ドル円基本戦略は戻り売りを続行
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Ⅰ.早読み先週のドル円相場(寄り付きは東京午前9時の気配値、NY終値は現地午後5時の気配値)
8月3日:寄り付き105.85。
東京:日系企業の米系企業買収報道と相俟って、仲値にかけてのドル買い需要で106.44を示現するも、伸び切れず。その後は上値の重たい展開となり、106円を割り込むと、105.80~90で動意薄となった。
NY:米金利の上昇を受けてのドル買いで106.47まで上昇。7月ISM製造業景況感指数は良好な結果となったが、ドル買い材料とはならなかった。
その後は中国企業傘下の動画共有アプリを巡っての米中対立を嫌ってのドル売りで105.90まで軟化。
NY終値105.96。
4日:寄り付き106.03。
東京:日経平均の上昇を受けて106.19まで買われるも、前日に106.40台での上値が重たかった展開から、伸び切れずに106円近辺へと反落。
NY:朝方は海外の高値と同じ106.19まで上昇するも、5年債の利回りが過去最低水準に低下する中、106円を割り込んだ。
その後も、米金利の低下と金価格上昇とが相俟って、ドル全面安の展開となり、105.64まで下落。
NY終値105.72。
5日:寄り付き106.03。
東京:前日のNY市場の流れを受け継ぐ形でドル売りが先行し105.51を付けたが、突っ込んでのドル売りは見られず、その後は105.60近辺での模様眺めに終始。
NY:7月ADP雇用統計の結果が予想を大幅に下回ったことで105.33まで下落。
しかし、米金利が持ち直したことや7月ISM非製造業景況指数が予想を上回ったことを受けて、105.67まで反発。
NY終値105.60。
6日:寄り付き105.57。
東京:材料難の中、105.50挟みでの小動きに終始。
NY:コロナ対策を巡って米議会協議の先行きに不透明感が残る中、一時105.31まで下落するも、直ぐに105.60まで反発。その後は翌日に7月雇用統計の発表を控えて105.60前後での小動きに終始。
NY終値105.54。
7日:寄り付き105.52。
東京:米国で追加経済対策を巡って与野党協議が難航したため、米景気の先行き不透明感からリスク回避の円買いの動きとなり、105.48まで下落。
しかしながら、同水準近辺からは実需のドル買いなどが持ち込まれ、小戻した。
その後は米雇用統計の発表を控えて、105.60近辺で模様眺めの展開となった。
NY:7月雇用統計では、NFPが市場予想を上回る結果となり、一時106.05まで買われるも、この結果が先行きの米経済回復を裏付けるものではないとの見方もあり、その後の伸びは見られなかった。
NY終値105.92。
Ⅱ.長期相場分析
2017年のドル最高値は114.73(11月6日)、そして2018年の同最高値も114.55(10月4日)に止まり、115円が超長期のドルの抵抗水準になっている。
2月17日週にトランプラリーの最高値118.66(2016年12月)近辺を起点とする抵抗線を抜き、昨年の最高値112.40に迫ったが、高値は112.23に止まった。
ここ数年の高値圏である114円台では上値が重たいという値覚えがあるため、112円台を超えての積極的なドル買いは見られず、長期的に112円台前半が強い抵抗水準との認識が生まれた。
3月下旬に年初来高値112.23(2月20日)を試したが、結果は111.71(3月24日高値)止まりと、111円台後半でもドルの上値の重さが確認されている。
111.71を付けて以降、下降チャンネルの中で推移しており、ドルの軟調地合いが継続している。
7月下旬には3月中旬以来の安値水準となる104円台前半まで下落しており、
年末に向けては大きな節目の100円を目指す展開もあり得るか。
**中期予測レンジ:101.00~111.00
**上値メド水準
110.00(サイコロジカル)
112.23(年初来高値)~112.40(2019年最高値)
114.55(2018年10月4日高値)
114.73(201711月6日高値)
115.00(2017年11月以降の展開で意識された強い心理的水準)
**下値メド水準
105.00(サイコロジカル)
104.20(7月31日安値)
101.18(3月9日安値)
100.00(サイコロジカル)
99.00(2016年安値)
Ⅲ.今週のドル円相場テクニカル分析
前週の本欄では、『「目先ではチャートポイントの106.64(7月10日安値)を完全に上回るかどうかが重要と見ている。
仮に同水準を超えて行く様であれば、107円半ば近辺までの反発はあり得ようが、逆に同水準を越えられない様であれば、再び105円を抜いて下値を試す可能性が残っている」とした。
