【FX初心者講座】第五章 相場について
FX初心者向けに書いた分かりやすい講座。FXを始めたい方はまずコチラから。
まずは正しい知識から。
1.相場の本質を知る
2.相場の特徴
3.投資資金の種類
4.相場心理
5.相場の動き
6.投資戦略
7.日本のリスク
8.FX は保険にもなり得る
9.覚えておくとよいこと
10.資金管理表
1.相場の本質を知る
戦略を持つには、相場の本質を知る必要があります。人に個性があるように、各相場にも個性があります。
プロでも株式投資や商品先物取引で使っていた手法や考え方を、そのままFXに適用して失敗するケースは結構多いものです。
これは、個々の相場に個性や動き方の特徴があるという基本的なことを理解していないからです。
相場の特徴を理解することは、相場の本質を理解することです。
チャート分析手法は相場の本質を理解するために学ぶものなのですが、チャート分析手法は学ぶものの、相場の本質は学んでないという人が多く、その場合、確信を持って間違えることになります。
さらには、投資には実に多くのものがあります。例えば、不動産投資とFX投資では、ある意味両極で、まるで違う世界です。
不動産投資とは、実際には不動産経営だと思った方が良いでしょう。つまり、不動産投資とは不動産賃貸業を営むことであり、賃貸や管理、建物や法律などのことも、幅広く知っておくことが大切です。
一方、FX投資は数字の世界になります。どちらでも、共通していることは、その仕組みなどをよく理解することが大切だということです。
日本人の場合、投資をする時に、その分野のことについて、ほとんど理解をしないで投資をする人が多いです。
投資信託でも、高いリターンを見込んでいるものがありますが、リターンが高く見えるだけで、リスクも高いことに気付かず買ってしまう人が非常に多いです。
リターンが高いロジックを理解したら、怖くて手を出せない商品ばかりです。そのような商品が人気ナンバー1だと聞いて、買ってしまう人も多いです。これは大衆心理であり、大衆心理は常に間違える心理です。
2.相場の特徴
各相場の特徴について簡単に列記してみます。大切な部分なので、よく覚えておいてください。
• 上げ続ける相場はなく、下げ続ける相場もない
• 為替は、基本的にレンジ相場
• 為替の中では、他の相場で言う裁定取引という概念がない
• クロス円は、日本時間の朝に買い場(目先の底)がくることが多い
• 豪ドル/円は動き出すと一方向に動きやすい
• 豪ドル/円は、ユーロ/ドルなどの動きより若干遅れることが多い
• ユ-ロ/ドルは上にも下にも行き過ぎる
• 金(ゴールド)とユーロは連動することが多い
• 株価は景気の先行指標と言われるが、一般株の先行指標になるのは金融株(銀行や証券株)
• ある日突然、相場の動きは変わる
• 9割の人が上がると思ったところが天井
• 9割の人が下げると思ったところが大底
• 相場はジリジリ上げて、ストンと下げる
• 3月は相場が荒れることが多い
• 5月は株が下落することが多い
- 株と為替は連動することが多い
• 長い休みの前には、皆がポジションを落とすので、上昇してきた相場は反落することが多い
• 株価は突然ゼロになる可能性があるが、為替や金(ゴールド)などは基本的にはない(マイナー通貨は除く)
• 長く休んだ相場は大きく上昇する
これらの特徴を理解すると、仕掛けポイントがはっきり見えてきます。
この中でも「クロス円の買い場は、日本時間の朝に来る」、つまり、一日のうちに円高局面は日本時間の朝に来ることが多いというのは、短期はもちろん、中長期にも結構使えると思います。
3.投資資金の種類
市場における投資資金の種類
相場には、異なる種類の投資資金があります。為替において、分かりやすい視点で考えると次のように分かれます。
- 短期的な資金と長期的な資金
- 反対売買する資金と反対売買しない資金
それぞれを見ていきます。
短期的な資金と長期的な資金
短期的な資金とは、たとえば、買ったらその日~数ヶ月以内に売るような取引を行う短期筋の資金です。
