投資信託の目論見書の読み方
株式投資や金(ゴールド)投資の商品投資などには上場投信(ETF)をお勧めするが、ETFを含めて、どの投資信託を購入するのか判断するために大事な目論見書の見方について、項目別の説明とポイントを解説する。
目論見書とは何か
まず、目論見書とは何か詳しく解説しよう。
目論見書とは投資信託の「説明書」のようなものだ。
「交付目論見書」と「請求目論見書」の2種類があり、交付目論見書は販売時に必ず顧客に渡さないといけない目論見書となっている。
また、請求目論見書は交付目論見書と違い、投資家からの請求があった場合において発行・交付しないといけないものだ。
目論見書の中には投資判断のために必要な説明事項や情報が記入されているため、投資家としてもこの中に何が書かれているのか理解する必要がある。
次に、購入時に説明資料としても利用される交付目論見書について、目論見書に記載されている項目を説明していきたい。
ファンドの目的・特色
ファンドの目的・特色には、投資信託のファンドがどのような投資対象に投資して、どのような点を収益の源泉として利益を出して行くのかが記載されている。
ファンドの目的は、例として「アセアン諸国の株式等を主要投資対象とし、中長期的な値上がり益の獲得を目指します。」という内容が記載される。
特色については、具体的にどのようなものに投資を行うのかといった投資対象を明確にするためや、運用手法、運用プロセス等、運用に関連して投資家に対して明確にするために記載するものである。
また、投資制限としてどの投資対象に投資をして、どのようなものには投資をしないという内容が含まれている場合もある。そこで明示した投資対象以外についてはファンドとして投資することはできない。
また、為替リスクに対しての対応について記載されている場合もある。
為替リスクとは、外国の投資対象に投資をした場合、日本円から外国通貨へ転換して投資をするため、為替変動により損益が発生する可能性があることをいう。この為替リスクに対して、ヘッジを行うかどうかということが記載されていることもある。
ヘッジを行うと為替リスクはほぼなくなるものの、ヘッジコストと呼ばれる保険料のようなものがかかる場合が多い。通貨金利によってこのコストはバラバラであるため、為替ヘッジありの投資信託の場合、投資家はどの程度インパクトが出るのかチェックすべきだろう。
投資リスク
投資リスクはその名の通り、投資信託に投資することで内包されているリスクとしてどのような種類があるのかが記載されている。
基準価格が変動する要因とも言えるだろう。
投資リスクで記載される項目について下記に記載したい。
- 株価変動リスク:投資対象が株であった場合に発生するリスクで、株価の変動によって損益が発生することを意味している。
- 金利変動リスク:投資対象が債券であった場合に発生するリスクで、債券価格が上昇すると金利は低下、債券価格が下落すると金利は上昇することを指している。金利の変動と価格の変動は一致していることから、債券価格の変動リスクともいえる。
- 為替変動リスク:投資対象が海外の投資商品であった場合に発生するリスクで、日本円から外国通貨に転換して投資をすることから、為替の変動によって日本円に計算し直した場合に損益が発生するということを指している。
- 信用リスク:債券の発行体や株式の企業が抱える経営不安・破綻リスクを指している。破綻リスクが高まることによって、償還時に元本が返還されないリスクが高まることから債券価格に影響する。また、株の場合、企業の破綻リスクが高まると株価は下落するため価格に影響する。このように企業の信用部分の変動リスクを指している。
- カントリーリスク:投資対象の国自体のリスクを指している。例えば、トルコ国債が投資対象となっていればトルコという国が破綻すると元本は返還されない。また、トルコリラも国自体の信用不安が起きた場合は下落することがあり、国の信用自体で価格が変動するリスクを指している。さらに、その国の法改正や突発的な政情の変化等もこのカントリーリスクに含まれる。
- 流動性リスク:流動性リスクは市場で出回っている量が少ないことや投資家が少ないことから、売りたい時に売れないリスク、買いたいときに買えない等のリスクを指している。
このほかにも、「期限前償還リスク」や「再投資リスク」等もあるが、代表的なリスクの種類は上記の6つとなる。投資信託を購入する際は、どのようなリスクが内包されているかチェックしよう。
手続き・手数料等
目論見書の中でも、手数料については必ずチェックすべき項目である。
投資信託にかかる手数料は以下の通り。
- 「購入時手数料」:購入時に販売会社に支払う費用
- 「信託報酬」:投資信託を保有している間に発生する保有費用
- 「信託財産保有額」:投資信託を購入したり解約したりする際に、手数料とは別に徴収される費用。これは販売会社が受け取るのではなく信託財産内に留保されるもの。投資信託の種類によっては発生しないこともある。
- 「監査報酬」:投資信託の決算時に監査法人に支払う手数料
- 「売買委託手数料」:投資信託が投資する株式などを売買する際に発生する費用。発生の都度、間接的に徴収される
手数料で注意すべきポイントは、購入時手数料と信託報酬が割合として大きなコストとなることだ。購入時の手数料は、低いほうがベターといえる。また、信託報酬は保有している間かかるコストということから、信託報酬も相対的に低いものを選ぶべきだ。
手数料は投資信託の種類やリスクの所在から、相対的に手数料が低いかどうかを判断する必要があるため、類似した投資信託と比較検討することが必要だろう。
現在、証券会社や銀行の販売はノルマを収益ベースから残高ベースで切り替えており、信託報酬が高いものをセールスで勧めてくる可能性が高いことに留意したい。
運用実績
運用実績の欄には下記の項目が記載されている。
- 「基準価額・純資産の推移」
- 「基準価額・純資産」
- 「分配の推移」
- 「年間収益率の推移」
の4項目だ。
純資産の金額と基準価格の推移を最初にチェックしよう。
純資産は、100億円以上はあったほうがいいとされている。数億円で世界の商品を分散して購入することは難しく、運用自体も純資産がないと難しくなることが多いため、最初にチェックすべきだろう。
そして、基準価格の推移をチェックしよう。投資信託のパフォーマンスのトレンドがどうなっているのかを確認することが重要である。
また、どのような銘柄に投資を行っているかについてもここでチェックすることが可能なので、銘柄や業種等を把握することがベターである。
外国株の投資信託等であれば業種を見ると偏っていることも往々にしてあるため、具体的にどこにリスクが集まっているのかということもこの項目で把握しよう。
まとめ
交付目論見書の中身は投資を検討する際に、最低限知っておくべき情報が載っていると認識しておこう。交付目論見書の内容は理解すべき項目ばかりである。
手数料については投資家も一番敏感になるところで、チェックする人がほとんどであろう。手数料自体が相対的に低いのか高いのか判断するところまで調べたほうがいい。
投資信託は何千種類とある中で、リスクが高いものから低いものまで様々な種類がある。最低限ここに記載されている内容が何を示していて、どの程度のリスクを内包しているのか、年間のコストはどのくらいかかるのかということを理解してから投資をすべきだろう。
金融機関に勧められるがままに購入してみたという投資家も多いが、今一度なぜその商品を購入したのか考えた上で見直してみることも必要である。