投資未経験者がまずやるべき3つのこと
今持っているお金の価値は変わらないと思っていないだろうか?「今、これだけ貯蓄があるから安心だ」と思っている人も、よく考えてみてほしい。実はお金は持っているだけでは、価値は目減りしていく。
例えば、身近なものの30年前の値段を想像してみよう。昔100円で買えていた物が今では100円では買えないものが多い。つまり今も昔も同じ100円であっても、100円の価値は下がっているのだ。
貯蓄するだけでは資産価値は減る。このシンプルな事実に気づけば、資産運用の重要性もすんなりと理解できるだろう。だからこそ、誰にとっても資産運用は無関係な話ではないのだ。
かといって、資産運用のために投資を始めようとしても、何から手を付けたらいいのか途方にくれてしまう人も多い。今回は、資産運用に欠かせない投資について、投資未経験者がまずやるべき3つのことを紹介していきたい。
やるべきことその1「情報収集」:日本人の金融リテラシーは低い
あなたは金融に関する知識をどれくらい持っているだろうか?実は日本人は諸外国と比べると、金融に対する知識や考え方、つまり金融リテラシーが低いという調査結果がある。
特に、資産の運用や管理に関しての金融リテラシーは顕著に低いそうだ。知識だけでなく、投資自体もあまり一般的ではない。実際に日本人は家計の中で投資にお金をまわすよりも貯金にまわす人が圧倒的に多い。
これがアメリカになると使い方が逆転して、貯金よりも投資にまわす割合が多くなる。とかく日本人は貯蓄一択と考えがちだが、世界的にみると選択肢はそれだけではないとわかる。
日本人の金融リテラシー、特に資産運用や管理に関する知識が乏しい要因としては、お金に関する教育不足もあるだろうし、国民性によるところも多いだろう。
しかし、ここで注目すべきなのは要因ではない。重要なのは私たちが普通に暮らしている限り、資産運用に関しては身近でもないし、十分な知識も経験もないという自己認識だ。
だからこそ、まず必要なのは情報収集だ。「知らなくてもなんとかなるだろう」と、いきなり証券会社や金融機関に運用をまかせるのは避けたほうがいいだろう。
当然ながら証券会社や金融機関にはそれぞれのインセンティブがあり、顧客に買ってほしい商品がある。知識がないために、すすめられるままに証券会社や金融機関に都合がいい不利な金融商品を買ってしまう人も実は多く存在する。
また、知り合いがやっているからと、なんとなく同じことを真似するような行為もおすすめしない。知り合いが投資に成功しているからといって、成功する保証はどこにもない。
投資になじみがないから面倒だと思ってしまったり、ハードルが高く感じてしまったりする気持ちも十分に理解できるが、人任せにしても利益が出るとは限らない。だから経験はともかくとして、知識はかならず仕入れるようにしよう。
手始めに、どんな投資商品や方法があるのか全般的な知識を持つことから始めよう。資産運用や投資といっても、その種類は一種類ではない。書店に行けば初心者にも非常にわかりやすい総合的な投資情報の雑誌や書籍も複数存在する。なるべく全般的に、そして中立的に説明しているものを選んで数冊目を通してみよう。
その中から興味を持った投資商品や、自分に合いそうな投資スタイルをピックアップして、さらに知識を深めていこう。その分野の専門の書籍を読むのもいいだろうし、無料のセミナーなども多数開かれているので、足を運んでみるのもいいだろう。
やるべきことその2「余剰資金の把握」:投資にリスクはつきもの
ほとんどの投資にはリスクがつきものだ。国債のように一部には元本保証がされている投資の種類もあるが、基本的には元手が減るリスクを伴う。では、自分の資産の中で絶対に投資に回してはいけない部分があるとしたら、何になるか明確に答えられるだろうか。
資産の中で投資に使ってはいけないのは、生活費、ライフイベントに必要なお金、万が一の緊急時のお金である。生活費の把握については問題ないだろうが、ライフイベントや緊急時に必要な金額についてきちんと考えてみたことがある人は少ないかもしれない。
ライフイベントとは子どもの進学、マイカーの買い替え、住宅の購入予定などがある。緊急時に必要なお金としては災害や病気・けがなど不測の事態が起きた時に備えるお金だ。緊急時のお金をどのように見積もるかも人それぞれだが、だいたい生活費の3か月~1年分を想定するのが一般的だ。
このような生活やライフイベント、緊急時に必要なお金以外のお金を余剰資金という。リスクがつきものだからこそ、投資にはこの余剰資金を使うのが基本中の基本だ。投資未経験者は、まず自分にどれくらい余剰資金があるのかを把握してほしい。
