賢いお金との付き合い方
不健全な借金の仕方とは
あなたの本当の返済能力とバランスが取れていない
自分の返済能力を「手取り収入」で考えることの重要性
収入のうち何パーセントの金額を借金の返済資金に回すのか。その割合のことを返済比率と呼びます。そして金融機関は予めその人の属性毎に返済比率の限度を定めています。その上限に対してどのくらい返済余力があるかを返済能力という言葉で表します。
実際の家計は手取り金額で回しているわけですから、本来は返済能力は手取り金額に対する割合で考える方が実生活を正確に表すことになります。しかし、銀行の実務では、なぜか額面収入に対する割合で返済能力を検討することが多いのです。実収入より多い金額から計算を始めるのですから、ここからすでに返済の苦しい借金の設計が始まっていると言えます。
最初から苦しい返済の借金をしてしまわないように、収入と支払いのバランスは手取り収入の金額を前提に考えてください。貸すプロの銀行側も、額面金額を前提に返済比率を計算しているくらいですから、借りるあなたもどうしても額面金額に意識が向きがちです。
額面の金額はバーチャルなものだと思っておくくらいでちょうど良いと思います。自分の大切なお金をきちんと管理するために「手取り収入の金額で考えるクセ」をつけましょう。
必須の支出を最初から念頭に置いておく
また、教育費など今後確実に発生する支出も忘れないでください。予め分かっているもの全て差し引いた残りがあなたがコントロールできる本当の手取り収入の金額です。
自分の頭で主体的に考えないと…
銀行から額面金額をもとに計算された返済比率で算定された金額で「ここまでなら融資できますよ。」と言われ、目の前の毎月の支払いのことしか考えずに借金をしてしまう。そうすると、ほぼ確実に適性な返済能力を大幅に超過した借金生活に突入することになります。
借金の種類を理解していない・自分の将来がイメージ出来ていない
「投資性」なのか、「消費性」なのかを意識する
借金には大きく2種類あります。
将来なんらかの形でリターンがある投資性の借金と、そのとき限りの消費性の借金です。借金する時に、ここを特に意識して見定めることはとても大切なポイントです。そうしないと一時的な物欲を満たすために未来の自分の給料を食いつぶすことになります。
定年退職後、年金から返済することになることにもなりかねません。銀行の現場でそう言う事例を日々たくさん見ています。もちろん消費性の借金が全て悪いのではありません。いま、その借金で手に入れるモノやサービスは、「現在」と「将来」のあなたにとって本当にそれだけの価値があるものなのかを考えることが重要だということです。
一過性の物欲を満たすだけの消費性なのか。それとも自分のスキルや知識を向上させたり、有意義な人間関係をもたらすことにより、将来の自分に何らかの形でリターンがある投資性なのか。いま一度立ち止まって考えてみてください。
購入時のマイルールを持つ
「一定額以上のモノやサービスの購入は少なくとも一晩考えてから決断する。」
「モノの数は増やさないことを原則にする。新しいモノを購入する時は手元にある役割を終えた古いモノは捨てる前提で考え、それでも必要かを自問自答する。」
などのマイルールを決めておくのも実践的な方法としてオススメです。
収入水準は将来も減ることはない(むしろ増える)と無意識に考えている
将来の収入の上がり下がりは少し悲観的(保守的)に考えておく
あなたは5年後、10年後も現在と同じだけの手取り収入を維持することが本当に出来るでしょうか?現在のあなたの年齢や職種にもよりますが、これからの時代はますます不確定であることは間違いありません。
上の世代(例えば親世代)は、年功序列で昇給昇格し毎年のベースアップもほぼ約束されていました。定年までの長い期間で見た時に、給与が上がっていく賃金カーブとなるように給与モデルが設計されていたのです。
しかし、現在では給料の増え方や安定性は全く違います。正しい情報に触れないまま自分の頭で考えることを怠ると、意識せずに親世代の消費行動に似てくるケースはよくあるようです。そして、人間は一度習慣となった消費行動は変えること、特に生活水準を下げることはとても難しいのです。定年後も現役時代のお金の使い方を変えることが出来ず、その不足分を借金によって穴埋めすることになるのもよく見る事例です。
今後の会社の業績や自分の健康状態など、不確定な要素はいくらでもあります。収入が下がる可能性はいつでもあるのです。給与所得者だけでなく、医師や弁護士などの専門職であっても見方を変えれば腕一本で食べていると言う側面があります。
