新たな投資のスタンダード!?ロボアドバイザーとは
そこには、映画「ウォール街」のゴートン・ゲッコーのような人もいないし、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」のような強欲や恐怖がむき出しの状況も起きない。
人よりもAIに最適化されたオフィスのなかで、トレーダーはほぼ何もせずにモニターを見つめているだけなのだろう。
現在、投資初心者や長期投資をしたい人を中心に人気を集めているのがロボアドバイザーによる投資だ。投資家に代わってAIが債券を売買してくれたり、株式の銘柄を提案してくれたりする。
ロボアドバイザーには以下の2種類がある。
- 投資一任型:AIに資産運用を一任するタイプ。資産運用の方針、投資資産額、年収などを登録しておくと、AIが投資対象を選んで自動運用する。価格変動によって株式や債券などのバランスが崩れたときの調整である「リバランス」も自動的にしてもらえる。
- アドバイス型:投資家の情報・希望を登録すると、投資対象やポートフィリオ(金融商品の組み合わせ)などを提案してくれる。しかし、銘柄選択や資金配分などの最終決定は投資家自身が行う。リバランスなども自分でしなければならない。NISAと一緒に運用できるのも特徴。
ロボアドバイザーのメリット
ロボアドバイザーによる投資が向いているのは、投資初心者や堅実に資産を運用したい人、仕事や家事、育児などが忙しい人といわれている。ここでは、ロボアドバイザーのメリットを紹介していくので、自分にあった投資方法なのか検討してみてはどうだろうか。
投資・トレードのスキルがなくても資産運用できる
ロボアドバイザーを利用した投資、特に投資一任型では、投資やトレードについての知識がほとんどなくても資産運用が可能だ。
基本的には、口座を開設して、年齢や資産、投資リスクに対する考え方などについての簡単な質問に答えるだけで、ロボアドバイザーによる資産運用がスタートできる。
たとえば、リタイア後に資産運用を始めるなど、一から知識を学ぶ時間が惜しい人には便利なサービスだ。また、証券会社の窓口に行ったりフィナンシャルプランナーに相談したりしなくよい点も手軽といえる。
投資経験者なら、リスクを分散したり投資チャンスを増やしたりするために、海外の株式や債券を購入したいと思うこともあるだろう。しかし、仕組みがよくわからないため不安になることも多い。
ロボアドバイザーには海外の投資対象も含まれており、ハードルが高かった投資も簡単に実現できる。
手間や時間がかからない
ロボアドバイザーは、銘柄の調査や最適なポートフィリオの作成などをサポートしてくれる。仕事や家事・育児などに忙しく、自分で株式や為替などの相場を分析する時間がない人におすすめだ。チャート監視のために、パソコンの前に座っている必要もない。
特に投資一任型の場合は全てを任せてしまえる。経済イベントや事故・災害などで株式や為替などの価格が急激に変動した場合でも、自動的にリバランスしてくれるので安心だ。
リスク分散に優れている
原則的に、ロボアドバイザーは国内や海外の債券や株式などに資産を分散投資する。そのため、多くの個人投資家がするような数種類の株の銘柄や為替ペアでの投資に比べて、リスクが低い投資なのだ。
こうしたリスク分散の優れたメリットは、通常、投資期間が長くなるほど大きくなる。ロボアドバイザーによる積立投資は、時間分散によってそのメリットを高めた商品のひとつだ。堅実に資産を増やしていきたい人に、ロボアドバイザーの利用はおすすめといえる。
ビジネスパーソンも楽々!確定申告がない
会社勤めのビジネスパーソンの場合、確定申告を一度もしたことがないという人もめずらしくないだろう。FXや先物取引を始めたいが、確定申告をしなければならないことを考えると面倒に思う人も少なくない。
ロボアドバイザーの口座では、特定口座の源泉徴収ありが選べるため、確定申告をしなくても資金運用ができる。もちろん一般口座や源泉徴収なしも選べるので、状況に応じて節税することも可能だ。
少額資金からスタートできる
ロボアドバイザーの積立型の運用では、サービスによっても異なるが毎月1万円前後の投資が可能だ。リスクが少ないメリットを生かして、貯金のような感覚でロボアドバイザーを活用している人もいる。現在では週500円から積立投資ができるサービスも登場しているため、月々のお小遣いのなかからでも投資できるようになった。