売りから入った場合には買い戻し、買いから入った場合には売って終わります。短い場合には数秒で反対売買することもあります。長期的な資金は、一年以上寝かせていくような投資資金です。
反対売買する資金と反対売買しない資金
反対売買とは、買ったものは売る、売ったものは買うで終わる取引のことです。
投資資金は、基本的には反対売買する資金のため、最後は回収して終わります。一方、オイルを売った貿易資金などは、売るだけで反対売買することはありません。
これから考えると、短期的な資金は、目先の動きには影響を与えるものの、中長期的なトレンドには影響を与えません。長期的な資金や反対売買しない資金は、トレンドを形成します。
下落トレンドを形成している相場では、売りを仕掛ける短気筋がいます。これらの短期筋は、下落で利益を出しますが、底近辺では一斉に手仕舞いをします。
すると、急落していた相場は、反転して急上昇することになります。これは、短期筋の売り方が底を打ったと判断して、あわてて利益確定の買いを入れているからです。
このような時には、売り手が急激に上昇する相場で、手仕舞いが遅れて含み損が発生することもあります。再下落するだろうと思っていた筋も、下げる気配がないのであわてて買い戻すことを踏み上げ相場といい、相場はさらに上昇します。
短期筋が多い相場、たとえば、豪ドル/円などは反転後に急上昇することが多いです。
4.相場心理
センチメント
センチメントは、その時の相場心理のことです。例えば、悪材料のため短期的に下げたとしても、すぐに調整が終わり上昇を始めるような相場は、センチメントは上昇です。
同じ材料でも、上昇材料になったり下落材料になったりするのは、このセンチメントが違うからです。材料が出た時に相場がどう動くかを見ると、センチメントが分かります。
相場を判断するには、テクニカル・ファンダメンタル・センチメントの3つを意識しておくと良いでしょう。
ただし、その時々にそのバランスは変化します。 面倒な人は、テクニカルだけでも良いでしょう。
セリングクライマックス
相場が急落した最後は、売りが売りを呼ぶ大きな下落から、急反転後に底をつけて上昇を開始します。このような急落のピークのことを、セリングクライマックスと呼びます。
恐怖で叩き売る側と、それを待って買う側の、両方ともピークになる時です。
相場では、どんな状況の時でも、約定している売りと買いの数は同じです。従って、売りのクライマックスではありますが、これは買いのクライマックスでもあるのです。
急落する相場に便乗して新規に売りポジションを取る人が多いので、下落は加速します。ですが、新規売りポジションは、短期のポジションのため、必ずすぐに買い戻します。
つまり、売った数だけ買い戻すので、底を打ったと判断したら、速攻で大量の買戻しが入ります。これが、反発力があるという表現になります。
大きく売られて売り方が買い戻しに入った時に、買いで入るのがお気楽な方法です。底の底を狙うことも可能ですが、反転上昇開始してから買いに入っても充分に美味しいのがセリングクライマックスです。
恐怖にかられて底値で手放すのではなく、待っていて底値で買う側になりましょう。
下のチャートは、2011 年の東日本大震災直後に、豪ドル/円が一旦大きく下落し、反転急上昇したチャートですが、ここで大きく下落している大底がセリングクライマックスです。
★ 豪ドル/円 日足チャート 東日本大震災の一週間後に下落のピーク
このセリングクライマックスのピークを狙うには、イーグルフライが最適です。
https://www.eagle-fly.com/mm/
レパトリ
為替相場では、材料と反対に大きく動くことがあります。例えば、2011 年の東日本大震災は、材料としては円安材料でした。
しかし、実際の相場は、震災報道の直後は少し円安に振れていたものの、だんだん円高方向に行き、一週間後には一旦大きな円高に、その後大きく円安になりました。上のチャートを見ると分かりやすいです。
これは、レパトリ(レパトリエーション・Repatriation)と言われるもので、外貨の資産を本国に引き上げるため、自国通貨が高くなる現象です。東日本大震災では、保険会社が保険金支払いなどののために、海外資産を日本に戻すだろうという思惑でのレパトリによる円高でした。
