ドルの強弱要因を指摘した上での相場予測
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Ⅰ.早読み先週のドル円相場(寄り付きは東京午前9時の気配値、NY終値は現地午後5時の気配値)
週初21日:寄り付き104.55。
東京:東京が連休でアジア全体が薄商いとなる中、前週にドルの地合いが悪化した流れを受け継ぐ形で前週の安値水準104.27まで下落したが、同水準近辺では底堅さを見せて小反発。
NY:欧州で再びコロナ感染が拡大する中、週末に大手銀行がマネーロンダリングに関わってきたとの報が流れたことを受けて、
ロンドン市場では対欧州通貨でリスク回避の円買いが強まり、104.00まで下落。NY時間では円の先物売りが大量に持ち込まれているとの話が伝わると、
104.90まで急反発したが、戻りは売られ104円半ばまで反落。
NY終値104.66。
22日:寄り付き104.71。
東京:東京が休場となる中、104円半ば近辺での小動きに終始。NY:ロンドン市場で104.41まで下落したドル円は、欧州でのコロナ感染拡大からリスクオフのドル買いとなり、105.08まで上昇。エバンス・シカゴ連銀総裁の「インフレ平均が2%超に戻る前に利上げすることは可能」との発言もドルを下支えた。
NY終値104.95。
23日:寄り付き105.07。
東京:連休明けのこの日、仲値に向けて実需筋を中心に買い入り105.20を示現したが、その後は材料難で105円ローレベルでの模様眺めとなった。菅首相と黒田日銀総裁との初会談による市場への影響は見られなかった。
NY:米金利上昇でドルが堅調に推移する中、菅・黒田会談後に
「(為替相場について)ファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましい」
との話が出たこともこのところの円ロングの切りにつながり、105.50まで上昇。
NY終値105.36。
24日:寄り付き105.31。
東京:マネーロンダリングで揺れる欧州の金融機関問題とコロナ感染拡大でリスク回避のドル買い・円買いが拮抗する中、
105円台前半での模様眺めに終始。
NY:欧州時間で105.53まで付けた後のNY市場では、新規失業保険申請件数が予想を上回ったことでやや軟調に推移したが、
その後8月新規住宅販売件数が好調だったことを受けて105.52まで反発。
NY終値105.42。
25日:寄り付き105.38。
東京:有事のドル買いムードが続く中、5・10日に当たるこの日、実需のドル買いが入り、105.56まで上昇。
NY:欧州での感染拡大や金融機関問題を受けての欧州通貨安や資源国通貨安でドルが堅調に推移し、105.69まで上昇。
NY105.55。
Ⅱ.長期相場分析(週足チャートをご参照下さい)
2017年のドル最高値は114.73(11月6日)、そして2018年の同最高値も114.55(10月4日)に止まり、115円が超長期のドルの抵抗水準になっている。2月17日週にトランプラリーの最高値118.66(2016年12月)近辺を起点とする抵抗線を抜き、
昨年の最高値112.40に迫ったが、高値は112.23に止まった。
ここ数年の高値圏である114円台では上値が重たいという値覚えがあるため、112円台を超えての積極的なドル買いは見られず、長期的に112円台前半が強い抵抗水準との認識が生まれた。
3月下旬に年初来高値112.23(2月20日)を試したが、結果は111.71(3月24日高値)止まりと、
111円台後半でもドルの上値の重さが確認されている。111.71を付けて以降、下降チャンネルの中で推移しており、ドルの軟調地合いが継続している。
直近では7月下旬以来の安値水準となる104円丁度まで下落しており、年末に向けては大きな節目の100円を目指す展開もあり得るか。
**中期予測レンジ:101.00~111.00
**上値メド水準
110.00(サイコロジカル)
112.23(年初来高値)~112.40(2019年最高値)
114.55(2018年10月4日高値)
114.73(201711月6日高値)
115.00(2017年11月以降の展開で意識された強い心理的水準)
**下値メド水準
104.00(9月21日安値)
101.18(3月9日安値)
100.00(サイコロジカル)
99.00(2016年安値)
Ⅲ.今週のドル円相場テクニカル分析
前回予測のポイント
- 長期相場はチャンネルTR1-TR2の中で、下降トレンドを継続している。
- 一目関連では三役逆転が出現しているこもとあり、ドルの地合いが悪化しつつある。
