FXの分析に使いたいボリンジャーバンドとは?特徴や設定のしかたなどを解説
今回は、ボリンジャーバンドの基本的な見方・使い方などを紹介します。また、期間設定のポイントや、順張り・逆張り別の売買タイミングを判断するコツなども解説します。FXの成績アップにぜひお役立てください。
★今回のポイント!
- ボリンジャーバンドは価格のバラツキをバンド幅で表現したテクニカル指標
- 「スクイーズ」「エクスパッション」「バンドウォーク」で相場を分析できる
- 投資スタイルに応じた期間設定と手法(順張り・逆張り)を選ぶことも重要
ボリンジャーバンドとは?基本的な考え方を解説
ここではボリンジャーバンドとは何か、数式などは省略して、基本的な仕組みや考え方を紹介します。視覚的に優れたボリンジャーバンドは、コンセプトさえわかっていれば、誰でも使いこなせるツールです。
ボリンジャーバンドとは
ボリンジャーバンドとは、考案者の名前が付けられた、統計学の「標準偏差」を取り入れた分析方法です。値動きが平均値からどのくらい離れているか見て、現在の相場状況の分析や、反転ポイント・レンジブレイクなどを予測しようとするものです。
一般的には相場の流れに沿って売買する「順張り(トレンドフォロー)」という手法で用います。しかし、レンジ相場のレンジ上下限における反転狙いなどの「逆張り(カウンタートレード)」に使うことも可能です。
標準偏差は高校で習いますが、忘れてしまった人も多いのではないでしょうか。標準偏差はデータのばらつき具合を数値化したものです。たとえば、「サイコロを5回降って全部3」の場合、平均値は3で標準偏差は0になります。また、「1が2回、3が1回、5が2回」の場合、これも平均は3ですが標準偏差はルート3.2です。
重要なポイントは、「平均値から離れた数値が多く出るほど標準偏差が大きな値になる」ということです。ここだけ知っておけば、ボリンジャーバンドがなぜ広がるのか・縮むのかがわかるはずです。たとえば、「荒れた相場」「強いトレンドの発生中」ではバンドが広がり、逆に「ゴルディロックス(ぬるま湯)相場」「閑散相場」ではバンドが縮まります。
ボリンジャーバンドの構成・基本設定
ボリンジャーバンドは中心となる移動平均線の上下に、1標準偏差(1σ=シグマ)、2標準偏差(2σ)のバンドが描かれます。これらのバンドは、価格がばらついたとしても統計的にある確率でバンド内に収まるような標準偏差をプロットしたものです。
移動平均線は、21日か20日移動平均線を使うのが一般的です。その理由は取引日が1カ月20日程度だからです。時間足や分足の場合は関係ありませんが、この名残で21期間か20期間を使う人が少なくありません。
チャート設定では1σと2σを選んで表示するのが一般的です。この設定の場合、中心線の上に+2σと+1σ、下に-1σと-2σの5本の線で構成されることになります。もちろん、自分が見やすいように1σや2σだけにしてもかまいません。1~3σを全て表示する人もいます。
ボリンジャーバンドの基本的な考え方
ボリンジャーバンドでは、レートがバンドの範囲内に収まる確率をもとに、売買のタイミングを見極めたり価格がどの水準にあるか判断したりします。それぞれのバンドの確率を以下に示します。
テクニカル指標には、さまざまな考え方で作られた計算式で「買われすぎ・売られすぎ」を判定する「オシレーター(※振り子という意味)」系のテクニカルがあります。ボリンジャーバンドもオシレーター系と同じように「行き過ぎた価格は平均に戻ってくる」という考え方で使うことが可能です。
たとえば、+2σ~-2σを超えた位置に価格があれば、移動平均線で設定した期間のなかでは、ごくまれな状況(確率4.5%以下)が発生していることを意味します。そのため、「-2σまで触れたら買い、+2σに触れたら売り」のような戦略で、価格が平均線に向けて戻る動き狙うこともできます。もちろん、バンドを少し超えて反転することや、そのまま順行し続けることもあります。このような「だまし」に遭遇してもいいように、損切り価格を事前に決めておきましょう。
ボリンジャーバンドの3つのパターン
ボリンジャーバンドは、相場状況や売買ポイントが視覚的に見極めやすい指標です。ここでは、3つのパターンから相場を予想する方法を解説します。
スクイーズ
