経済ニュースの読み方
経済指標や政府の政策方針、中央銀行総裁のコメント、はたまた政府関係者の人事異動、国同士の貿易交渉の内容等種類は千差万別である。
このように経済ニュースを分析して投資を行うことを「ファンダメンタルズ分析」という。
ファンダメンタルズ分析はテクニカル分析と違い、この見方が基本であるというのはあまりなく、その国々の情勢や市場動向によって見方が変わるものだ。そのため、ファンダメンタルズ分析に慣れるのは一朝一夕にできるものではない。
では、FXを始めるにあたって経済ニュースをどのように読み解き、相場の予想につなげていくのかをここで解説していきたいと思う。
経済ニュースをどこでチェックすべきか
最初に経済ニュースに慣れるためにはどこから情報を仕入れるべきか紹介したい。
筆者が証券会社の外国為替トレーダーだったときに必ず見ていたサイトをいくつかご紹介するので、参考にしていただければと思う。
■ ブルームバーグ(Bloomberg):機関投資家が全員このニュースベンダーのツールを利用しているといっても過言ではない必須の金融サイト
■ ロイター(REUTERS):ブルームバーグと並んで金融機関が利用しているニュースベンダー
■日本経済新聞:日本では企業動向等チェックするのにいいだろう
■ ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal):アメリカの金融情報新聞で米国の投資家は必ずチェックしている
最初はこの4つだけチェックすればいいだろう。
では、次にどのように勉強していくべきかをご紹介する。
アナリストレポートを読んで考え方を覚えること
最初はやはりプロの考え方をベースに知識を蓄えることがスタートである。そして、教科書的な動きを頭に入れておくことも重要だろう。
例として、「債券価格が上昇し株が上昇している」という文章に違和感がない場合は基礎知識が足りないということだ。そのため、さまざまな初心者向けアナリストレポートで平易に記載がされているものがたくさんあるので、読んで知識をつけることが第一歩だろう。
たくさん読んでいくと共通項が見つかり、ある程度基礎的な動き方や、イレギュラーな動きというのが頭ですぐに理解できるようになってくる。
FXサイトのニュースソースから自分で相場を予想してみる
基礎知識がついたら、FXサイトが提供しているニュースソースから重要な情報と思われることをピックアップして一つのニュースから相場を考えてみよう。
重要なニュースや経済指標はある程度決まっている部分もあるため、いくつかチェックすべきイベントや経済指標をご紹介していく。
■ アメリカ雇用統計
■ FOMC
■ ECB
■ BOJ(日銀政策会合)
最初の「アメリカ雇用統計」は経済指標であり、世界中の投資家がこの数字に着目している世界一大事な経済指標と言っても過言ではないだろう。
やはり国の体調は、その国の労働市場に現れるため注目されている。この雇用統計の数字を材料の一つとしてFOMC(アメリカの中央銀行政策会合)で政策金利の操作が決定されることから、これは毎回必ずみるべき経済指標だ。
アメリカ雇用統計以外のほかの3つはアメリカ、ヨーロッパ、日本の中央銀行政策会合であり、政策金利を決定する会合なので、必ず見ないといけないものと認識しておこう。
そして、中央銀行がどのように現状の国の状態を捉えており、どのような点を問題視しているのか、懸念しているのか、楽観視しているのか等がコメントから推測できる。そのため、それに関連した経済ニュースや要人のコメント、経済指標をチェックしていくことが経済ニュースを全て見るよりも効率的に見るポイントが明確になるだろう。
最初はまず日々ニュースをチェックし、前日の相場を振り返ることからスタートすることが大切だ。
例えば、「FOMCでアメリカが政策金利を0.25%引き下げた」というニュースを見た場合はどうだろうか。「政策金利の引き下げ→金融緩和→貸出金利の低下→経済が活発になるだろう→株が上昇」というロジックが頭の中で浮かぶようになればOKである。
このように株、為替、金利それぞれの相場が動いているのには何かしらの理由があったりする。そのニュースがどのように影響するか、自分自身で徹底的に追求して考えることが一番のファンダメンタルズ分析の練習となる。
もし、予想したシナリオと異なる動きが実際の相場で起きた場合は、必ずフィードバックするようにしよう。ニュースを再度チェックし、考え方自体が間違えていたのか、またはほかの要因やニュースが影響したのか等、派生して興味を持ち調べていくことが次のステップとなる。
これを繰り返すことで、ファンダメンタルズ分析は慣れてくるようになるだろう。
経済ニュースから相場を考えるときに大事なこと
経済ニュースから相場を予測するときに大事なことを最後にご紹介する。
それは、「相場のポジションの傾き(買いポジションが多いのか、売りポジションが多いのか)」を意識することだ。
例えば、マーケットに投資家が100人いるとする。
その100人の投資家のうち、90人がドル/円をロングポジションで保有したときにアメリカの雇用統計が公表され、とてもいい数字が公表されたとする。
この場合ドル/円はどちらにいくだろうか。
経済指標だけ見たら「アメリカ雇用統計良好→政策金利引き上げ期待が高まる→ドル金利上昇の可能性→ドル買い」という考え方が通常である。しかし、上記の場合は一瞬上方向で反応するも、利食いが優勢になる可能性が高くなるかもしれない。
マーケットに100人しかいない中、いい数字が出てロングポジションを新たに作れるのは10人のみである。
つまり、すでにある程度このニュースは予想されていたことであり、相場に織り込まれているということだ。
相場というのはニュースとポジションバランスを常に意識して予想することが大切だということを覚えておこう。
また、相場に勢いがつくのは「ポジションを投資家が解消するとき」である。
新しく新規でポジションを構築するときは、ゆっくり淡々と作っていくため相場はじわじわと動いていくものだ。経済指標や大事な経済ニュースが公表されて、もしポジションが大きく同じ方向へ傾いているとすると、一旦ポジションを解消しにいくフローが発生する。
だからこそ、経済ニュースを日々チェックして、色々なシナリオを頭に描きながら相場に対応することが大切である。
まずは、経済ニュースや経済指標で基本的な動きを考え、次にマーケットのポジションを予想し、頭で2つの材料を合わせて考えることで、相場の動きがより理解できるだろう。
初心者でやりがちなことは「いい数字が出たから素直にその数字通りにポジションを取ること」だ。これは経済ニュースが読めてきたときに行いやすい行動なので注意してもらいたい。
経済ニュースは状況に応じて見るポイントを変化させることが必要
経済ニュースはあまりにも量が多く、全てを網羅し把握することは難しい。しかし、その国々の環境は、世界情勢で大事なポイントはどの点なのかということを捉えることが大切だ。そのときの状況でチェックするべきニュースの種類が変化するだろう。
慣れてきたら理解できるようになるが、最初は難しいかもしれない。そのため、代表的な経済指標をまずは理解し、ニュースの影響度合いを日々真剣に考える練習を行うことが大切だ。そして、自身の考えていた動きと市場の動きが乖離した場合は、そのズレを埋めていくフィードバックを行うということを繰り返そう。
ファンダメンタルズ分析はすぐに覚えることができない分析方法だが、日々の努力が糧になり、積み重ねると大きなスキルとなる。ぜひ実践してもらいたい。