- ドル売りが先行した場合は過熱感が生じるため、このまま値幅・時間調整を経ないで104円を試す様であれば、
105円台へと反発する可能性が高い。 - 但し、ドル下落は相場が若いこともあり、105円台に戻す以前に104.20~104.00を試す可能性はある。
- 強いサポートがないため、地滑り的な展開では102円台半ばまでの下落もありえる。
予測レンジ:102.50~106.00
前週の相場に思う
上の前回のまとめで、「ドル売りが先行した場合は過熱感が生じるため(18日時点でも9日間RSIは25%まで低下していた)、このまま値幅・時間調整を経ないで104円を試す様であれば、105円台へと反発する可能性が高い」としたが、前週の相場は正にそうした展開となった。こうした展開の後、「やはり104円台は買いだったのか」という印象を持った市場関係者も少なくない様だ。
確かに今年のフラッシュクラッシュ(101.18、3月9日)局面を除けば、
2018年以降の安値は104円台である(長期週足チャート参照)ため、
そうした見方もできる。もっとも、今年の二番天井111.71(3月24日)を付けて以降の安値105.99(5月6日)からの戻り高値が109.85(6月5日)に止まったことや、相場が下降チャンネルTR1-TR2(日足チャート参照)の中で上値を切り下げながら推移していることから、
長期相場では緩やかなドル安円高の流れが覆されていない。
前週に104.00を付けているため、2018年以降の安値(除く今年のフラッシュクラシュ)である
104.10(19年1月)の安値を更新している点も、緩やかに相場は下降するとの見方を支持するか。こうした状況下、中長期ドル安の見方が覆るとすれば、107円前後を上抜くかどうかが鍵となろう。前週末の同水準には前述のTR1線が下りてきたことや、チャートポイントとして重要な107.05(8月5日)の存在があるからだ。
話を目先の相場について戻せば、三役逆転が解消されるかどうか、雲の上限(前週末106.17)を抜くかどうかが焦点である。
週半ばからの伸びが鈍いという印象が残るものの、仮に雲の上に出る様であれば、TR1を試す展開もありえる。
ただ、その可能性は低いと見る。
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以下ではドルの強弱要因を指摘した上で、上で述べた点を軸に今週の予測をまとめた。
ドルの弱気要因
- 111.71(3月24日高値)と109.85(6月5日高値)とを結んで引ける抵抗線TR1(日足チャート)が前週末に107円前後へと下降してきた。
- (1)との関連で抵抗線TR1と下方に平行に引くことのできるTR2とで下降チャンネルTR1-TR2が形成されている。
上値メドであるTR1を上抜くまで、トレンドは下向き。 - 25日MA(前週末105.72)・100日MA(同106.68)・200日MA(同107.64)の関係において、順番に期間の短い線が長い線とデッドクロスしている。
・・・25日MAと100日MAとのデッドクロスの関係が根強く続いている。 - 4月以降(除く6月初旬の約1週間)では完全に100日MAが抵抗線として機能している。
- チャートポイント(107.05、8月13日高値)を付けて以降の戻り高値は106.94(8月24日)だが、
直近では100日MA(前週末106.68)がその手前に位置するため、106円台後半が強いドルの抵抗ゾーンとなっている。 - 転換線(前週末104.90)<基準線(同105.96)・終値<雲の下限(同105.96)・遅行線<26日前の実勢相場となっており、三役逆転が出現している。
ドルの強気要因
- 9月21日に104.00を付けたものの、104円を割り込んでいないため、改めて104円台でドルの底堅さが示された。
・・・2018年以降では、104円を割り込んでいない(3月のフラッシュクラッシュ相場は考慮していない)。 - 今週中に25日MA(前週末105.72)を上抜く様であれば、長期ドル安トレンドは変わっていないが、
ドルが続落する可能性がないとの見方が台頭しやすい。
以上の強弱要因に照らして、以下の様に今週の予測をまとめた。
今週のまとめ
長期相場はチャンネルTR1-TR2の中で、下降トレンドが継続している。確かに前週の相場では、ドル売りに過熱感が生じているところに売りが先行したため、直ぐにドルは反発したが、週半ばからは伸びが鈍いという印象を残した。
三役逆転が出現中であることや、長期抵抗水準となっているTR1(前週末107円前後)や