スクイーズとは、「squeeze(搾る、ぎゅっと握る)」からきており、値幅が小さくなり(データのばらつきがなくなり)バンドが収束に向かっている状態を指します。この状態のときは、値動きが小さく方向感がない状態なので、エントリーには向きません。しかし、スクイーズが終わると、縮んだバネが元に戻るように、急激に値動きが激しくなります。そのまま一方向に流れが継続して大きなトレンドが発生することもめずらしくありません。
スクイーズを見つけるコツは、チャートの縮小機能を利用して、長い期間を1画面に収めることです。すると、スクイーズになっている場所は、くびれたようにみえるでしょう。移動平均線は横ばいに近い状態になっているはずです。もし「バンド幅が広すぎてくびれとはいえない」と感じたら、それはスクイーズではなく、比較的値幅が大きいレンジ相場かもしれません。後ほど解説しますが、この期間はボリンジャーバンドで逆張りエントリーするのに適した相場環境です。
エクスパンション
エクスパンションは「expansion(拡大、膨張)」からきており、値幅が大きくなりバンドが一定の方向に拡大している状態です。多くの場合、スクイーズの後に発生します。強いトレンドが発生しているサインなので、エントリーに適した相場環境です。
テクニカル分析の指標の多くには「値幅縮小→値幅拡大→値幅縮小…」という相場サイクルの原理が取り入れられています。たとえば、人気テクニカルのひとつのMACDや、移動平均線を帯状に表示したGMMAチャートなどがそうです。また、有名な売買シグナルであるゴールデンクロスやデットクロスにおいても、値幅拡大が起きる前には2つの移動平均が近づいて値幅縮小が起きるのが一般的です。
ボリンジャーバンドでは、相場分析の土台となるようなこうしたサイクルを、スクイーズとエクスパンションによって表現しています。「収縮→拡散」という動きは最も信頼できるシグナルのひとつであり、かつ利益が伸びやすいのがメリットです。ボリンジャーバンドを使う場合には、この動きに注目しながらチャートを観察しましょう。
バンドウォーク
バンドウォークとは、文字通り、バンドに沿って価格が歩くように推移することです。±2σのバンドのことを指して使うことが一般的ですが、どのバンドでも張り付くように動いていればバンドウォークです。バンドウォークはスクイーズの後に発生しやすい傾向にあります。また、エクスパンション後にトレンドが加速すると発生しやすいのが特徴です。
±2σ、あるいは±3σのバンドウォークでは、特に強いトレンドが発生していることがわかります。このような場合は、勢いに逆らって売買するのはとてもリスキーです。流れに沿ったエントリーを心がけましょう。売買のタイミング・戦略としては「すぐに買って、バンドウォークが終了したら決済する」「短い時間軸のチャートに切り替えて押し目・戻りを待ってエントリーする」の2つがあります。
ただし、だましに遭うこともあるので注意が必要です。強いドレンドが発生しやすい状況なのか、バンドウォークが発生しているチャートより長い時間軸で確認してみましょう。バンドウォークだとわかるのはしばらくしてからなので、長い時間軸を巻き込んだ動きでなければ、単なる「高値・安値つかみ」(※乗り遅れまいと慌ててエントリーして損をすること)になってしまいます。
ボリンジャーバンドの期間設定
ボリンジャーバンドでは、どのバンド(σ)を表示するかを別にすれば、設定項目は移動平均線の期間設定だけです。ここでは期間設定のポイントを紹介します。
スキャルピングやデイトレードの場合
スキャルピングやデイトレードなどの短期売買で、売買タイミングを図るのに使われるのは、1分足、5分足、15分足などの短い時間軸のチャートです。これらのチャートでボリンジャーバンドを使う場合は、期間を「9」や「10」にして使う人が多くいます。その理由はエントリー回数を増やすためです。これらのスタイルでは小さな利益を積み上げていく必要があるので、エントリー回数が少ないと資金がなかなか増えません。
また、細かい動きを追うために、9~10を使う人もいます。具体的には60分足チャートで9期間ボリンジャーバンドなどを表示するなどです。こうすると、60分足のジグザグ(=大体20期間移動平均線の動きと同じ)のなかに含まれる15分足や5分足の小さなジグザグ(=大体9期間移動平均線の動きと同じ)が認識しやすくなります。細かい動きを追ってエントリーのタイミングをつかむために短い期間設定を使うのも有効です。
スイングトレードの場合
