたポジションがアンワインドされることを考えると個人投資家としてできる戦略はリスクオフ的なもの、円買い、ユーロ買い、スイスフラン買いだと思います。
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