この先の中期見通しではドルが緩やかに下降か
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Ⅰ.早読み先週のドル円相場(寄り付きは東京午前9時の気配値、NY終値は現地午後5時の気配値)
週初8月31日:寄り付き105.54。
東京:月末決済の実需筋の売りで一時105.29まで下落するも、直近最安値の105.20を意識しての買いに支えられる形で105円台後半へと反発。
NY:菅官房長官が自民総裁選へ出馬との報道が広まる中、アベノミクスが踏襲されるとの見方から円売りドル買いの動きとなり、106.09まで上昇。
NY終値105.93。
9月1日:寄り付き106.00。
東京:朝方は前日高値を試すも上値は重く、ロングの落としを中心に105.60まで反落。
NY:アベノミクス踏襲の見方が強まる中、円の弱地合いが継続。
こうした状況下、8月ISM製造業景気指数が予想を上回ったことを受けて、106.15まで上昇。
ここからはドル買いにフォロースルーが見られない中、対ユーロでドルが軟化するのに連れて105円台へと下落。
NY終値105.95。
2日:寄り付き105.89。
東京:ドルが対ユーロで堅調となった動きに連れて106.13まで上昇するも、伸び切れず。
NY:朝方は8月ADP雇用統計が予想を大幅に下回ったことを受けて、軟調に推移するも、その後は対ユーロでドルが堅調となった動きに連れて堅調に転じ、午後には106.30まで上昇。
NY終値106.19。
3日:寄り付き106.21。
東京:材料難の中、午前中は106.20前後での小幅な値動きに終始した。
しかしながら、午後に入るとECB高官による「ユーロ高懸念」報道が流れで、ドルが対ユーロで上昇する動きに連れてドル円は106.33まで上昇。
NY:英紙が「ユーロ高が続けば、(ユーロ圏の)輸出を圧迫すると同時に、物価を押し下げることになり、(ECBに)金融緩和圧力がかかる」と報じたことで、ドルが対ユーロで上昇。これに連れて、ドル円は106.55まで上昇。
ただ、その後は米株の大幅下落や米長期金利の低下で106.00まで反落。
NY終値106.18。
4日:寄り付き106.15。
東京:前日のNYでドルが反落した流れを受け継ぐ形で、寄り付き前に一時106.05まで下落。
しかしながら、東京に入ってからは8月米雇用統計の発表を夜に控えて、概ね106.10~20での小動きに終始。
NY:8月米雇用統計を巡っては、NFPが若干予想を下回ったものの、失業率や平均時給は予想よりも良好な結果となった。
これを受けて106.50まで上昇したが、米株が軟調に推移する中、週末のポジション調整で106.18まで反落。
NY終値106.22。
Ⅱ.長期相場分析(週足チャートをご参照下さい)
2017年のドル最高値は114.73(11月6日)、そして2018年の同最高値も114.55(10月4日)に止まり、115円が超長期のドルの抵抗水準になっている。
2月17日週にトランプラリーの最高値118.66(2016年12月)近辺を起点とする抵抗線を抜き、昨年の最高値112.40に迫ったが、高値は112.23に止まった。
ここ数年の高値圏である114円台では上値が重たいという値覚えがあるため、112円台を超えての積極的なドル買いは見られず、長期的に112円台前半が強い抵抗水準との認識が生まれた。
3月下旬に年初来高値112.23(2月20日)を試したが、結果は111.71(3月24日高値)止まりと、111円台後半でもドルの上値の重さが確認されている。
111.71を付けて以降、下降チャンネルの中で推移しており、ドルの軟調地合いが継続している。
7月下旬には3月中旬以来の安値水準となる104円台前半まで下落しており、年末に向けては大きな節目の100円を目指す展開もあり得るか。
**中期予測レンジ:101.00~111.00
**上値メド水準
110.00(サイコロジカル)
112.23(年初来高値)~112.40(2019年最高値)
114.55(2018年10月4日高値)
114.73(201711月6日高値)
115.00(2017年11月以降の展開で意識された強い心理的水準)
**下値メド水準
105.00(サイコロジカル)
104.20(7月31日安値)
101.18(3月9日安値)
100.00(サイコロジカル)
99.00(2016年安値)
Ⅲ.今週のドル円相場テクニカル分析
○前回予測のポイント
・下降チャンネルTR1-TR2の中で相場が推移しているため、従来通りこの先の中期見通しはドルの下方リスクに置いている。
・直近最高値107.05(8月13日)近辺には強い抵抗線となっている100日MA(前週末106.99)が存在するため、目先では107円を上抜くことは相当に難しくなったと言える。
・今週(前週のこと)後半には一目の雲が105.93まで切り下がってくるため、106円近辺からは有象無象のドル売りが出る可能性が高い。