つまり、本当のレパトリではなく、レパトリ期待というセンチメントゆえの円高です。 一旦、レパトリ期待のセンチメントが終わると、本来の方向の円安に大きく振れていきました。
レパトリといえば、1990 年代の日本のバブル崩壊以降、大きなレパトリが続いて、ドル/円が 160 円から 80 円まで円高になった原因の一つとされています。
レパトリは、株式などにはない為替特有の動きです。大きな事件が起きた時に反対方向に行くことがあると知るのは、とても大切です。なぜなら、反対に行ったあとは戻るため、分かりやすい投資局面になるからです。
5.相場の動き
金利相場
もう長い間、為替の世界では金利相場が続いています。金利相場とは、何もなければ、金利が高い通貨が買われ、金利が低い通貨は売られるという相場です。
金利を上げるとその通貨は買われ、金利を下げるとその通貨は売られます。
本来、金利が高い通貨は、その分インフレがある通貨なので、年々通貨の価値は下がるため、原理的には長期的に通貨安になります。しかし、金利相場の時には逆になります。
金融収縮などの時に、一気にその歪を埋めることになります。つまり、「ジリジリ上がってドスンと落ちる」という動きになります。
そういう意味では相場の変化に気をつける必要がありますが、現時点では、豪ドルなどの高金利通貨は、金融信用収縮の時に買うというスタンスでよいでしょう。
投機資金は分かりやすい要因でしか動かない
投機資金は、基本的にはシンプルなロジック、つまり分かりやすい要因でしか動きません。複雑な要因であったりいくつかの原因が重なった場合、相場はどちらに動けばいいか判断に迷うため、分かりやすいロジックに反応します。
現在の為替の動きのロジックは、ほとんど、リスクオン(投資行動)かリスクオフ(投資資金を引き揚げる)だけで動いています。
例えば、北朝鮮のミサイルが日本の方向に発射された場合、リスクオフモードになり、株価は下落し円高になります。
また、金融緩和(資金ジャブジャブ政策)をすると、株価が上がり景気が上がるのでリスクオンモードとなり、ドル/円高になるケースがありますが、よく考えてみると、金融緩和政策とはドルの価値を下げる政策なので、本来、ドル/円下落要因の一つです。
このように、一つの事柄が正反対の要因になる場合、その時々の市場の判断の仕方(センチメント)で、相場の動きは変わってきます。そのため、相場は難しいといわれることになります。
特に為替相場は反対に動くことが多いため、為替相場は難しいという人も多いですが、ロジックが理解できると簡単になってくると思います。
米国大統領選挙の前は相場は下落しにくい
毎回、米国大統領選挙の年は、現役大統領が勝つために株価上昇政策をします。 株価が上昇すると景気が良くなり、それをアピールすることで人気を取る、つまり、票を集めることができるからです。
選挙が終わると、株価を上げておく必要がないので、株価は下落しやすくなります。株価はこのように操作されているものですので、パターンを知っておくと良いです。
為替も株価に連動して動く傾向が強いので、為替も操作されてしまいます。
その他にも株式の場合ですと、総選挙前に上昇する選挙関連銘柄や、戦争になると上昇する銘柄などもあります。
ちなみに、911 テロの翌朝から日本株は大きく売られましたが、テロから戦争が意識されたため、オイル関連銘柄は軒並み高く、ストップ高やストップ高近辺で始まりました。しかし、日経平均の下げに潰され、ストップ安で引けるなどという動きをしました。
これは、日経平均銘柄が軒なみストップ安のため、それ以上下げることができないので、下げきってない銘柄が売られ始めたのです。
従って、寄り付きでオイル関連株を買った場合、ストップ高で買って一日終わったらストップ安で終わっていた銘柄もありました。911 テロのような、朝起きたらまるで相場が変わっていたということもありえますので、ストップは忘れないようにしましょう。
ニュースなどの材料
新聞・テレビ等で多くのニュースが報道されますが、情報の渦に流されないように、ある程度は取捨選択することも大切です。 相場は9割の人が上がると思ったら、そこが天井になります。
