投資物件用ローンの危険性 パート3
不動産業者と銀行のカモにならないためには
どうすれば不動産業者と銀行のカモにならずに済むのでしょうか?結論から申し上げると、借金までして不動産投資を始めるのはやめた方がいいと言うことになります。
「借金してレバレッジを効かせてできるのが不動産投資の強みです」こうしたセールストークをよく耳にします。しかし、富を拡大させるのが投資の主眼なのに、まず借金から始めることに応じるマインドセットには大いに問題があります。なぜなら「借金することによって楽して始めて美味しい思いをしよう」というのは、利己的で拝金主義的だからです。
利己的な拝金主義者のところには、真の富は集まって来ません。集まってくるのはそうしたネガティブなマインドセットを利用してあなたを騙そうとする人たちです。
突然の友人からの電話相談
『そろそろ何か資産運用を始めたいんだけど、不動産投資なんかどうかなぁ?』 先日、久しぶりに古い友人から連絡がありました。話を聞いて見ると、IT企業で働く彼は多くの会社の業績が悪化する中、売上も好調で給料も昨年より増えているというのです。手元に余裕資金も出来てきたので不動産投資に興味を持ち、筆者に連絡して来たというわけです。
彼は続けます。『毎月の税金もバカにならないし節税も考えたいし、このまま何も資産運用をしないのも違う気がするんだ』『あまり時間がないのでポイントだけ教えて欲しい』
と言うので、「まずは通信費や家賃などの日々の生活の固定費を見直し、毎月の必要額を把握して、決まった金額を給与天引きで積み立てて行くのがオススメかな」と答えると、『ずいぶん面白みの無い単純なやり方だな〜』と不満顔です。(電話なので実際には顔は見えないのですが、声のトーンがとても不服そうでした)
それならとポイントを3つ伝えました。
①不動産投資は不動産賃貸業という事業経営であること。
巷で言われているような資産運用ではない。金融商品を買うのとは意味が違う。
② 商品を売る相手は中立的なアドバイスは決してしないことを肝に銘じること。
③ 資産とは、負債を差し引いた残りであることを忘れないこと。
例えば「市場価格で5億円」の不動産を所有していても6億円の負債があれば、プラスマイナスで▲1億円の借金があるということ。正確に言うと市場価格と思っていても実際には「売主の希望価格」であることが多いので実際に売れるのはもっと低い価格なので借金の実額はもっと多いと言うことになります。
もう少し詳しくご説明して行きましょう。
不動産投資が事業経営とは?
不動産投資は資金さえ用意すればあとはプロが運用してくれる投資信託のような金融商品を購入するのとは全く違います。
- どのくらいの価格水準でいつ買うのか?
- いかにして物件価値を維持するか?
- 空室率をいかにして下げるか?
これはすべて大家さんのリスクです。
具体的には
購入価格については過去の実績と将来性を踏まえて保守的に考えても「今が買い時なのか」を自分で判断しなければなりません。
不動産業者(売り側)は売ってなんぼですから「今後の人口減少に伴い世帯数が減り日本全国の不動産価格が下落しても東京都内は大丈夫だと私は考えています」と自信たっぷりに説明したりします。さりげなく「私は」と言っているところが味噌です。
物件ごとに事情は千差万別、都内であればどの物件でも大丈夫な訳はありません。こうしたセールストークを鵜呑みにしないでご自身で判断してください。判断する材料が頭の中に無い場合、あなたが買うタイミングでは無いと言うことです。
継続的な入居が期待できる優良な賃貸物件が運良く購入できても、その後の維持管理が予想以上に大変です。
入居者の要望に対応し、定期的な修繕をして資産価値を保たなければなりません。管理会社に委託もできますが、経費が掛かるのでその分利回りが悪くなります。入居者の入れ替わり毎に修繕費用が必要です。次の入居者を募集するのにも追加のコストが発生します。
これらの最終的な負担はすべて物件所有者である大家さんに来るのです。家賃保証、サブリース契約をしますよと持ちかけられることもあるかも知れません。家賃保証してくれるなら安心だと思わないで目の前の契約書を注意深く読んでください。
保証期間が限定されていて数年ごとに見直しされる条項があることにお気付きになるでしょう。やはり最終的な家賃の下落リスクは物件所有者であるあなたが取ることになるのです。