その上で「総じて荒れ相場の後の落としどころを探る展開と見るが、本格的にドルが下落し始めたのが7月24日であることを考慮すれば、下落局面が若いため、依然としてドルの下方リスクが高い」と予測した。
予測レンジ:103.80~107.68』
実際の相場は、週初こそ106.47を付けたものの、その後は高値を試す気配も見られず、また106円台での滞空時間が短い展開となった。
もっとも、105円台前半では下げ渋りを見せ、底堅さを示した週でもある。
目先も前週の様な保ち合い相場となる可能性もあるが、105円台前半で底堅さを見せたこともあり、前週の高値106.47を上抜くかどうかが注目される。
106.47は109.85(6月5日高値)からの抵抗線や25日MA(前週末106.44)と重なっているだけに、ここを上抜く様であれば、ややドル高に振れる可能性を見ておきたい。
他方、今週も106.47を抜けない様であれば、再び下値を試す展開が訪れると見る。
問題は、今週から東京がお盆休暇となるため、市場が薄くなることが想定される点。
円のマザーマーケットのプレイヤーが少なくなる中で相場が動かなくなるのか、逆に大きな動きがあるのか、見極めづらいところである。
休暇中は本邦輸出関連企業は外貨売りオーダーを置くであろうことは想像に難くない。
だがその一方で、今年は本邦貿易収支が赤字傾向にあるため、実需のドル(外貨)買いオーダーもそこそこ多いはずである。
従って、新たな重要与件が発生しない限りは、両サイドのオーダーで、ドル円は動きづらくなる可能性がある。
こうした状況下、以下ではドルの強弱要因を指摘した。
ドルの弱気要因
(1)2月下旬の相場でも112円台でドルの上値の重さが再認識されているが、そこから反落した後の戻り高値が111.71(3月24日高値)止まりとなっている。
(2)111.71と109.85(6月5日)とで抵抗線TR1(日足チャート)を引くことができるが、108円台前半へと下降してきた。
(3)(2)との関連で抵抗線TR1と下方に平行に引くことのできる線TR2とで下降チャンネルTR1-TR2が形成されている。
(4)スポット終値・25日MA(前週末106.44)・100日MA(同107.41)・200日MA(同108.18)の関係において、期間の短い線(含むスポット終値)が長い線とデッドクロスの関係にある。
(5)三役逆転が出現している。
終値<一目の雲、転換線(105.32)<基準線(105.98)、遅行線<26日前の実勢相場
(6)106円台での滞空時間が短く、直ぐに105円台に押し戻されている。
(7)ディセンディング・トライアングルの下辺が抜けている。
ドルの強気要因
(1)直近最安値は104.20(7月31日)と、下値が2018年12月の安値104.10によって支持された。
・・・(3月のフラッシュクラッシュ相場は考慮していない)
(2)同様に、前週の下値が下降チャンネルTR1-TR2の下限によって支持された。
(3)前々週は下値圏で週足ローソクが下髭の長いカラカサ[短い実体(コマ線)+長い下髭)]となっている。
・・・ストラテジーアイディア参考図
(4)下降チャンネルTR1-TR2のセンターラインCLの上に出かかっている。
(5)前々週の安値104.20でTR1-TR2のTRにほぼ到達したとの見方もできる。
以上の強弱要因に照らして、以下の様に今週の予測をまとめた。
今週のまとめ
前週は、荒れ相場の後の落としどころを探る展開を予測した。
実際の(前週の)相場では105円を再び割り込むことがなかったため、同水準が5円刻みの節目ということを考慮すると、当面の下値は105円となる可能性が出てきた。
もっとも、相場は下降チャンネルTR1-TR2の中で推移している点に著変はなく、ドル高へのトレンド転換を語るには時期尚早である。
こうした状況下、本文中でも述べている様に、目先は前週の高値106.47さらには106.64(6月10日:当時の強い支持水準)をブレイクできるかどうかが注目される。
仮に106.47~64を上抜いて行く様であれば、107円台後半までの反発もありえるか。
他方、下値不安が払拭された訳ではない。中長期下降トレンドが続く中、105円を割り込む様であれば、再び直近安値の104.20が試される可能性がある。
今週は105円半ば~106円半ばで保ち合う展開と見るが、ドルがやや強含む局面があると予測する。
予測レンジ:104.20~107.69
Ⅳ.チャートポイント
**レジスタンス
106.44~106.47(前週末25日MA~8月3日の高値)