9割の人が上がると思っている相場はすでに皆が買っている相場であり、新たにここから買いだと思って買う人がいなくなるため天井になります。また、天井近辺で最後に噴き上がる時には、出来高も増えます。
為替では出来高が分かりませんが、クリック 365 はポジションを公開しています。
クリック 365 左の「各種データ」→「くりっく 365 為替売買動向」
https://www.click365.jp/
投機筋は、クリック 365 の日本人一般投資家のポジションを見て、片寄りが大きくなったらそれを崩す仕掛け的な動きをすることがあります。 自分のポジションが、皆と同じで大きく片寄っていたら注意しましょう。
噂で買って事実で売る
噂で買って事実で売るとは、株式では、ある会社の決算がよさそうだという噂で買って、好決算が発表された時に売るという取引のことを指します。
実際に、好決算の発表後は、若干上昇して天井を付けたり、半日だけ噴き上がってから天井を付けて急落することが多いものです。
9割の人が上昇と思うと下落するのと同じ原則です。素直な人ほど、相場では天井つかみをしてしまうことが多いようです。
6.投資戦略
日本時間の朝一番
日本時間の月曜日朝一番は、欧州・米国がまだ活動前であり材料が出る前なので、いい取引のタイミングであることが比較的多いです。
ただし、指値で取引することが基本です。相場が始まる前に成り行き注文や甘い指値をしておくと、とんでもない価格で取引が成立していることがあるからです。
例えば、先週の終値が 80 円、月曜日の始値が 80 円だとして、日曜日に成り行き買いを入れておいたら、月曜日の朝一番で 81 円で約定していたこともあります。
為替は相対取引なので、相場と関係なく取引できるため、このようなことが起こり得ます。さすがに、相場が動いている時には全然異なる価格で約定はできませんが、相場の始まる前に相対で取引が成立することは可能です。
また、月曜日だけではなくその他の日も、朝一番に仕掛けポイントがくることが多いです。これは、ニューヨーク時間が終わり、一旦一日の相場が終わって、日本時間から翌日の相場が始まるからです。
テクニカル面とファンダメンタル面が一致する時
投資では、タイミングが全てと言ってよいでしょう。例えば、下のチャートでは、2012 年 11 月 20 日の朝、金(ゴールド)/ドルは、ボリンジャーバンドのセンターライン(黒色の線)に位置していました。
センターラインは上昇と下落の分岐点であり、仕掛けポイントです。その分岐点に位置している時、材料的に中東紛争が加速しそうな可能性があり、中東紛争加速によりオイル・金(ゴールド)が上昇方向であると分かれば、そこは分かりやすい仕掛けポイントと言えます。
もちろん、相場に絶対はありませんし材料も変化しますが、テクニカル面とファンダメンタル面のタイミングが揃ったら、そこは分かりやすい仕掛けタイミングです。
押し目買い
日々、様々な材料が出ます。例えば、下のチャートは、日足ボリンジャーバンドの +1 σ(赤色の線)に位置している時に政策発表があり、政策金利を .25% 引き下げという大方の予想を裏切り、据え置きという発表だったため買い戻しが進み、豪ドル上昇となりました。
★ 豪ドル/円 日足ボリンジャーバンド
+1 σライン(赤色)が綺麗にサポートになっており、ここが押し目買いポイントです。
7.日本のリスク
日本が抱えるリスク
投資にはリスクがありますが、日本という国にもリスクがあります。
(1)増税
政府の方針として、増税傾向であることははっきりしています。
今後、税金・社会負担が増えるのは避けられず、可処分所得は減る方向です。
(2)景気悪化
増税すれば、景気悪化は避けられないでしょう。
(3)国家財政破綻
現在、国の財政は破綻寸前です。いえ、実際には既に破綻状態です。国家破綻状態にしても、それを回避する策を取るにも、インフレ懸念と円安懸念が強くなっていきます。インフレになると、普通預金で預けておくことがリスクになってきます。
(4)大地震