・前週末(前々週のこと)に106円台後半から急反落したため、ドル売りが先行しやすい。
・105円割れを凌いだとしても、106円台後半を回復できない展開では、下値リスクは残り続ける。
予測レンジ:104.10~106.75
○前週の印象
・下値圏
週初こそ下値を試す展開となったが、安値は105.29止まりと、105.10~105.20(8月19日安値、8月28日の安値)や5円刻みの節目105.00が意識され、突っ込んでの売りは見られなかった。
この点からは明らかにこの先105.00~20が強い支持水準として意識されると見られ、105円台前半がショートの利食い場やロングの買い場となる可能性が高まったと言える。
・上値圏
週前半までは106円にかけてのショートが短期日計りトレードとして機能したが、週後半からは機能しなくなり、ショートカットを中心に106円台半ばまで上昇した。
ただ、ショートカットのエネルギーがなければ、上昇力は限定的だったと見られる。
やや評価の高かった米雇用統計発表後の反発も106.50止まりと、前日の高値106.55を超えることができないまま週を終えたため、あまりドルに強気になれない。
・上の様な印象があるなか、ドル円の上昇は、半ば対ユーロでのドル売りの巻き戻しに助けられてのことであり、ドルに力強さを感じることができない。
もっとも、週末を106円台で終えている点は評価しておきたい。
この点、終値が一目の雲の中に入ったこととも関係するため、多少のドルの下支え要因が増えたと見るべきか。
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以下ではドルの強弱要因を指摘した上で、上で述べた点を軸に今週の予測をまとめた。
ドルの弱気要因
(1)2月下旬の相場でも112円台でドルの上値の重さが再認識されているが、そこから反落した後の戻り高値が111.71(3月24日高値)止まりとなっている。
(2)111.71と109.85(6月5日)とで抵抗線TR1(日足チャート)を引くことができるが、同線が前週末に107円台半ば近辺へと下降してきたため、一段とドルへのプレッシャーが強まりつつある。
(3)(2)との関連で抵抗線TR1と下方に平行に引くことのできるTR2とで下降チャンネルTR1-TR2が形成されている。
上値メドであるTR1を上抜くまで、トレンドは下向きであると見られる。
(4)25日MA(前週末106.06)・100日MA(同106.92)・200日MA(同107.91)の関係において、順番に期間の短い線が長い線とデッドクロスしている。
・・・但し、25日MAと100日MAとの関係に変化が出つつある。
この点については、ストラテジー・アイディアの参考図で詳述する。
(5)4月以降(除く6月初旬の約1週間)では完全に100日MAが抵抗線として機能している。
(6)TR1と200日MA(前週末107.91)とが重なり、107円台後半でのドルの上値を重くしている。
(7)チャートポイント(107.01~05)と100日MA(前週末106.92)とが重なっている。
ちなみに、107.05を付けて以降の最高値は106.94(8月24日)である。
ドルの強気要因
(1) 直近最安値は104.20(7月31日)と、下値が2018年12月の安値104.10によって支持された。
・・・(3月のフラッシュクラッシュ相場は考慮していない)
(2)(1)との関連では、2018年以降のドル下落局面(4回)での最安値はいずれも104円台止まりである。
・・・(3月のフラッシュクラッシュ相場は考慮していない)
つまり、104円台で売っても、ショートが機能していないため、テクニカル・ポイントである105.00直前で買戻しが入りやすい。
(3)(2)との関連で下降チャンネルTR1-TR2のセンターラインCL(前週末105円半ば)から着かず離れずの関係を維持している。
(4)転換線(前週末106.07)が基準線(同105.61)を上回っている。
(5)スポット終値が雲(前週末下限は105.97)の中に入り込んだ。
(6)スポット終値が25日MA(前週末106.06)の上に出た。
以上の強弱要因に照らして、以下の様に今週の予測をまとめた。
今週のまとめ
チャンネルTR1-TR2が機能しているため、依然としてこの先の中期見通しではドルが緩やかに下降するとの見方を踏襲する。
一目関連では、8月中旬から転換線(前週末106.07)が基準線(同105.61)の上で推移していることや終値が雲の中に入り込んでいることから、ややドルの地合いが好転している印象を受ける。
この点、注目しておきたいのは雲の上限(前週末107.01)を上抜くことができるかどうかが問題である。
上限付近には100MAやチャートポイントの107.01~05(弱気要因8を参照)などがあるため、
相当に難しいハードルとなろう。
仮に同水準を抜くのであれば、107円半ばまでの上昇を考慮する必要がある。
但し、106円台後半で上値が限定される様であれば、105円台前半までの反落は十分考えられる。