なお、先にも紹介したようにアドバイス型のロボアドバイザーの場合はつみたてNISAの利用もでき、年間の投資額40万円までは非課税になる。この点も少額資金であることが多い投資初心者にはうれしいところだ。
システムトレードに興味がある人にも向いている
ロボアドバイザーは、設定した目的や組み込まれているアルゴリズム、人工知能が学習した情報などをもとに、過去のデータから優位性があると推測される投資対象を選び資金を配分してくれる。人の感情のように筋が通らないバイアスがかかることはない。
投資初心者のうちは、感情に身を任せたようなトレードで大きな損失を出してしまいがちだ。そのようなときに一度は考えるのが、あるルールに基づいて機械的にトレードを行うシステムトレードである。
しかし、システムトレードを自分で構築するのは手間や時間がかかる。業者から購入する場合も、少なくない額のコストが発生するのが一般的だ。ロボアドバイザーなら、システムトレードを比較的安価で利用できる。AIを導入している分、システムトレードよりパフォーマンスが改善されている点もある。
ロボアドバイザーのデメリット
ロボアドバイザーを利用しない人の代表的な意見として、「利益が少ない」「利用料がかかる」「投資プロセスが理解できない」などがある。ここではロボアドバイザーのデメリットを紹介する。なお、元本割れや為替リスクは、どの投資でもあることなので省略する。
ローリターンになりやすい
先に、ロボアドバイザーがリスク分散に優れているというメリットを紹介した。このことは、短期的に大きな利益が見込めないことを意味する。基本的にはロボアドバイザーの投資は「ローリスク・ローリターン」と考えておこう。デメリットとは限らないが、人によっては利益に満足できなかったりライフプランに合わなかったりすることもある。
自分で投資するよりコストがかかる
ロボアドバイザーに資産を運用してもらっている間は、信託報酬として年率1%程度の利用料が常時発生する。一般的な投資信託やETF(上場投資信託)を購入するより高いコストだ。もちろん、自分で株や為替を選択して売買するよりも高い。
ただし、ファンドマネージャーに運用してもらうと年率2~3%程度が相場なので、これと比較すると安いと感じる人もいるだろう。
結局のところ、運用利益との差が問題なので、各社のロボアドバイザーの実績と利用料を比べてみるのが妥当だ。ただし、これらは過去の実績に過ぎず、将来もそのパフォーマンスになるとは限らない。
投資・トレードのスキルアップができない
投資一任型のロボアドバイザーの投資では、何をどのように運用したか公表される。アドバイス型の場合も、投資家の意向に合ったものを選んでいることが説明される。しかし、その詳しい理由までは説明してくれない。つまり、基本的には、ロボアドバイザーと業者を信じて資産運用を任せるしかないのだ。
アドバイス型の場合、最終決断は自分でするので、ある程度投資やトレードのスキルは身に付く。しかし、株式投資やFXの売買を全て自分で行うのとは違い、投資・トレードスキルの成長にはかなり差が出るだろう。
ブラックボックスなので不安になる
意外に思う人もいるだろうが、AIは論理的判断が苦手である。このことは、チェスや将棋のプロを倒したAIやその開発者が、なぜその手を指したのか筋道を立てて説明できないことでもわかるだろう。つまり、ロボアドバイザーがなぜそのような投資をしたのか、人間が納得できる答えは期待できないのだ。
投資対象の選択や運用などが自動になるのは便利だが、その反面、不安やストレスが大きくなることも想定しておいたほうがいい。特に損失が出ている時期は、ロボアドバイザーを止めたくなるか、他の業者に変えたくなるだろう。資金を早く増やしたいと思う人ほど、このデメリットが大きくなるので注意が必要だ。
ロボアドバイザーにはメリットとデメリットの両方がある。投資する人によってメリットがデメリットになったり、その逆になったりするのも特徴だ。つまり、ロボアドバイザーのパフォーマンスを調べるだけでなく、自分に合った投資方法なのか検討することも大切だ。試しに少額資金で始めるのもよい方法といえる。