また、物件維持管理の出費に対応する為に投資物件ローンを組むのと同時にカードローン枠を作ることを指南する不動産セミナーもあるようです。カードローンは通常10%半ば〜20%弱の利率です。こんな高利の借金に頼らなければならないと立ち行かないとするならば、長期的に見た場合安定した事業にはなり得ないでしょう。
最終的に不動産を売却する時の売却益または売却損を加味して保有期間の利回りを把握する。
不動産投資の投資に対するリターンは最終的な売却を完了して確定するものです。途中段階でいくら家賃を受け取り節税できても、最後に大幅に値下がりした金額でしか売れないとその分は簡単に吹っ飛んでしまいます。
最低でも「最終的な売却を含めた出口戦略を含めてどうなるのか?」を不動産業者に質問してみましょう。そしてなんとなくのイメージではなく数字で答えてもらいましょう。悪質な業者の場合、はぐらかしますのですぐに分かります。その物件をその業者から購入するのを見送るのが賢明です。
売る人のアドバイスはあなたの資産形成をする為ではなく、その物件を売る為に存在する
特に、主にワンルームマンション投資を取り扱っている不動産業者の場合は、その傾向が顕著です。一部屋売ればそれだけで何百万円単位のインセンティブが営業担当に支払われる歩合給になっている場合もあります。あれだけの熱量で売り込みをかけてくるわけです。
彼らにはあなたの顔が数百万円の札束に見えているのかも知れません。あなたが買ってくれないとその札束は彼らの財布には入りません。
中立公正なアドバイスをして購入意欲を削ぐことは極力避けて良い面を強調することになります。当然のことながら良いことばかり強調して少しでも早く、多くの物件を売ることにエネルギーを費やす人から真に役立つアドバイスを得ることはできません。
資産と借金を混同しないこと
売り出し価格がどんなに高くても、実際に売主が手にできるのはその8割、場合によっては7割程度まで減ってしまうことは少なくありません。手数料も必要ですし、売り急ぐ場合は買主や業者からかなり強気な値引き交渉も入ります。
ちょっとした立地の弱みなどある場合で一般の買主から敬遠され業者しか買い手が付かない場合などは、業者の利益分で2〜3割、売る為の広告宣伝費等の手数料で2〜3割持って行かれてしまいます。
1,000万円で売れるつもりが、600万円しか手元に残らないということです。彼らプロに素人はかなわないのです。
ここまで話してその友人は。。
どうやらその友人は不動産業者から既にとある投資物件を勧められていて、物件購入と融資の申込みにサインをする直前だったようです。
「不動産投資についてもう少し勉強してみるよ。今回の物件の購入は、見送ろうかな。。」彼は最後に力無くそう言い残して電話を切りました。電話越しから残念そうな反面、ホッとした空気が伝わって来ました。本能的に危険を察知していて誰かに引き止めてもらいたかったのかも知れません。
後日談
後日、その友人から今回は不動産投資は見合わせて天引きで積み立てをすることにしたと連絡がありました。投資に一喜一憂する時間とエネルギーを本業に向けようと考えを改めたそうです。
多くの給与所得者の場合、ローンでお金を借りてまで収益物件を購入するのは経済合理性に欠けた判断になることが多いものです。
「預金から投資へ」
この言葉で旗を振っている人の多くは既に資産家であることが多く、官僚も経済活性化のためにリスクマネーを増やしたいと言う役所の事情があります。
「余裕資金を投資へ」
と言うのも格差が拡大しそもそも余裕がない世代にとっては無意味です。少しでも余裕資金があるならそれは将来の為にとっておいた方が良いケースが殆どでしょう。
結論
不動産は金額が大きく、銀行も融資を付けるので買主に夢を見させるのに好都合です。しかし、このように実態を知れば知るほど「不動産投資」は投資としての優位性、適格性に欠けることに気付きます。
余程の信頼できる情報ルートがない限り、不動産投資からは距離を保つのが賢明であることがご理解頂けると思います。
次回は
【住宅ローンから見えた借金地獄の実態】コロナ禍のタイミングで住宅ローンの返済ができなくなってしまい、マイホームを手放さなければならない状況に追い込まれている債務者が増えています。
1回目の半年間の返済猶予期間の満了日を迎え、2回目の返済猶予(合計1年間の返済繰り延べ)の申込みが相次いでいます。これはお金との付き合い方に元々内在していた混乱が今回のコロナ禍をキッカケに顕在化しているものです。
次回は日本人のマインドセットがお金を通じていかにコントロールされているか、どうすればそのマインドコントロールから抜け出せるのかについて考えて行きたいと思います。