想定外の大地震などの災害は、まだこれからも発生する可能性があります。
(1)~(3)は、国家財政の危機からくるものなので、根はひとつです。 政府の景気対策は、公共投資・減税・公定歩合引き下げの 3 つがあります。しかし、以下の通り、日本には景気対策ができる財源がありません。
- 公共投資 財源が無いため縮小方向
- 減税 財政危機のため年々増税方向
- 公定歩合 既に超低金利のため、これ以上引き下げる余地がない
政府は財政危機のため、景気対策ではなく景気悪化対策をとっているとも言えます。そのため、日本は、どこかのポイントから円安に向かっていく可能性が高いと判断しています。
また、東京に大地震がくれば、大きく円安に振れるでしょう。一時的な円高があったとしても、東京に対する破壊的な地震は円安要因です。
このような状況下で、何も対策をしないことは大きなリスクとも言えます。何かをするリスクは分かりやすいのですが、何もしないことのリスクは気がつきにくいものです。
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8.FX は保険にもなり得る
日本のリスクを回避できる保険は保険会社には存在しませんが、FXは円安リスクを回避するのにはピッタリです。
地震保険は、地震で倒壊した建物などには保険として機能しますが、大地震で失職した場合などの保障にはなりません。東京で大地震が発生すると、そのまま大きく円安になるでしょう。そして、東京以外の大都市部の大地震は、一旦円高になって円安になる可能性が高いです。
円安リスクを回避するためには、円を売っておくと良いでしょう。円売りポジションを持っている時に円安になると、大きく利益になります。円売りポジションとは、豪ドル/円などを買っておくことです。
日経マネーの取材時に「FXは保険だ」と言ったら、記者に大変驚かれました。今までの「FXはハイリスクだ」というイメージに対して、正反対の言葉だったからです。
FX を保険として考えると、円安リスクの回避が目的になります。儲けることを目的にしなくても、円安があると利益になるということです。
そもそも相場では、儲けようとしないと儲かるものです。FXでは、市場参加者の多くは、短期売買を頻繁に繰り返し 80 ~ 90%の人が損をしていると言われています。これは、ギャンブル的取引になるからです。
短期トレードでも、きちんと自制ができていれば、利益になります。ギャンブルをしたくなる性質の人が一定の割合で存在しますが、ギャンブルになったとたんに負けるのが相場の世界です。
また、本人は保険だと思っていても、リスクヘッジから入って最後は投機になってしまう傾向もあります。例えば、貿易会社は為替変動があると困るので、為替の予約(為替変動のヘッジ)をします。
最初は、利益を確保するためのヘッジとして始めますが、儲かる経験をすると、気づいたら必要以上にヘッジをして、無意識に儲けようとしていることが多いものです。つまり、無意識に必要な金額以上にヘッジをしていまい、気づくと相場が反対に動いていて大損というケースが多いのです。
また、金融機関に勧められるままヘッジ商品を買って、大きな損失となるケースも散見されます。為替の仕組みを論理的に理解しておくことと、客観的に状況を判断することが大切です。失敗する人のほとんどが、このどちらか、もしくは両方に問題があります。
9.覚えておくとよいこと
IMM 通貨先物ポジション
IMM 通貨先物ポジションとは、米国シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)で取引されている通貨先物のポジションのことです。これはヘッジファンドなどのような短期的な投機筋のポジションです。
相場には、次のような傾向があります。金融信用収縮などでヘッジファンド等が手仕舞いに入ると、その時に相場が偏ったポジションであれば、反対方向に相場は向かいます。
- 買いポジションが大きくなりすぎると手仕舞い売りで下落
- 売りポジションが大きくなりすぎると手仕舞い買いで上昇
信用収縮の他には、ファンドの決算期・夏休み前・クリスマス休暇前にも同様の傾向があります。時々、IMM 通貨先物ポジションの偏りを見ると良いでしょう。
