為替取引 最新版 「移動平均の斬新的な考え方」
香港上海銀行(HSBC)でチーフディーラーを務めた経験からの、相場をみるうえで重要なファンダメンタルズの知識を解説!
相場の世界でプロと一緒の土俵で取引をするには、やはり相場の知識が必要です。香港上海銀行( HSBC)で10年以上に渡りチーフディーラーを務め、プロも教育をしてきた筆者が、相場の知識をひとつひとつ解説していきます。
そもそも移動平均は、統計学の分野では経済統計で傾向変動を見極めるために極めて有力な手段となっています。移動平均は、金融取引において、株でも為替でも、この先の方向性を見るという点では、ひとつの有力なツールです。ただ、その使い方次第で結果は大きく違ってきますので、今日は掘り下げてみましょう。
私のYouTubeチャネルの中では、かつて2度ほど、移動平均をテーマとして取り扱いました。その度に、ご質問を頂きましたので、今日はこの移動平均について、ご質問に答える形で、そして過去のものを補強する意味で少し新しいところも採用して考えていきたいと思います。
動画での解説は、こちらをご覧ください。 (約12分)
なぜ移動平均(moving average)を使う?
- モメンタム(方向性)を見極めるため
統計学でも、この先の方向性を見るということです。 - 時間軸でのモメンタムの強弱を計測するため
- 大多数が使う時間軸を採用することで、大多数と同じポジションに
- 結果、市場に立つポジションというのは偏りやすくなる
皆と同じことをやると、同じポジションに偏ります。これを避けるために少し、時間軸を変えてみましょうというのが今日の主題です。
移動平均というのは複数本必要か
チャートシステムには様々なものがありますが、MT4など、FXの証拠金会社が提供しているプラットフォームが大多数でしょう。
そこには初期設定(デフォルト)がされており、多くの場合は、移動平均を使うと200日/75日/21日、あるいは200時間/75時間/21時間というような初期設定がされています。
200日(長期):おおよその1年の営業日
75日(中期): 3ヶ月(25日の営業日が3回)
21日(短期):1か月
こうしたものを、そのまま鵜呑みにして採用することによる妥当性というのはあるのでしょうか。そしてこの数値は誰が決めたのでしょうか。
結果的にこれをそのまま使うことによって、皆で同じことをしていることになりますので、そのまま使うことを疑ってみましょう。人と同じことをしないということに注力をしてみたいと思います。
テクニカル分析は盤石か
多くの書店の投資コーナーに行くと、為替の本や株の本がたくさん売られています。そうしたものを開いてみると大体のものに関しては、テクニカル分析に軸を置いています。
ただ、そうした本をすべてマスターして取引に臨んだところで、必ず勝利につながるかというと、一部はつながるかと思いますが、そうではないと思います。
もっと必要なエッセンスとなってくるのは、資金管理や、その他の部分を見極める能力です。
テクニカル分析だけで財を成した長者がいるか、というと恐らくいないと思います。トレーダーを育てる名言を残したラリー・ウィリアムズ氏などはテクニカル分析だけでトレードしていますが、それは別格で、恐らく、そういう人は一握りだと思います。
テクニカル長者が御殿を建てたかというと、そうではないでしょう。日本で売っているテクニカル分析の本を一冊すべてマスターして、皆がテクニカル長者になるのだったら、為替市場・株式市場では敗者がいなくなります。
そうならないところに、難しさがあるのです。テクニカル分析というのは、バックテスト(過去に遡って検証)し、検証結果を出してから使っていかなければなりません。つまり、「そのまま使うことを疑う」ことが必要です。
バックテストの重要性
過去に遡ってPL(プロフィットロス/損益)を検証してみることが重要です。また、新しい時間軸を採用していくときは、バックテストが必須です。
かつて、私のYouTubeチャンネルの中では、%R(ラリー・ウィリアムズ氏が考案したテクニカル分析)やMACDをどうやって、うまく数値化して使っていくかという動画を作っています。よろしければ、そうしたものも参考にしてご覧ください。