*106.64(7月10日安値:下抜け前のサポート水準、支持水準の抵抗水準化)
107.02(50%戻し、109.85→104.20)
107.57(7月20日の高値)
107.69(61.8%戻し、109.85→104.20)
107.79(7月7日の高値)
*108.16(7月1日高値)
108.18(前週末200日MA)
**108.32(前週末のトレンド線TR1)
109.85(6月5日高値)
110.00(心理的節目)
*111.71(3月24日高値)
**112.23(2月20日高値)
**112.40(昨年最高値)
**サポート
*105.00(サイコロジカル)
*104.10~104.20(2018年12月安値、7月31日安値)
**101.18(フラッシュクラッシュ時3月9日の安値)
Ⅴ.今週のポイントとストラテジー・アイディア
●今週の注目材料
*米国
・FRB関連講演
12日:デイリー・サンフランシスコ連銀総裁、ローゼングレン・ボストン連銀総裁
13日:デイリー・サンフランシスコ連銀総裁
・米経済統計
12日:7月CPI
14日:7月小売売上高
7月鉱工業生産
8月ミシガン大学消費者マインド
・他
公表が遅れている財務省の「為替報告書」で中国が再び為替操作国となる可能性。
(米中対立が本格化・・ドル売り)
・・・昨年8月5日に財務省は中国を為替操作国として認定しているだけに、今月は要注意。
15日前後に米中で第一段階通商合意の進捗状況の検証が予定されている。
実施された場合は、中国の輸入額が合意目標値を下回っているため、米中対立激化要因となる(ドル売り)
新型コロナウィルス感染者の拡大
・・・米株に高値警戒感があるため、一時的な調整も。(ドル売り)
大統領選ではトランプ大統領が不利な状況。
・・・バイデン氏に有利な材料→バイデン氏は法人税増税を公約→米株下落懸念(ドル売り)
15日に総額1120億ドルの米国債償還日を迎えるため、一定程度の元本・利払いの円転が予想される(ドル安・円高)。
新型コロナウイルスのワクチンや治療薬の開発関連ニュース(ドル高)
追加経済政策を巡る議会協議の進展状況(ドル高・ドル安)
全ての年限で米国債が利回り低下傾向(ドル安)
*日本
貿易収支の赤字傾向による外貨不足(ドル高・円安)
*ユーロ圏
11日:独8月ZEW景況感指数
12日:ユーロ圏6月鉱工業生産
14日:ユーロ圏4~6月GDP(速報)
ユーロ圏6月貿易収支
●今週のストラテジー
○基本ストラテジー
ストラテジーA:下降トレンドが継続しているため、依然として基本戦略はドルの戻り売りに置く。
推奨水準
107円台前半からの戻り売り。
ストラテジーB:日計り短期での打診買い(浅目のストップ要)
推奨水準
105.00~105円台半ば近辺
*ストラテジーAの理由と背景
(1)下降チャンネルTR1-TR2(日足チャート)が機能している。
(2)ドル需給の緩み→107円台で上値が重たくなる可能性。
盆休み中の輸出関連のドル売りオーダーが並ぶ可能性が高い。
日銀短観(7月1日発表)の大企業事業計画の上期採算レートは107.86(下期は107.86、通年は107.87)と、107円台半ば~108円台前半では実需の売りが想定される。
上値の重たい展開が続いているため、徐々に実需の売り水準が切り下がる可能性がある。
(3)スポット終値・25日MA(前週末106.44)・100日MA(同107.41)
・200日(同108.18)の関係で、期間の短い線(含むスポット)が順番に長い線とデッドクロスしている。
25日MAと100MAとのクロス関係は信頼性が高い。
デッドクロス中の25日MAと100日MAとの関係が逆転するまでは、
ドルの中期的軟調地合いに著変はないと見ている。
(4)5月以降の相場でディセンディング・トライアングルが出現し、前週に下辺が崩れている。
(5)三役逆転が継続中
*ストラテジーBの理由と背景
(1)前週では105円台前半で実需のドル買いが見られている。
本邦貿易収支にやや赤字化傾向が見られるため、押し目では実需のドル買いが入りやすい。
(2)7月下旬ではドルが104円台まで下落したが、週足終値では5円刻みの節目105円を下回っていない。
(3)(2)との関連で、このところの下値圏で「カラカサ」の週ローソク足が出現している。・・・参考図
注)利食い・損切りは個人のトレーディング・スタイルやトレーディング・スパンが異なるため、特に推奨水準はありません。
コメントや推奨水準は単なる筆者の分析結果であり、その水準での取引を勧めるものではありません。
投資の最終判断は自己責任で行ってください。
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