天動説も地動説も正しい?思考の片寄り ガリレオ・インパクト
350年遅れの重大発表
1992年、ローマ教皇のヨハネ・パウロ2世が大事な発表があるとして皆がどんな大事なことかと思って発表を待ちました。
その内容は「天動説を放棄し地動説を承認する」でした。
ガリレオ・ガリレイの裁判の判決が誤りであったことを認め謝罪したのです。
ガリレオの死去から350年も経っていました。
ガリレオは当時の人が信じていた
地球の周りを太陽が回っている「天動説」は間違いで、
地球が太陽の周りを回っている「地動説」が正しい
と主張したことから裁判にかけられ有罪となりました。
判決で「地動説は間違い」と誓わなければ死刑だと宣告され、ガリレオは無理矢理誓わされることになりました。
裁判の後で「それでも地球は回っている」とつぶやいた話は有名です。
天動説が正しく、それが常識だと思っている人たちにとって地動説は受け入れ難いことだったのです。
350年経過してから遅すぎる謝罪に多くの人は驚きました。
視点の違いが問題になる
実はこの発表は新たな間違いを生んだともいえるのです。
地動説と天動説は全く対立しているように見えますが、実は科学的(物理的)にはどちらも正しいともいえるのです。
なぜなら、それは視点の違いだけだからです。
視点を地球に置けば太陽が回っています。
視点を地球以外に置けば地球が回っているのです。
視点を地球以外に置き、太陽の周りを地球が回っているとした方がシンプルで計算が楽だというだけのことです。
「地動説が間違っている」という判断は間違いでしたが、
「天動説を放棄し地動説を承認する」と発表したことも新たな間違いともいえるのです。
思い込みに注意
一度、思い込んでしまうと訂正することは結構難しいものです。
「地動説と天動説は視点の違いだけで、どちらも正しいと言えば正しい」と聞くと、それはおかしいと思う人が現れることになります。
これは350年前の「天動説が正しい」それが「常識」だと思っている人たちが「地動説が正しい」と聞いて拒絶反応が現れるのと同じです。
投資の世界でも各相場の連動性や常識がどんどん変化していきますし、一晩で相場が変わってしまうこともあります。
自分の過去の経験や今までの相場の動きに囚われてしまうと確信を持って失敗することになります。
また、人の視点はそれぞれ異なり、皆が自分の視点が正しいと思っていますが自分の視点がニュートラルなのかを確認していくことが大切です。
各相場の連動性が変わってきた
最近、ドル/円は長期下落から上昇に転じました。
今までは株価が下落するような事件があるとドル/円も下落しましたが、現在はリスクオフ(株価下落)の時にも下落せず今までの動きと変わってきています。各相場の連動性も大きく変わってきているので過去の経験に囚われていると判断を間違えることになります。
全体を見渡す大きな視点がとくに必要になっています。
自分の視点が偏っていないか確認してみる
投資やトレードではチャートを見て買うか売るかを判断すると良いでしょう。
株や不動産の世界では「いつでも買い」だと主張する傾向がありますが、1990年の日本のバブルのピークは皆が熱狂を持って買っていた時で、そこで日本株を買っていたら30年後の今も買った価格に戻っていない銘柄もあります。
買い時や売り時は世の中の声に左右されずにチャートで判断することが大切です。
簡単な確認をしますので考えてください。
次の(1)のチャートを見て売りたくなりますか?買いたくなりますか?
深く考えずに直感で回答してください。
(1)
Tradingviewチャート
今度は次の(2)のチャートを見て売りたくなりますか?買いたくなりますか?
深く考えずに直感で回答してください。
(2)
Tradingviewチャート
いかがでしたか?
実は、この2つのチャートは同じものです。
(1)のチャートは米ナスダックの月足チャートで(2021年3月24日)
(2)のチャートは(1)を上下反転したものです。
従って(1)と(2)でどちらも買い、もしくはどちらも売りという判断をしたとすれば判断が偏っていることが分かります。
つまり、この2つのチャートを見て
(1)は買いたい(2)は売りたい
(1)は売りたい(2)は買いたい
ということであればチャートを見る視点はニュートラルです。
しかし、
(1) も(2)も買いたい
(1) も(2)も売りたい
(1) は分からないけど(2)は買いたい
(1) は分からないけど(2)は売りたい
となると、買いか売りに意識が偏っていることが分かります。
普段は自分の売買の判断に偏りがあっても気付きませんが、このようにチャートを上下反転してみると自分の視点の偏りが見えてくるので自分の思い込みを解消することができます。
視点を変えていくことで相場の本質が見えてくる
また、上下反転だけではなく左右反転させたりしたり、各相場の連動性など見ていくと今まで見えていなかった世界の各相場の状況や今後の相場の動きなども見えてきます。
視点を変えることで相場の本質が見えてくるのです。