100日MA(同106.68)が存在していることから、「106円台でのドルの上値は重い」と見られる。もっとも、今週中の雲は薄くなる(前週末106.17~105.96))ため、雲の上に出るチャンスはある。その場合は、100日MA手前まで上昇する可能性がある。
ただ、TR1や100日MAの存在を考慮すると、106円台後半はロングの利食い場か有象無象の売りが出やすいと見られ、高値は同水準が精一杯と予測する。
他方、なだらかにドルが降下しているため、常に下値リスクが残る。25日MA(前週末105.72)や前述の雲に上値を抑え込まれる様であれば、再び104円が試される展開もありえる。
予測レンジ:103.70~106.70
Ⅳ.チャートポイント
**レジスタンス
105.69~105.72(9月25日高値~前週末25日MA)
105.96~106.17(前週末雲の上下限)
*106.68(前週末100日MA)
106.94[8月28日の高値、(38.2%戻し、111.71→104.00)]
**107.00前後(前週末のトレンド線TR1)
*107.05(8月13日の高値)
107.64(前週末200日MA)
107.85(50%戻し、111.71→104.00)
*108.16(7月1日高値)
108.76(61.8%戻し、111.71→104.00)
109.85(6月5日高値)
110.00(心理的節目)
**サポート
104.00(9月21日安値)
103.67[76.4%戻し、101.18(3月9日)→111.71(3月24日)]
102.65前後~102.40前後(今週中のTR2)
**101.18(フラッシュクラッシュ時3月9日の安値)
Ⅴ.今週のポイントとストラテジー・アイディア
●今週の注目材料
*米国
・FRB要人講演
予定なし。
・米経済統計等
9月28日:ダラス連銀製造業活動指数
30日:4~6月GDP(確報値)
10月1日:9月ISM製造業景気指数
2日:9月雇用統計
・他
過去最悪となる米財政赤字と米国債格下げ懸念(ドル売り)
FinCEN問題、コロナ感染拡大、米中対立など世界に不透明感が漂う中、
市場には再び流動性確保のドル買いという言葉が聞かれ出した。
一理はあるのだが、どちらかと言えばポジションがドルショートに偏った際に使われやすい傾向がある。
*日本
・財務省・政府要人からのドル安・円高牽制(瞬間的なドル高)。
・10月1日に日銀短観(9月調査)が公表される。
7月1日発表分では、大企業の事業計画の前提となる想定レートは通年107.87、下期107.86だが、発表以降の実勢相場は想定レートを超えていないため、実需筋の戻り売りが着実に出ていると見られる。
この間ドルの上値が107円・106円・105円へと切り下がってきた流れから、今回の公表でも想定レートが切り下がると見られる。7~9月でのフォワード予約の進捗状況次第では、10月以降も需給が一段と緩くなる可能性が高いと見る。
もっとも、日本の貿易収支が赤字化しているため、上値での需給は緩いが、下値での需給がタイトになっていることも事実だ。
*ユーロ圏
ECBが「ユーロ高=物価押し下げ」を懸念しているが、FinCEN問題では欧州系の金融機関が揺れているだけにユーロに下方リスクが強まっている。他方、ブレグジットを巡って英EU間での着地点が見つからないため、クロス円に下方圧力が掛かっている。結果的にドル円の上値を抑える要因にもなっている。
今週のストラテジー
ストラテジー
*基本ストラテジー:下降トレンドが継続しているため、依然として基本ストラテジーはドルの戻り売りに置くが、
ドルの戻りが弱くなり始めているため、売り水準を低めに構えている。
- 106円前後からの売り上がり(短期日計り戦略だが、奏功する様であれば、
ある程度長目のポジションとしてキープ。浅目のストップ要)。 - 長目のポジションとして106円半ば~107円近辺でのショート。
・理由
(1)相場は25日MA(前週末105.72)と絡み合う様に(上抜け・下抜けを繰り返しながら)下降している。
・・・参考図
前週からややドルが強含む一方で、25日MAが下降傾向にあるため、スポットがこれを上抜く可能性はあるが、
参考図からも分かる様に、上値は100日MA(前週末106.68)に抑え込まれ、その後に反落する傾向がある。
(2)一目関連では三役逆転が生じているため、ドルの地合いがそれ程良くない。
注)利食い・損切りは個人のトレーディング・スタイルやトレーディング・スパンが異なるため、特に推奨水準はありません。
コメントや推奨水準は単なる筆者の分析結果であり、その水準での取引を勧めるものではありません。
投資の最終判断は自己責任で行ってください。
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