IMM 通貨先物ポジション
https://www.gaitame.com/markets/imm/
金曜日の取引終了後に火曜日時点の数値が発表されるので、約一週間遅れの情報だと認識しておく必要があります。
バルチック海運指数
バルチック海運指数(BDI)は、世界景気動向や商品価格の先行指標とされ、株式取引では、海運株も連動しやすい指数です。
イギリスのバルチック海運取引所(The Baltic Exchange)が、石炭・鉄鉱石・穀物などの乾いた荷物 ( 乾物)の外航不定期船の運賃価格を指標化して、一日一回発表しているものです。
この指数が高い時は、石炭や鉄鉱石などが多く運ばれている時であり、景気が良いもしくは良くなる兆候とされています。特に、中国が鉄鉱石の輸入を増やすために船の手当を急増させたことから、バルチック海運指数が高騰し注目を集めました。
バルチック海運指数は、日経 225 などのように取引できる指数ではありません。投資やトレードでは、先行指標になるものを知っておくと、有利な取引ができます。短期トレードで先行指標となるケースでは、例えば、次のように上から順番に連動して動くことがあります。
- 原油
- 金(ゴールド)
- ユーロ
- 豪ドル
このように、若干の時間差で連動して動いている場合、原油価格を見ながら豪ドル/円の取引をすると、とても取りやすいです。投資やトレードは、このように分かりやすいところで取引することで、ローリスク・ハイリターンを狙うことができます。
相関・逆相関
最近は、世界の各相場が連動し、各相場には相関性があることが多いです。例えば、金(ゴールド)が上昇するとユーロが上昇することが多いので、そこには相関性があることが多いと言えます。
反対に、A という相場が上昇する時に B という相場が下落すると、逆相関という表現を使うことがあります。しかし、ここで言う逆相関とは、単純に相関性があり、それが正の相関か負の相関かだけの違いなので、逆相関と相関は同じ意味だと思ってください。
ところで、豪ドル/円が上昇した場合、ドル/豪ドルは下げることが多いですが、これは単純に豪ドルが分母にあるか分子にあるかの違いだけで、相関性があるという意味でも逆相関があるという意味でもありません。
為替の世界では通貨ペアという視点ですので、このように分母と分子が違うことで反対の動きになるケースがあり、これを逆相関と呼ぶ人もいますが、これは間違った認識です。
このように、為替において相関性という言葉が出てきた場合には、間違った考え方が含まれていることもあるのでご注意ください。
特に、為替取引内で逆相関を使ったアービトラージ(裁定取引)という表現がでてきたら、それは勘違いをしている可能性が高いです。ポートフォリオを組む時は、お互いに相関性がない相場を見つけて組むことが好ましいです。
相関性のある相場では、例えば、金(ゴールド)が上昇すると若干遅れて豪ドル/円が上昇するという現象があるので、このような相関性というより遅行性があることに注目することが美味しい取引になります。
景気と株価
景気がよくなると株価が上がるのではなく、株価が上がると景気がよくなり、株価が下落すると景気は悪くなります。景気がいい国の通貨は買われ、景気が悪い国の通貨は売られるのが一般的です。
このように、為替と株式相場には相関性があることが多いです。(ただし、同じ材料で下落材料になることも上昇材料になることもあり、いつも同じ方向とは限りません。)
金融信用収縮時などには、株価が一定レベル以下になると急激に下落するポイントがあります。これは、チャート的に大事な水準を割ったり、金融機関が保有する株価の評価がマイナスになる水準を割ったりすると、売りが売りを呼んで下落が加速するからです。
たとえば、米国株(ニューヨークダウ)や日本株 ( 日経 225)では、リーマンショック後の最安値がかなり意識されるポイントです。
株価が皆が意識する水準を割る時などは、為替も連動して動きが加速する可能性が高くなることを意識しておきましょう。
窓空け