余剰資金の額によって投資の種類も変わってくる。10万円の余剰資金に向いている投資もあれば、1000万円の余剰資金に向いている投資もある。これは前述した情報収集をしっかり行っていれば、見えてくるはずだ。
また、余剰資金に比較的余裕がある場合は、ぜひ投資全体でポートフォリオを組むことも検討してほしい。ポートフォリオを組めば、ハイリスク・ハイリターンのものや、ローリスク・ローリターン、国内・海外などいろんな要素をバランスよくとりこみ、投資全体のリスクを分散できる。
ポートフォリオの概念は中上級者向きのように思えるが、余剰資金に余裕があるからといって投資の種類や商品を一択にする必要はないことは、初心者でも知っておいて損はない。
やるべきことその3「投資のコストを知る」: 損失以外にも利益を目減りさせるもの
投資初心者であれば、自分の利益を目減りさせるものは損失だけと思い込みがちだが、実は利益を目減りさせるものは他にもある。まず一つ目が手数料だ。
投資商品には実に様々な手数料がかかることを投資未経験者は見落としがちだ。投資の種類によってかかる手数料は異なるが、投資信託の場合を例に見てみよう。
投資信託を買うときには販売手数料がかかる。そのあと、投資信託を保有している間にも手数料がかかる。そして、投資信託を売るときにもさらに手数料がかかるのだ。実に三種類の手数料が差し引かれる。
投資というとどうしてもリスクやリターンの金額にばかり目がいってしまいがちだが、手数料も無視できないコストなのだ。
手数料は一般的に証券会社や金融機関の窓口で取引するより、ネット証券で取引するほうが安いことが多い。手数料に関するコスト意識がないせいで、どこで取引しても同じだろうと思っていては、自分の資産を減らしてしまうことにつながる。
これが冒頭で紹介した証券会社の窓口で言われるがまま不利な商品を買わされてしまう一例だ。窓口で買うことが悪いわけではないが、手数料というコストについてもよく調べて、納得したうえで取引するようにしよう。
次に、利益を目減りさせるものとして気を付けたいのが税金だ。投資で得た利益には必ず税金がかかる。得た利益は全部自分に入ってくると思っていたら大間違いだ。
株式投資の場合、配当金にも譲渡益に対しても20.315%が課税される。10万円利益を出しても約2万円、実に利益の5分の1は税金として納めることを念頭に置いておこう。
株式の場合は自動的に利益に対して税金が引かれる種類の口座もあるので、実際に利益が出ても引かれている税金に気づきにくいかもしれない。しかし、売買によって損失を出した場合は、節税できるケースがあるので是非注意してほしい。
例えば、他に利益を出した取引や配当から引かれてしまった税金があれば、確定申告で損失分と相殺できる。引かれすぎている税金は還付され、結果的に節税になる。もし差し引きできる利益がない場合も3年間は損失を繰越せるので、将来に利益を出した場合と相殺して節税もできる。
税金に関しては「難しいそうだから」といって無知でいると、せっかくの資産を目減りさせてしまうので、ぜひコスト意識をもって向き合ってみてほしい。
この2つのコストは投資をしている限り避けられないものではあるが、現在であれば、この2つのコストを抑えられる制度もある。それがNISAやiDeCoと呼ばれる優遇制度だ。NISAもiDeCoも年間に投資できる額は制限されているが、税金面での優遇が受けられる。
NISAは投資で得た利益に対する税金がかからない。金融機関や投資商品によっては、一部の手数料が無料になることもある。投資できる商品も幅広く、投資初心者には2つのコストを抑えながら投資できる制度だ。
iDeCoは個人型確定拠出年金のことで、投資した資金を引き出せるのが60歳以降という縛りはあるが、運用益が非課税の他、拠出金自体が所得税の控除対象となることが大きなポイントだ。
もし、投資にまわせる余剰資金が比較的少ない場合は、NISAやiDeCoを検討するのもいいだろう。
資産を作る力を手に入れるために
貯金をしていればお金が勝手に増える時代は過去の日本では確かにあった。しかし、現在の超低金利時代では銀行にお金をおいてあるだけでは、価値はどんどんと目減りしていくばかりだ。そんな中で、投資はこれからの日本人にとっては重要な要素になっていくのは間違いないだろう。
近年は利用しやすいネット証券会社も多くなっており、投資環境も変化してきている。投資を難しいものと決めつけるのではなく、身近に取り入れられる情報から仕入れてみてはいかがだろう。