人がやっているから使うのではなく、自分が使いやすければそれでいいということです。新しい時間軸を採用するときは、篩(ふるい)にかけなければなりません。大きい石や小さい石を分けるものです。トレードの数を絞るために、篩にかけた上で時間軸を変更していくということです。
過去検証の結果
まだ今ほどコンピューターが流行っていない時代の1978年に当時のメリル・リンチ証券(現在のBofA証券)が、壮大な研究結果を出しています。
タイトルは、“Computers can help you trade the future markets”(コンピューターは先物取引で役立つ)です。今更こんな事を言われても、あまり新鮮味はありませんが、当時の発表時は非常にセンセーショナルでした。
論点になっているのは13の商品を検証結果し、そこで出てきた結論というのは、移動平均は1本で良いと言う考えです。
ここで重要になってくるのは Optimize(最適化)です。1つの商品に対しては、どういう長さの移動平均が一番フィットしているか、収益性が高いか、これを検証した結果でした。
この結果は、1970年から76年までの6年間の結果をまとめたものです。
チャートからみるアプローチの仕方
通常、移動平均を2本使うと、だいたい上の図のような使い方をすると思います。長期線を1本走らせます。そこに短期または中期を走らせておいて、通常、長期線がこのように下落を辿っている時は短期線または中期線に戻った時に、戻り売り。
一方で長期線が上昇している時は、短期線あるいは中期線の価格が落ちてきたところで、買いというのが普通の使い方です。メリル・リンチ証券が検証したものは、下の図のような見方です。
パラボリック的に長期線の下であれば、売りは継続。ピンクのゾーンが売り持ちの継続、そして長期線を価格が上回って以降は買いを継続。常に買いか売りかのどちらかのポジションを継続している、そのようなアプローチをしました。
過去の検証結果の考察
- 先物価格の変動はランダムでないということが経験上の証拠を掴んだ
⇒テクニカル分析を正当化 - どの商品にもうまくは働かない。
⇒どの商品にも同じ長さの移動平均は合わない。そのため、それぞれの商品に最適な期間の移動平均がある - 長期の移動平均が短期より成果が良い。
- 単純移動平均が加重平均やMACD(指数平滑移動平均)を上回る成果を上げた
過去検証の結果資料は、上図の通りです。縦に13品目の商品が並んでいます。
Best Average:ベストな移動平均の期間
例えば一番上のココアですが、54という数字がでています。これは54日がベストフィットということで、結果的に Optimizeされた数字ですので、50日よりもより良いのが54日。もちろん51日よりも54日。同じように52、53日よりも54日の検証結果が一番良かったということで、54という数字を抽出しています。
Cumulative Profits or Losses:全体の損益の合計額
Largest String of Losses:1回の最大損失額
NumberTrades:全体のトレードの数
Number Profitable Trades:収益で終わったトレードの数
Number Losing Trades:損失で終わったトレードの数
Ratio(#Profits/#Trades):比率
全体のトレードの数の内、何回勝ったかをパーセンテージにしたもの
一番勝率が高いのは36.6%でコッパー(銅)です。一方で一番勝率が低いのは、18.9%でコットンです。勝率が18.9%ということは、20%以下です。
それでも Cumulative Profits Lossesはプラスです。この場合は、5回のうち4回以上も負けているということです。いかに移動平均の支配する力が大きいのかがわかります。
まとめ
- 自身の移動平均の使い方をレビューしてみる
- 他のインディケーターでも同じ
- 人と同じことをしていると、人と同じ結果にしかならない
- 勝率40%でも、勝ち組に入れる
⇒20%以下でも勝てるため、40%でもHowToによっては、勝ち組に入れる
今回は為替取引最新版「移動平均の基礎的な考え方」について考察しました。
つまりは、デフォルトで設定されている移動平均でなく、いろいろ数値を変えてみて、その商品に合う移動平均の日数を決める、もしくは移動平均時間を決めていくことが必要であるということが結論です。