ドル円の弱含み保ち合い相場を予測
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Ⅰ.早読み先週のドル円相場(寄り付きは東京午前9時の気配値、NY終値は現地午後5時の気配値)
週初17日:寄り付き106.57。
東京:仲値にかけてのドル買いで106.70を付けるも、その後は日経平均株価の軟調地合いに連れてじり安の展開。
NY:ロンドン市場で106円台前半へと下落した後、
8月NY連銀製造業景気指数の大幅低下や米金利の低下を受けて105.94まで下落。
NY終値106.01。
18日:寄り付き106.00
東京:前日の海外の軟調地合いが燻る中、米中対立激化懸念を受けて105円台半ばまで下落。
NY:ロンドン市場で105円台前半まで軟化した地合いを付け継ぐ形で105.28まで下落。
米金利上昇やS&Pの最高値更新を受けて下げ止まるも、戻りは限定的。
NY終値105.40。
19日:寄り付き105.24。
東京:米中対立激化への警戒感が燻る中、ドル売り先行となり、105.10を示現。
その後は仲値にかけてのドル買いの流れに押し上げられる形で105.60まで反発するも、伸び切れず。
NY:米株上昇やFOMC議事要旨で追加緩和への期待が遠のいたことから、106.15まで反発。
NY終値106.15。
20日:寄り付き106.08。
東京:仲値にかけてのドル買いで106.21を付けるも、その後は材料難となり、106.10近辺での小幅な値動きが続いた。
NY:8月フィラデルフィア連銀製造業景気指数や新規失業保険申請件数が予想以上に悪化したことを受けて、105.75まで下落。
その後は、米金利が下げ止まると、105.80前後での小動きに終始した。
NY終値105.81。
21日:寄り付き105.77。
東京:前日NYの経済指標が悪化したことを受けて、リスク回避の円買いの動きが優勢となり、ドル円はじり安の展開。
ロンドン時間にかけては105.45まで下落。
NY:8月のPMI総合指数が1年半ぶりの高水準となったことや、7月の中古住宅販売件数が市場予測を大幅に上回ったことから、朝方の105.65近辺から106.07まで上昇。
しかしながら、106円台では米長期金利が低下する中、週末のポジション調整で105.80前後へと反落。
NY終値105.81。
Ⅱ.長期相場分析(週足チャートをご参照下さい)
2017年のドル最高値は114.73(11月6日)、そして2018年の同最高値も114.55(10月4日)に止まり、115円が超長期のドルの抵抗水準になっている。
2月17日週にトランプラリーの最高値118.66(2016年12月)近辺を起点とする抵抗線を抜き、昨年の最高値112.40に迫ったが、高値は112.23に止まった。
ここ数年の高値圏である114円台では上値が重たいという値覚えがあるため、112円台を超えての積極的なドル買いは見られず、長期的に112円台前半が強い抵抗水準との認識が生まれた。
3月下旬に年初来高値112.23(2月20日)を試したが、結果は111.71(3月24日高値)止まりと、111円台後半でもドルの上値の重さが確認されている。
111.71を付けて以降、下降チャンネルの中で推移しており、ドルの軟調地合いが継続している。
7月下旬には3月中旬以来の安値水準となる104円台前半まで下落しており、年末に向けては大きな節目の100円を目指す展開もあり得るか。
**中期予測レンジ:101.00~111.00
**上値メド水準
110.00(サイコロジカル)
112.23(年初来高値)~112.40(2019年最高値)
114.55(2018年10月4日高値)
114.73(201711月6日高値)
115.00(2017年11月以降の展開で意識された強い心理的水準)
**下値メド水準
105.00(サイコロジカル)
104.20(7月31日安値)
101.18(3月9日安値)
100.00(サイコロジカル)
99.00(2016年安値)
Ⅲ.今週のドル円相場テクニカル分析
○前回予測のポイント
・前週の展開では、107円台を付けたものの、依然として上値の重たさが感じられる。
上値を抑えた要因として100日MA(前週末107.22)が指摘される。
・8月以降では一度も105円を割り込んでいない。
当面の下値を見た可能性が高い。
・下降チャンネルTR1-TR2が機能しているため、中期トレンドは下向きであることに著変はないが、目先では上値を試す局面もある。
・但し、106円を割り込む様だとドルに対するセンチメントが悪化するため、105円台前半程度までの反落はみておきたい。
予測レンジ:105.30~107.70
○前週の印象
週初に週高値の106.70を付けたものの、それ以降はじり安の展開となり、週半ばには週安値となる105.10まで下落。