高度な技術を持った外科医でも、事故や病気で手先の自由が利かなくなったらそれまでの収入水準を維持することは難しいのです。冷静に考えて少しでも不安を感じたら、それは「不健全な借金」のアラームだと考えましょう。
言われてみれば当たり前のことなのですが、わざわざお伝えするのには理由があります。その理由とは、一定水準以上の収入がある人やエリートと呼ばれる人ほど陥りやすい罠があるからです。
それは「節税」というキーワードであなたに近づいて来ます。日本の税制は累進課税です。収入が増えるほど課税率が高くなり、納める税額もグンと増えていきます。
「額面の収入は結構増えてるのに、イメージしてたほどは生活にゆとりを感じないなぁ〜」
「あれ?よく見ると額面の印象ほどは手取り額はそんなに増えてないぞ!」
「なぜなんだろう?あっ、税金とかがこんなに高いんだ!」
ここで登場するのが「節税」です。合法的な方法で納税額を少なくするのです。ワンルームマンションなどの投資物件を借金で購入して、これに伴い発生する各種費用を経費として計上するというのはよくあるやり方の1つです。
違法でないからと言って、長い目で見た時にあなたの大切なお金(資産)が守られる訳ではありません。投資物件購入に伴う借金によって節税に成功し真に経済的に得る恩恵は、あなたの現在の収入や安定的な家賃収入の確保、売却も含めたその物件の最終的な収支がプラスであることなど様々な要因が上手く組み合わさって実現します。
投資物件を販売する不動産業者も、融資をする銀行もあなたの立場になってそのことを分かりやすく説明してくれることはほとんどないと思って間違いありません。安直な節税手法には裏があることを覚えておいてください。
自分が理解できない借金はしない
元本保証のないリスク性商品(投資信託など)を買うときの鉄則の1つに「自分が理解できない商品は買ってはいけない。」という考え方があります。借金にも同じことが言えるのです。
自分が理解できない借金とは「返済するまでの毎月のプロセスや完済時の着地点の暮らしぶりがイメージできない状態で借りてしまうこと」です。そのような借金は、理解できない金融商品を買うことと同じくらい危険な行為であることを認識してください。
ショッピング・リボにはくれぐれもご注意を!
一見便利なリボ払い
「ショッピング・リボ」には注意が必要です。通常クレジットカードで商品を購入した場合、翌月か翌々月に一括で全額支払って決済が完了します。ショッピング・リボはこれを分割で支払えるようにしてくれる仕組みです。
例えば1ヶ月あたりの返済額を5,000円とか10,000円などの定額に設定して見掛け上の出費を少なくすることにより、借金の痛みが感じにくくなるように商品設計されています。
実態は過大な返済負担
しかし、その内訳を見てみると一般的なローンに比べて利息の割合が高くなっています。借りたお金の元金を減らさないと延々と続くのが借金です。その元金部分の返済が少なく設定されているのです。元金の返済が極力進まないようにしておいて、長期間にわたって利息を払わせる仕組み。それがショッピング・リボなのです。
リボ払いへの巧妙な誘い
- 最初は利息の掛からない一括払いでクレジットカードを利用
- 支払いの少し前に「今月の返済負担を減らして毎月の支払いを一定にして賢く家計を管理しましょう!」と言った一般的な広告メールを受信
- 一括支払いからショッピングリボへの変更を促す具体的な案内メールを受信
- 今月だけはいらいろと思わぬ出費があったからとショッピング・リボを利用
- 一度利用すると心理的抵抗感が大幅に減り、継続的にショッピング・リボを利用するようになる
テレビなどのメディアを使った広告戦略も秀逸です。地上波では相当な量のコマーシャルが流されています。長期的に多くの利息を支払うことになる事実を分かりにくくして「毎月定額の支払いで便利で簡単!」「お金の支出を賢く管理しましょう!」と言ったイメージ先行の広告が作られています。
人気のある芸能人がニコニコと宣伝していても、これは高利の借金であることに変わりはありません。あなたやあなたのお子様が安易に利用しないように十分気を付けてください。
次回は・・・
賢いお金との付き合い方のポイントのパート2として「借金をするときにまずが自分の頭で考えて整理しなければならない基本的なポイント」についてご一緒に考えていきたいと思います。