下値圏については、8月3日以降で105円が強く意識されていることから、105円台前半では有象無象の買いが入ると見られる。
この際、105.20を下抜く様であれば、105円を試す展開もありえよう。
今週は105円半ば~106円半ばを中心とした強含み保ち合いの展開を予測するが、上で述べた水準に注目しておきたい。
予測レンジ:104.75~107.70
Ⅳ.チャートポイント
**レジスタンス
106.55(9月3日の高値)
106.76(一目の雲の下限、週後半には105.95へと下降)
*106.99(前週末100日MA)
*107.02~107.05[(50%戻し、109.85→104.20)~(8月13日の高値)]
107.57(7月20日の高値)
107.69(61.8%戻し、109.85→104.20)
107.79(7月7日の高値)
*108.16(7月1日高値)
108.13(前週末200日MA)
**108.15(前週末のトレンド線TR1)
109.85(6月5日高値)
110.00(心理的節目)
*111.71(3月24日高値)
**112.23(2月20日高値)
**112.40(昨年最高値)
**サポート
105.29(8月31日の高値)
105.10~105.20(8月19日安値、8月28日の安値)
*105.00(サイコロジカル)
104.87(76.4%戻し、104.20→107.05)
*104.10~104.20(2018年12月安値、7月31日安値)
**101.18(フラッシュクラッシュ時3月9日の安値)
Ⅴ.今週のポイントとストラテジー・アイディア
●今週の注目材料
*米国
・FRB関連
9月15~16日:FOMC・・・8月27日には臨時のFOMC(notation vote)が開催されている。
このFOMCで2%超のインフレ率を容認されたため、フォワードガイダンスの強化や具体的な量的緩和策の拡大が打ち出される可能性がある。
・米経済統計等
9月9日:7月JOLT(Job Openings Turnover Labor Survey)求人件数
10日:8月PPI
11日:8月CPI
・他
前週にはECB高官から最近のユーロ高を懸念する発言がなされている。
これでユーロ安・ドル高が加速する様であれば、米サイドからドル高を懸念する発言が出かねない。
公表が遅れている財務省の「為替報告書」で中国が再び為替操作国に認定される可能性がある。(米中対立が本格化・・ドル売り)
米中関連の激化懸念。
新型コロナウィルス問題を巡っては、追加予算協議が与野党間で長引く一方、治療薬やワクチン開発報道が錯綜。
・・・刹那的なドル売り・ドル買い要因
*日本
7日で尖閣諸島問題から10年が経つ。
中国公船の動きが懸念される。
*ユーロ圏
最近のユーロ高を懸念する声がECB要人から出ているが、これに追随する同様のコメントが出かねない。
8日:ユーロ圏4~6月GDP(確報値)
10日:ECB理事会
今週のストラテジー
ストラテジー
*基本ストラテジー:下降トレンドが継続しているため、依然として基本ストラテジーはドルの戻り売りに置く。
1.106円台後半から107.05までは浅目にストップを入れながらの売り上がり(短期日計り戦略だが、奏功する様であれば、ある程度長目のポジションとしてキープ。浅目のストップ要)。
2.107円台前半(但し、107.70レイクされた場合は、撤退)。
・理由
(1)下降チャンネルTR1-TR2(日足チャート)が機能している。
(2)ドル需給の緩み
上値の重たい展開が続いているため、徐々に実需の売り水準が切り下がる可能性がある。
(3)25日MA(前週末106.06)・100日MA(同106.92)・200日(同107.91)の関係で、
期間の短い線(含むスポット)が順番に長い線とデッドクロスしている。
25日MAと100MAとのクロス関係は信頼性が高い。
デッドクロス中の25日MAと100日MAとの関係が逆転するまでは、ドルの中期的軟調地合いに著変はないと見ている。
・・・関連の注目点は参考図で詳述した。
(4)一目の雲の上限が前週末時点で107.01だが、100日MA(前週末106.92)と重なる。
・・・107.01~05がチャートポイントでもある。
(5)4月以降、終値(除く6月上旬の一時期)が100日MAを上回っていない。
*暫定ストラテジー
105円半ば近辺での試し買い(短期日計り戦略、105.20ブレイクでは撤退)
・理由
転換線(前週末106.07)が基準線(同105.61)を上回っている一方、スポット終値が25日MAを上抜いている。
注)利食い・損切りは個人のトレーディング・スタイルやトレーディング・スパンが異なるため、特に推奨水準はありません。
コメントや推奨水準は単なる筆者の分析結果であり、その水準での取引を勧めるものではありません。
投資の最終判断は自己責任で行ってください。
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