為替は、日本時間の月曜日の朝から土曜日まで連続して動いていますが、土曜日の朝から月曜日の朝の間は取引がないため、土日で材料が出た場合には、月曜日の始値が前週の終値と乖離することがあります。これを窓空けといいます。
窓空けした場合、通常はその隙間を一旦埋めることが多く、これを窓を埋めるという表現をします。
下のチャートを見ても、窓を空けて上昇して始まった相場が、その後に前週の終値まで下げてから、再度上昇したことが分かります。
★ カナダドル/円 30 分足チャート(○部分が窓空け)
トレード的には、窓埋めを前提にポジションを取るという戦略が考えられます。今回のケースでは、窓空けして始まったので、売りで仕掛けて前週の終値で手仕舞いするという取引が成り立ちます。
確率的には、窓空けを埋める確率は比較的高いですが、逆張りの取引ですのでストップロスはしっかり入れておくことが大切です。
材料と相場
材料のほとんどが短期的なものです。従って、何かの材料が出て一時的に大きく相場が動いたとしても、しばらくすると元の水準に戻ってきてしまうことがあります。例えば、一見大きな材料に思える選挙も、短期的な材料で終わる可能性が高いです。
時間分析
時間分析は、かなり高度な分析手法です。相場は、一定の周期で上下する傾向があります。
例えば、ファッションでも、モノトーンが流行した後でカラフルな色が流行するなど、一定の周期で流行の色は変わっていきます。ファッションの場合、作られる部分もありますが、本来の流れに沿わないと流行にはなりません。
ピッタリした服の後はゆったりした服などに移り、最初は新鮮に見えた服も、皆が着て目にすることが多くなると、飽きて次の新鮮に見えるものに移ります。
相場も、まさしくこれと同じです。底を打ったと思って買い始めたものの、一定の時間上昇すると、急に皆が不安になって売り出し、売りが売りを呼んで下げることになります。そして、一定の時間下げると、今度は買いたくなる人が突然増えだし、底を打ちます。この周期は、人間の脳が作り出しています。
時間分析手法は、実際にはほとんどありません。手法として公開されているのは、マーフィー(柾木)さんのアクティベート時間分析とメリマン氏のサイクル理論くらいかと思います。また、マーフィーさんの遅行スパンも、形態は違うものの時間分析そのものです。
マーフィーさんは、メリマン氏が来日した時に通訳をされたことがあります。その時、メリマン氏自身が、サイクル理論は時間の誤差が多すぎて(メリマン氏の表現ではオーブがあるので)、それだけだと取引できないと言っていたそうです。
アクティベート時間分析とメリマンサイクルを比較してみましょう。
週足で誤差が大きいメリマンサイクルは、日足や1時間足などの取引の参考にするのは難しいと思います。
ちなみに、マーフィーさんのアクティベート時間分析は、自分で計算するのは面倒なので、マーフィーさんの計算結果を見た方が早いです。マーフィーの実践トレードコーチング(一部はイーグルフライ)にのみ掲載しています。
マーフィーの実践トレードコーチング(イーグルフライ特典価格)
https://www.eagle-fly.com/mur/efo/
10.資金管理表
資金管理の重要性
株、商品、そしてFX取引のプロが、バイブルとして仰ぐ『先物市場のテクニカル分析』という本のなかに、以下のような一説があります。
「トレーダーのなかには、
トレードの手法そのものよりも
マネー・マネジメント(資金管理)こそが
最も重要であるとする人もいる。
(中略)
マネー・マネジメントは
長い目でみれば必ず勝利をおさめるはず」
非常に深い意味のある言葉です。私は、長く銀行のディーリング・ルームに在籍していました。会社の資金を使って、ディーリングのリスクを取るわけですから、各個人には一日、そして月間のストップロスのリミット(損失限度額)が与えられています。
また、各個人のポジションは、市場リスクの部門よりリアルタイムで監視されています。リミットを超える損失は許されないからです。個人トレーダーでも同じで、収益とはそうした「厳格な管理下」ではじめて生まれてくるものなのです。
トレードの勝率と現実的な見方
