買ってはいけない投資商品
投資とは、リスクを取ってリターンを得るものだということは誰でもわかっているだろう。だが、世の中には買ってはいけないリスクが高い投資商品もある。この記事では、国民生活センターなどに寄せられるトラブルが多い投資商品を中心に、その特徴や問題点などを紹介していく。
新エネルギー・再生可能エネルギーへの投資
東日本大震災の後は太陽光発電事業に対する投資が流行した。その後は、シェールガスやメタンガスなど、メディアで注目される内容に合わせるかのように人気の投資対象が変わっている。報道の影響力が強いのが、エネルギー関連分野の投資の特徴といえるだろう。
このような投資先はクリーンで社会貢献をしている企業というイメージがあるため、信用してしまいやすい面がある。また、長期的に安定した収益が見込めるのではないかと安易に考えてしまいやすいともいえるだろう。
エネルギー関連への投資で避けたいのは、未公開株や社債への投資である。投資一般にいえることだが、1社への集中出資はリスクが高い。専門的な知識を持っていて投資先を分析できるということでない限り、止めたほうがいいだろう。少なくとも、ある程度実績があり、規模が大きい企業が望ましい。
現在は、環境、社会貢献、企業統治を評価して投資先を選定する「ESG投資」への関心も高まってきた。実際、緊急性を増す地球環境問題や国の後押しもあって、資金も流入してきている。投資初心者は、複数の企業の銘柄を分散投資しているESG投資信託を選んだほうが、低リスクで安定した収益が期待できるだろう。
また、投資詐欺の疑いが強いのは、自宅に投資ファンドのパンフレットが届いたり、メールや電話で勧誘されたりするケースだ。平成27年の法令改正により、一般人に直接出資を求めることはできなくなっている。そのため、このような行為をする業者は悪質業者であるリスクが高く、買ってはいけない投資商品だ。
海外業者のバイナリーオプション
バイナリーオプションとは、為替(円やドルなど)や商品先物(日経平均株価や原油など)を対象に、あらかじめ決められた時点で、ある価格より高いか低いかを二者択一する取引だ。この投資方法自体は、正規業者を利用して知識や経験を持つ人が取引することは問題ない。しかし、近年、悪質業者への国民生活センターへの相談が多いので注意が必要だ。
悪質業者の特徴は以下のとおり。
・「確実な儲け」「月利20%以上」などの誇大広告をSNSやWebで行う
・売買システムや投資用ソフトが入ったUSBメモリーなどを販売する
・海外業者を使って取引するように言われ、口座にお金を振り込ませる
具体的には以下のような事例がある。
「購入したUSBメモリーからソフトを起動して取引を始めると、短期間でお金が増えていった。もっと上のランクがあると言われ、違う売買ソフトを購入して、口座に追加資金も入れた。その後、出金できないことからソフトの販売業者に連絡したところ、海外業者とは無関係なので対応できないと言われた。」
このケースでは、取引画面が虚偽のものであることが疑わしいといえるだろう。海外業者と共謀しているかどうかは不明である。国民生活センターに寄せられたトラブルでも判定できないケースが多いようだ。
バイナリーオプションには、取引金額以上の損失が発生しないことからリスク管理しやすいといわれている。二者択一なので勝率が50%はあると考える人も多いようだ。このことが射幸心を刺激して、短期間で何度も取引してしまう人が多い。
しかし、そもそも一定期間後のレートを予測するには、FXのテクニカル分析やファンダメンタルズ分析の基礎があっても不確実性が高すぎる。こうしたスキルがない人がバイナリーオプションから始めるのは、一般的にもリスクが高いといえるだろう。
海外FX
海外FXは、先に紹介した海外業者のバイナリーオプションとほぼ同じ手口だ。
1.SNSやWebでFX取引の自動売買ソフトやシグナル配信サービスを販売する
2.それらを購入すると、海外口座を開くように依頼される
3.口座に入金すると出金ができなくなる
というパターンが多い。自動売買ソフトなどを販売しているのは国内の業者であり、インターネット経由で気軽に購入してしまう人が多いようだ。実際、はじめは数万円程度の商品を購入させ、その後、高額商品に誘導することも多い。
このような投資トラブルを回避するべく、FXの経験が少ない人は、日本のFX会社を選んでおくほうが安心である。その理由のひとつは、海外のFX会社にはレバレッジ規制がない点だ。日本の場合、レバレッジは最大25倍までしかかけられない。たとえば、10万円なら250万円相当の通貨しか取引できない法律になっている。
これだけでもハイレバレッジだが、海外では200~400倍も一般的で、場合によっては1000倍のレバレッジがかけられる会社もある。しかし、このようなレバレッジで取引すれば、一瞬で口座資金を失ってしまうこともあるので十分注意したい。そもそも、200倍とは、建玉の0.5%の証拠金があれば良いというだけで、建玉が0.5%逆に動いただけで全証拠金が飛ぶと考えれば、いかに無謀な取引かがお分かりいただけるだろう。
また、海外のFX会社には、日本のFX会社のように「信託保全」制度がない。したがって、FX会社が倒産したり、出金トラブルが発生したりしても基本的に自己責任となるだろう。出金する際に高額の出金手数料を取る業者が多いことや、外国の税率に従うため納税額が多くなる可能性にも注意しよう。
暗号資産(仮想通貨)
PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に寄せられた暗号資産(仮想通貨)に関する投資トラブルは、以下のとおりである。一時の過熱状態が収まったことから、トラブルもやや少なくなってきているように思えるが、国民生活センターは依然として注意を喚起している。
【PIO-NETに寄せられた相談件数の推移】
(※引用元:暗号資産(仮想通貨)|独立行政法人国民生活センター)
リスクが高いと国民生活センターが警告している投資商品の特徴は、意外にも知人や友人経由で勧誘されたものである。暗号資産(仮想通貨)の話題性を利用して知識がない人を狙い撃ちにしているケースが目立ち、詐欺的な投資であることが多いので注意が必要だ。
ICOも基本的には避けたほうがいいだろう。ICOとは新規仮想通貨公開のことで、企業が発行した暗号資産(仮想通貨)を購入してもらい資金調達することをいう。株式の上場には厳しい審査があるが、暗号資産(仮想通貨)ではそのような審査がないため、怪しげな通貨のICOも少なくない。堅実な投資をしたい人にとっては避けたい投資対象だ。
「いつまで待っても上場しない」「担当者と連絡が取れなくなった」などのトラブル例もある。知識が少ない投資対象だけに「すぐに数十倍になる」などと言われて信じてしまう人が多いようだ。
大規模な投資詐欺としては、ビットコインのマイニング設備への投資と称して、日本円で約800億円をだましとったケースがある。アメリカの「BitClub Network」という詐欺グループは、暗号資産(仮想通貨)の価値を証明する新たなブロックを生成することで得られる利益を分配するとして出資者を集めたのだ。
多くの人にとっては、何をして暗号資産(仮想通貨)を手に入れるのか、さっぱりわからないのではないだろうか。しかし、わけがわからないことで誇大広告の効果が高まったことは確かだ。
事実、逮捕された首謀者たちは、意図的に無知な投資家をターゲットにしたと語っている。自分の理解が及ばないものには投資しないほうが賢明だ。
今回紹介した投資対象では、信頼できる投資会社や企業が提供している投資商品もある。しかし、この記事で紹介したような怪しげな兆候があったなら、買ってはいけない投資商品と考えたほうがいいだろう。自分の大切な資金を守るために情報収集しながら、投資をしていこう。