得をするのは誰?株価上昇を演出する自社株買いのカラクリ
自社株買いとは、企業が発行した株式をその企業が買うことです。企業は買い戻した後に消却することで、発行済み株式数を減らすことができます。自社株買いをすると、株価が上昇する理由は次の3つです。
- 株を買うこと
- 1株当たりの配当金が増えること
- 自社株買い報道を好感して新規買いの増加
米アップルは2018年5月、1000億ドル(約10兆8500億円)という大きな自社株買いをしました。
自社株買いが増えている理由として、IT企業が大きく伸びてきたことから、多額の資金を必要とする工場建設・設備投資は減少し、企業の金余りが鮮明になっていることが挙げられますが、根源的には経営者の利益を追求していることが理由だと思います。社債を発行して自社株買いをすることも多いのです。
その恩恵を受けるのは…
世界中で社債の発行が急増しており、9月の社債発行額は1日当たり112億ドル(約1兆2150億円)と過去最高ペースになり、その調達資金の使い道で大きいのが自社株買いです。アップルも今年10月、2年ぶりに約7400億円規模の社債を発行したことと、調達した資金を自社株買いや配当などに充当すると発表しました。さらには債務超過なのに自社株買いをするため、社債を発行する企業すらあります。
自社株買いで一番メリットを受けるのは、その会社の役員です。自社株買いにより1株当たり利益(EPS)成長率を押し上げる効果があり、役員報酬の多くはEPS成長率や株価と連動しているからです。つまり、自社株買いをすると自分の役員報酬や退職金の上昇、自分の保有している株価の上昇となるのです。
社債を発行して自社株買いをする行為は、企業の長期的な成長を犠牲にして役員個人の利益を優先させることになりかねません。
日銀が日本株(上場投資信託=ETF)を購入することで企業の大株主レベルになったり、社債を発行して自社株買いをしたりすることなどは、資本主義の末期症状であると思います。共産主義は崩壊し、資本主義も終焉に向かい、新しい社会システムに変革していくという認識です。今までの常識が非常識となることも多いでしょう。