よく言われることですが、優秀なトレーダーでも勝率は40%程度といわれています。残り60%のトレードは、収益を生まないトレード、つまり損失ということになります。確率で示しますと、5回のなかで2回程度の勝ちということになります。
確率的には、20回トレードすれば8回の勝ちとなりますが、12連敗した後の8回の勝ちでも勝率は同じです。仮に資金の2%にストップロスリミットを設定し、12回連続で負けると、当初の資金を100単位とした場合、78.47まで減ります。
その損失を取り戻すにはどうしたらよいか考えてみてください。資金の2%の勝利を13回連続しないと元の100には戻らないのです。
12回続けて負けた人が、13回連続勝つことはできますか?容易ではないことがよく分かると思います。過信せずに、資金管理の重要性を認識しないと、後で痛い目を見ることになります。
ロスカットできない人がいますが、トレードでの損失は悪ではありません。普通の事業会社でも運営や廃棄コストがあるように、「収益を積み上げるうえでのコスト」と認識すべきなのです。
資金管理表
資金管理で大切なのは、 「いくらまで資金が減っても大丈夫か?」を考え、
レバレッジ」「ストップロス」「利益」を把握しておくことです。
以下のような表があると便利です。
最大ロス金額は、全てのポジションがストップロスになった場合の損失額です。この表を見ながら、レバレッジを5倍に抑えながら、各ストップロスを今の実勢価格にあわせて上げていくことになります。(注意:ストップロスは下げてはいけません)
確認すること
まず、いくらまで損失が出ても良いかを決めてください。ここでは証拠金は 200 万円なので、「150 万円までは許容範囲」などと決めます。
次に、ストップロス価格を動かしてみてください。ストップロスにかかった時に残る利益が分かります。
現在のストップロス価格に全てかかった場合には、ー 19 万円+現在までのスワップ2万円ですから、183 万円残ることになります。
ストップロスを一律 123 円に上げた場合には、全てロスカットされたとしても206 万円残ることになります。
これで分かること
(1)ストップロスにかかったときの利益(または損失)
同じ証拠金額であっても、人によって損失の許容範囲が全く異なります。証拠金に対して、損失の許容範囲を自分であらかじめ決めておきます。
もし、大きな下落等があって全てストップロスにかかった場合、いくらの利益が残るのか、もしくはいくらの損失になるかを確認します。残したい利益まで、ストップロスを上げて確認することも可能です。
この表のストップロスを動かすことによって、自分のポジションがどの程度のものかを感覚として掴むことができるようになります。つまり、1円下がったときにどのくらい利益が飛ぶ、何円下がったら許容範囲を超えるかが分かるということです。
(2)現在のレバレッジ
現在のレバレッジ状況を把握しておくのは、とても大切なことです。
中長期投資では、基本的には最大レバレッジを5倍以下にすることをお勧めしますが、レバレッジを上げた場合でも、この資金管理表があれば自分のリスク度が分かるので、事前にリスク回避ができるようになります。
(3)現在の一日のスワップ金利
毎日のスワップ金利が分かります。もし相場が動かないとすれば、毎月・毎年の利益の予測がつきます。これだけ押さえておけば、想定外の損失はなくなり、利益への貢献は大きいです。大きな損をする時は、いつも想定外の損失だからです。
資金管理表の使い方
資金管理表を実際に使ってみましょう。
Excel でサンプルを作りましたので参考にしてみてください。
資金管理表ダウンロードはこちらから
https://www.xfine.info/fxv/formdownload/img/fx-kanri-1-0.xls
このような表がダウンロードできます。
■ 注意 ■
(1)あらかじめ入っている数字はサンプルです。
(2)管理表はご自身で作成していただくものであり、この表はその手助けのためのサンプルです。
(3)計算式等の間違いや、使い方を間違えたために損失があったとしても、弊社では責任を負うことはできませんので予めご了承ください。