買えば投げさせられ、売れば踏み上げられると言った展開で、短期のポジション相場に終わった印象。
(a)目新しい点を敢えて挙げれば、105.10まで下落したことくらいか。
105.10は7月下旬の最下点104.20(7月31日)以来の安値水準だったため、105.00と見られたが、同水準ではドルが底堅さを示した格好となった。
ちなみに、前週では105円台へ下落して以降も日々、毎日106円台へと反発しているため、105円台の売りが機能していないことを示している。
ドルを支えているのはやはり5円刻みの心理的節目105.00の存在。
2017年以降において104円台まで落ち込んだ局面は4回ある(週足チャート、除く3月のフラッシュクラッシュ)が、そこから反発している。
104円台には少なからず値覚えがあるため、余程強い与件が出現しない限り、105.00を積極的に試しづらい状況が続いている。
(b)上値圏に目をやると、前週の高値が106.70であった様に、106円台後半では積極的なドル買いが見られない。
この関連では、移動平均線に目をやると、100日MA(前週末107.13)が相当に強い抵抗水準になっている印象を受ける。
日足チャートを見れば歴然としているが、4月以降(除く6月初旬の約1週間)では完全に100日MA(前週末107.13)が抵抗水準として機能している格好だ。
この先も目を離せないポイントである。
こうして前週の相場を振り返ると、今週も105円~107円での保ち合い相場になりそうな気配である。
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以下では、上で述べた点を軸に、ドルの強弱要因を指摘した上で、今週の予測をまとめた。
ドルの弱気要因
(1)2月下旬の相場でも112円台でドルの上値の重さが再認識されているが、そこから反落した後の戻り高値が111.71(3月24日高値)止まりとなっている。
(2)111.71と109.85(6月5日)とで抵抗線TR1(日足チャート)を引くことができるが、同線が前週末に107.95前後へと下降してきた。
(3)(2)との関連で抵抗線TR1と下方に平行に引くことのできる線TR2とで下降チャンネルTR1-TR2が形成されている。
(4)25日MA(前週末106.04)・100日MA(同107.13)・200日MA(同108.05)の関係において、順番に期間の短い線が長い線とデッドクロスしている。
(5)4月以降(除く6月初旬の約1週間)では完全に100日MAが抵抗線として機能している。
(6)スポット終値(前週末105.81)が再び25日MAを下回った。
(7)前述TR1と200日MA(前週末108.05)が重なっているため、107円台後半ではドルの上値が相当に重たいと見る。
(8)106円台での滞空時間が短く、直ぐに105円台に押し戻されている。
ドルの強気要因
(1)直近最安値は104.20(7月31日)と、下値が2018年12月の安値104.10によって支持された。
・・・(3月のフラッシュクラッシュ相場は考慮していない)
(2)同様に、前週の下値が下降チャンネルTR1-TR2の下限によって支持された。
(3)(2)との関連で下降チャンネルTR1-TR2のセンターラインCLから着かず離れずの関係を維持している。
(4)転換線(前週末106.07)が基準線(同105.85)を上抜いており、三役逆転が解消されている
以上の強弱要因に照らして、以下の様に今週の予測をまとめた。
今週のまとめ
この先の中期相場としては、相場が下降チャンネルTR1-TR2の中で推移しているため下方リスクが強いことに著変はない。
TR1(前週末107.95前後)が108円を下回る水準まで下降したきたため、相当に上値が限定されてきたと言えよう。
こうした状況下、4月以降(除く6月初旬の約1週間)では完全に抵抗線として機能している100日MAが107.13(前週末)まで下降してきたため、ドルの上値が相当に重くなる可能性が高いと見る。
ドルの大きな拠り所は5円刻みの節目105.00(理由は上述)だが、106円台前半で上値がキャップされてくる様であれば、同水準が試されても不自然ではなくなってきた。
今週は、概ね105円~107円での弱含み保ち合い相場を予測するが、バイアスは下方リスクに置いている。
上値リスクについては、106円台でのショート、特に106円台後半でのショートが踏み上げられた際に生じやすくなるが、107円台半ばが一杯か。
予測レンジ:104.10~107.69
Ⅳ.チャートポイント
**レジスタンス
106.70 (8月17日高値)
*107.02~107.05[(50%戻し、109.85→104.20)~(8月13日の高値)]
*107.22(前週末100日MA)
