英国のEU離脱・英国国内市場法「IMB」で問題再燃 英国と世界はどうなる
今年2020年12月末、英国は完全にEU離脱(ブレグジット)となりますが、問題が再燃しています。現在、英国とEUは離脱の詳細を協議していますが、9日に英国が公表した英国国内市場法(IMB:Internal Market Bill)に対してEUが合意できないことから12月末迄に協議がまとまらず「合意なき離脱」になる可能性が高くなってきたのです。
新型コロナウイルス騒動で世界が不安定な状態ゆえ「合意なき離脱」となると各相場に激震が走る可能性があります。12月末迄待たずに、IMB法案の決別で合意なき離脱が確定し、世界の株式相場が急落することも考えられるのでストップロスは必須です。
EU離脱で一番悩ましいことが北アイルラインド問題です。英国の正式名称は「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」であるように北アイルランドは英国領で、南と西に接しているがEU加盟国のアイルランド共和国です。
現在、北アイルランドとアイルランド共和国の国境は自由に移動できるので毎日仕事で往復している人も少なくありません。英国がEU離脱となれば、国境を越える場合、関税の徴収やパスポート等の確認作業など必要になります。
独立運動が活性化
北アイルランドとアイルランド共和国の国境は過去に大きな紛争があったことから、国境に手をつけるとなると紛争再来の懸念や、北アイルランドが英国を離脱してアイルランド共和国と統合する懸念もでてきます。
さらに、もともと英国から独立したがっているスコットランドにも刺激を与えます。英国のEU離脱は英国の分裂要因でもあるのです。
現在、世界は反グローバル化により独立運動が盛んになる一方、急速に世界各国の連携が再構築されています。イランとトルコは敵対していた同士が連携し、最近、世界各国と対立していた中国はイランと提携しました。
中国とイランの共通の敵は米国なので、敵の敵は味方だという提携です。世界各国の関係性が、今までにない方向に急速に再構築されているのです。
英国の国際金融センターの立ち位置はどうなる
ところで英国がEU離脱すると英国の金融が弱体化し国力が落ちるという見解があります。英国は金融の世界では最古参であり、EUの規制から自由となった英国は、いざとなれば英国自体がタックスヘイブンとなる可能性もあり、英国にとっては有利です。
クリアさが求められるEUとは違い、英国は昔からアングラマネーを扱ってきた金融センターなので優位性があります。一方、今週、新たに米国でフィンセン(FinCEN)文書が公開され、金融機関の不正資金のマネーロンダリング(資金洗浄)についての指摘が世界で一斉に報道されました。
フィンセン文書に名前の出てくる英国企業は他のどの国よりも多いことが指摘されています。フィンセン文書の公開は、今後の世界は不正ができない方向という意味でありEU離脱後の英国の方向性にも影響を与えそうです。過去の延長線上に未来がない、激動の時代だという認識が大切です。
ブレグジットについて誰よりも詳しい、ロンドン在住の元為替ディーラー松崎美子さんにもお話をいただいたので、こちらの動画もご覧ください。