スイングトレードは、数日から数週間という比較的長い期間ポジションを保有する投資スタイルです。それに合わせてボリンジャーバンドも「20」「21」「25」などの中期に設定するのが一般的です。だましに遭う可能性も比較的少ないので、初心者でも使いやすいといえます。また、一般的な設定で多くの人が注目しているので、機能しやすいというメリットもあります。
「25」という設定が人気なのは、ボリンジャーバンド以外の指標と組み合わせるのに便利なことがあるからです。たとえば、移動平均線では「5」(または「9」)「25」「75」が一般的なので、ボリンジャーバンドを後から使うようになった人は、よく「25」にします。
また、MACDの期間設定は「12」「26」が一般的なので、これに合わせてボリンジャーバンドの期間設定を「26」とする人もいます。
ポジショントレードの場合
長期的な視点で相場を把握したい場合は、「50」「75」などの長期に設定することもあります。ポジショントレードではエントリー回数が少ないため、だましが少ないエントリーが望ましいからです。また、「短期的なブレで移動平均線を割ってロスカットになる」「エクスパンションしたのでリスク軽減のために決済してしまう」など、ポジション保有時の早まった行動も起りにくくなります。50~75の設定は基本的にゆったり構えていられるので、多くの人にとって長期運用向きといえるでしょう。
長期運用が一般的なスワップポイント狙いのトレードでは、時間が経過するほど利益が積みあがっていきます。期間が長くなるほどバンド幅で収まる確率が高まるという性質を利用して、長めの期間設定で長期計画を立てるのもよい方法です。
ボリンジャーバンドを使って売買のタイミングを見極めるには?
ここでは、ボリンジャーバンドを使って売買のタイミングを見極める方法を紹介します。相場環境に応じて「順張り」と「逆張り」を上手に使い分けるのがポイントです。
順張りでエントリー
順張りとは、相場の流れに沿ってポジションを持つことをいいます。トレンドフォローと呼ばれることもあり、「上昇トレンドのときに買い」「下降トレンドのときに売り」をします。ボリンジャーバンドは、順張りをするために考案された指標です。スクイーズからエクスパンションという動きをみてトレンド発生の可能性を想定し、売買のタイミングを見極めます。
具体的にはボリンジャーバンドの移動平均線あたり、支持・抵抗となりそうな価格、その他指標の押し目・戻りのサインなどをチェックします。原則として、押し目・戻りは移動平均線までと考えておきましょう。それ以上価格が動くと、エクスパンションからスクイーズに移行する可能性があるからです。
上がっている・下がっている最中でエントリーするイメージになるのが、バンドウォーク発生の場合です。反転が怖い価格位置ですが、「バンドに張り付くほど強いので、しばらくこの動きは継続するだろう」という前提でエントリーします。ただし、短い時間軸のチャートに落として細かくみれば、これも押し目・戻りを付けている場合がほとんどです。
逆張りでエントリー
逆張りとは、相場の流れと逆の売買をすることです。「上昇トレンドのときに売り・下落トレンドのときに買い」です。ただし、大きな流れに対して逆張りするようなトレーダーはあまりいません。中期チャートが上昇トレンドのときに短期チャートが下落トレンド(=中期的にみれば調整)の場合に逆張りします。たとえば、「15分足で上昇トレンドを確認してから、1分足の9期間ボリンジャーバンドで売買タイミングを探して-2σタッチで買う」などです。
もうひとつの逆張りが有効な場面は、レンジ相場のときです。この場合は、上下のバンドは横ばいで平行になっており、バンド上限の範囲内で移動平均線をまたいで行ったり来たりしています。バンド上下幅に利益が見込める値幅があれば、逆張りのチャンスです。+2σにタッチしたあたりで指値を使って待ち伏せるか、小さな反転を確認して買いエントリーをします。-2σの場合は、同じようにして売ります。一般的には2σが用いられますが、自分でルールを決めておけば1σでも3σでもかまいません。
ボリンジャーバンドはトレードスタイルに合わせて設定しよう!
ボリンジャーバンドは、スクイーズやエクスパンションというバンドの形状によって、レンジ相場やトレンド相場などの現状分析をしたり今後の動きを予測したりするのに役立てられます。また、バンドウォークによる順張りや、バンドタッチによる逆張りなど、エントリータイミングを決めるためにも使えます。トレードスタイルに合わせて時間設定も行い、上手にボリンジャーバンドを活用していきましょう。