107.57(7月20日の高値)
107.69(61.8%戻し、109.85→104.20)
107.79(7月7日の高値)
*108.16(7月1日高値)
108.13(前週末200日MA)
**108.15(前週末のトレンド線TR1)
109.85(6月5日高値)
110.00(心理的節目)
*111.71(3月24日高値)
**112.23(2月20日高値)
**112.40(昨年最高値)
**サポート
105.10(8月19日安値)
*105.00(サイコロジカル)
*104.10~104.20(2018年12月安値、7月31日安値)
**101.18(フラッシュクラッシュ時3月9日の安値)
Ⅴ.今週のポイントとストラテジー・アイディア
●今週の注目材料
*米国
・FRB関連
26日:デイリー・サンフランシスコ連銀総裁がパネルディスカッションへ参加
・米経済統計等
24日:7月シカゴ連銀全米活動指数
共和党全国大会(~27日)
25日:8月リッチモンド連銀製造業指数
7月新築住宅販売指数
26日:7月耐久財受注
7月製造業受注
27日:4~6月GDP(速報)
28日:8月ミシガン大学消費者マインド(確報)
7月PCEデフレーター
・他
公表が遅れている財務省の「為替報告書」で中国が再び為替操作国に認定される可能性がある。
(米中対立が本格化・・ドル売り)
・・・昨年8月5日に財務省は中国を為替操作国として認定しているだけに、今月は要注意。
15日に予定されていた米中による第一段階通商合意の進捗状況の検証は無期延期。(近日中に開催との一部報道もある)
実施された場合は、中国の輸入額が合意目標値を下回っているため、米中対立激化要因となる(ドル売り)。
新型コロナウィルス問題を巡っては、追加予算協議が与野党間で長引く一方、治療薬やワクチン開発報道が錯綜。
・・・刹那的なドル売り・ドル買い要因
共和党全国大会関連では、現時点の事前調査ではトランプがバイデンに差を付けられているが、どこまで縮められるかが焦点。
トランプがキャピタル減税案等で株式相場を押し上げる様であれば、一時的なドル高も。
*日本
中長期的に貿易収支が赤字傾向にあるため外貨不足となっている(ドル高・円安)
・・・このところ下値圏では輸入筋のドル買いが増えている。
但し、ドルの上値が重たいことから、大企業(輸出)関連事業計画の上期採算レートである
107.86(下期は107.86、通年は107.87)に届かないとの見方から、
107円台前半で大きなドル売りが出る可能性がある。
*ユーロ圏
25日:独4~6月GDP(確報)
28日:ユーロ圏8月消費者信頼感指数(確報)
今週のストラテジー
ストラテジー
*基本ストラテジー:下降トレンドが継続しているため、依然として基本ストラテジーはドルの戻り売りに置く。
・推奨水準
107円台前半からの戻り売り。
106円台前半からの試し売り(短期日計り戦略だが、奏功する様であれば、ある程度長目のポジションとしてキープ。浅目のストップ要)。
・理由
理由については、以下でも述べているが、参考図と共に「チャートで振り返る今年のドル円相場~ポイントの整理~」で詳述した。
(1)下降チャンネルTR1-TR2(日足チャート)が機能している。
(2)ドル需給の緩み
日銀短観(7月1日発表)の大企業事業計画の上期採算レートは107.86(下期は107.86、通年は107.87)だが、上値の重たい展開が続いているため、徐々に実需の売り水準が切り下がる可能性がある。
(3)25日MA(前週末106.04)・100日MA(同107.13)・200日(同108.05)の関係で、
期間の短い線(含むスポット)が順番に長い線とデッドクロスしている。
25日MAと100MAとのクロス関係は信頼性が高い。
デッドクロス中の25日MAと100日MAとの関係が逆転するまでは、ドルの中期的軟調地合いに著変はないと見ている。
(4)一目の雲の下限が前週末時点で107.16と、100日MA(前週末107.13)と重なる。
(5)4月以降終値は(除く6月上旬の一時期)100日MAを上回っていない。
(6)109.85(6月5日)からのドル下降局面では、ベアリッシュ・フラッグとウェッジのパターンが出現している。
・・・前回の参考図
(7)転換線(前週末106.07)が基準線(105.85)を下から抜いているが、ドルは伸びを欠く。
注)利食い・損切りは個人のトレーディング・スタイルやトレーディング・スパンが異なるため、特に推奨水準はありません。
コメントや推奨水準は単なる筆者の分析結果であり、その水準での取引を勧めるものではありません。
投資の最終判断は自己責任で行ってください。
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